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退屈日記「ぼくはいつ、どのワクチンを接種することになるのだろう。世界の不安」更新版 Posted on 2021/02/18 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、欧米ではまだ猛威をふるっている新型コロナだが、台湾、ニュージーランド、オーストラリアは抑え込みが順調だ。
そんな中、感染者が一人出たという理由で、オーストラリアが再びロックダウンに入ったのには仰天した。(ニュージーランドでも3人の感染者が出たことでロックダウンに踏み切った)
オーストラリア政府の半端ないコロナ対策、欧米の国々とは異なる独自の強さがある。
オーストラリアでは半年くらいロックダウンが続いたはずだけど、日本や欧米では緊急事態宣言も出ないような段階で、長期間にわかって封じ込めをやり、徹底してコロナをいれない作戦をとりつづけている。
これ、国民は反発もせず従っているのだろうか? 
もし、そうなら、同じアングロサクソンなのに、欧米とのこの国民性の違いはなんだろう。

退屈日記「ぼくはいつ、どのワクチンを接種することになるのだろう。世界の不安」更新版



ふと、気がついたが、台湾もニュージーランドも、ある意味、オーストラリアも、他国と隣接していない。
自国の完全な封じ込めに専念できる地政学的な利点を持っている。実は島国日本も新型コロナには有利な地理的条件を持っているのだが、…。
ぼくは一年前の日記で、日本がこの段階でロックダウンを短期間やり、鎖国的な環境を作れば感染ゼロ国となる、というようなことを書いたけど、まさか、それ以上の真剣度でやりつづけていた国があったとは、正直、すごい政府首脳陣がいるなぁ、と思った。

退屈日記「ぼくはいつ、どのワクチンを接種することになるのだろう。世界の不安」更新版



スペインやイタリアなどは、ロックダウンをするお金がもうそこを尽きた、という噂もきく。ロックダウンをやりたくても一切の補償が出来ないので、「共存」という選択をしつつあるのか、と感じる。
一番考えたくない選択肢だが、そういう道が残されていたことを、知った、…。
イタリアがこの状況下でカフェを開いたのにも、逆の意味で驚いた。
フランスのテレビで、店の外のテラス席でスパゲティを食べる大勢のイタリア市民の様子が映っていた。(スパゲッティがあまりに美味そうで、そっちに目が、…)
コンテ首相が支持率低下で辞表を提出し、政治的リーダーシップの空洞が起こっているのかな、と勝手な想像をしてしまった。
スペインはもっと財政状態が厳しいようだから、経済を回すために、何かを見捨てて、封鎖を解いていくとなると、高齢者の犠牲者が間違いなく、増える。医療崩壊を起こしているので、今後目が離せない、かなり深刻な問題を孕んでいる。

多分、このまま、ワクチンが行き届くまで、多くの国がそのようなことをやらざるを得なくなるのかな、と思ったら、ちょっと身震いがおきた。

退屈日記「ぼくはいつ、どのワクチンを接種することになるのだろう。世界の不安」更新版



そういう状況下で、フランスではアストラゼネカのワクチンの有効性(59,5%)についてのニュースが連日トップで報道されている。高齢者の治験が少ないらしく、高齢者にどこまで効くのか分からないのだそうだ。
イタリアでは18歳から55歳の人にアストラゼネカの接種を認める、というような状態。フランスは65歳以上には推奨しない、という立場をとっている。
逆に、高い有効性が治験で示されたファイザー(95%の有効性)とモデルナ(94,5%)のワクチンは75歳以上から優先で接種が始まるとのこと、ということは、ぼくは、いつ、どのワクチンを、受けられるのだろう、と思った。
フランス国民のワクチン接種率は3,4%である。イスラエルは国民の約半数が少なくとも1回目の接種を終わらせており、国によっての開きが大きい。
イスラエルは国全体でワクチン接種に取り組む姿勢が強く、集団免疫獲得を目指しているものと思われる。
ワクチンに懐疑的なイスラエル人もいるようだが、健康パスポート(ワクチン接種有無)制度が始まることや、2月15日のニュースでは「ワクチンを接種した人はピザ一枚貰える」というプロモーションまでして接種を促しているのを見た。
このペースで接種が進むと世界最速で集団免疫を獲得出来るのでないか。
台湾、ニュージーランド、オーストラリアとはまた違った方法で、コロナ対策へと強く舵を切ったのは明らか。

ぼく自身、ワクチンにはまだまだ懐疑的ではあるのだけど、欧州ではまもなく、健康パスポートが登場することになりそうで、当然、健康パスポートがないと飛行機にもユーロスターにも乗れなくなる可能性が高い、…。
移動をしないとならないぼくは接種を受けざるを得ない。コロナ収束へ向けた次の岐路に今人類は立たされている。 

ワクチンについての記事はこちらから⬇️
https://www.designstoriesinc.com/europe/vaccinx/

アストラゼネカワクチンについての記事はこちらから⬇️
https://www.designstoriesinc.com/europe/vaccinast/

退屈日記「ぼくはいつ、どのワクチンを接種することになるのだろう。世界の不安」更新版



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