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退屈日記「父ちゃんのドキュメンタリー番組、いよいよ完成へとまっしぐらの巻」 Posted on 2021/06/05 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、いよいよ、父ちゃんが春のパリで頑張って生きる姿が収録された(?)ドキュメンタリー番組の全容が見えてきた。
というのも、放送日などが決まってきたのである。
ボンジュール! 辻 仁成の春のパリごはん
6月18日(金)[BSプレミアム]後10:00
どうも、気恥ずかしいタイトルだけど、内容はぼくと息子のロックダウン下での生活を中心に、父ちゃんが生きる姿を日記的に告白している感じの内容で、2月、3月、4月、そして、話しは5月の末まで続き、つまり、4か月間も撮影が続いた力作なのである。
いやあ、この厳しい制限下でよくみんな頑張った、と思う。

退屈日記「父ちゃんのドキュメンタリー番組、いよいよ完成へとまっしぐらの巻」



制作会社の方々は東京からあの手この手を駆使して、ふてくされ気味のぼくを動かし、というのは出演者でありながら、ぼくが現場では演出したり、カメラを回さないと作品が作れないのだ。
だから、時におだてたり、時には懇願したり、時にはすかしたり、時には脅かしたり(笑、そうじゃないけど)、時には泣きついたりしていた、痛々しいくらいに。
ご存じのようにぼくは超面倒くさい人間なので、はいはい、と素直にやることはないし、いちいち理屈は並べるし、きっと、胃がもぎれるくらい面倒くさい相手だったと思う。
と同時に、なんとなく、主導権はこちらにあるので、ぼくがへそ曲げると困るのは制作会社のLさんたちだから、Lさん実際、体調壊したりしたみたいで、すまねー、と思うのだけど、そこは父ちゃんも自分のドキュメンタリーだし、妥協はしたくないから、この数か月喧々諤々の珍道中なのであった。

退屈日記「父ちゃんのドキュメンタリー番組、いよいよ完成へとまっしぐらの巻」



地球カレッジ

前半はカメラマンのピエールやコーディネーターさんが協力してくれていたけれど、田舎のアパルトマンには呼べないし呼びたくない(そこは聖域)なので、田舎の撮影などはぼくが一人で自撮りしたり、時には息子がカメラを回したりと、かなりの「家内制手工業」で乗り切った。
その都度、Lさんから、息子の後ろ姿がほしい、とか、家の全体が分かる生活感がほしいとか、かなりのお願いが殺到し、実際、途中でメールをみなくなったものだ。笑。
しかし、このコロナ禍なのに全編パリで撮影しちゃったNHKというか制作会社のノマドさん(Lさんの会社かな)、凄い手腕だと敵ながら褒めてあげたい。
かくして、番組は完成した。
内容に関しては、当日のお楽しみ、ということになる。日常感満載の、ツイートにも、日記にも書けないような、今の父ちゃんが、そこにいる、・・・はず。笑。

退屈日記「父ちゃんのドキュメンタリー番組、いよいよ完成へとまっしぐらの巻」



この中でぼくが言いたかったことは「日常を丁寧に生きる」ということである。それがコロナ禍を乗り越えていく一番大事なことだった、ということに尽きるかもしれない。
これが一時間番組になると、実に幅広い面白さが加わり、自分のあほ加減に笑いもおき、実はみんなに支えられてぼくは生きてたんだってことに気づかされたり・・・。Lさん、ノマドの皆さん、ありがと。
やっぱり、人生って、感謝しかないし、感謝出来る自分でよかった、と思ったのが率直な感想なのであった。

番組情報。
父ちゃんのドキュメンタリーのHPが開設されたようです。

➡️https://www.nhk.jp/p/ts/6XW8NZ748V/

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