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滞仏日記「ディープ・フォレストとの『荒城の月』プロジェクト、全貌が明らかに!」 Posted on 2022/03/01 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、グラミー賞を受賞、世界的なエレクトロミュージックの巨人、ディープ・フォレストと父ちゃんのコラボが世に出ることになったのであーる。
ぼくらを繋いだのはドルドーニュ県の黒トリュフであった。
黒トリュフ狩りに出かけることが決まった時、その畑の持ち主がディープ・フォレストのエリック・ムーケ氏であることを知った、父ちゃん。
前にも話した通り、30代の頃、彼の音楽を聴きながら小説のインスピレーションを膨らませていた時期があり、え、マジかよ、となった。云々・・・。
そこで、大胆にも自分の音楽や小説を送りつけ、何かセッションをやろうよ、と打診。
それに関してはとくに返事がないまま、トリュフ狩りが地球カレッジで行われた。(その模様はNHKの「ボンジュール、辻仁成のパリの冬ごはん」にも収録されています)
その狩りの後、エリックが、「スタジオに行こう」と言いだしたのである。
驚く、ぼく。
・・・ともかく、そこで、真剣に向き合った2人であった。あはは・・・。グラミー・アーティストに対して、父ちゃん、ちょっと図々しかねぇ。
カメラがその一部始終を撮影していたのであーる。笑。
とにかく、ハプニングとか、即興とか、刺激しあうことが好きな同世代のアーティスト同士、スタジオで向かい合った途端、スリリングな展開となり、そのうち、ぼくが口ずさんだ「荒城の月」に大きな反応を示したエリック・・・。
ぼくらはそのままスタジオに移動し、100%即興のセッション、つまり、がちの一発録りレコーディングプロジェクトをスタートさせたのである。
今回、ご覧頂くのは、父ちゃんが編集をした、その時のメイキング・フィルム。
まずは2人の出会い、お互いを刺激し合うセッション、そして、レコーディングが始まるまで、を見てもらいたい。

メイキング・オブ・荒城の月はこちら☟
https://youtu.be/TKRqrnS0rjo

ぼくらは同世代だけれど、それぞれ、やってきた音楽世界や生きてきた国は違う。しかし、不思議な波長で意気投合したのである。
ということで、エリックにいきなりインタビューを試みたのだった。

:ところでエリック、いきなりだけど、ぼくについてどう思った?

エリック:あはは、そりゃあ、いきなりだね。お互い、ちょっと違う音楽を長年やってきたということは分かっていた。でも、こういう出会いは珍しい。ぼくらを繋いだのは、他でもない。黒トリュフだ。ぼくはトリュフで有名なドルドーニュ県のペリゴールに住んでいる。そしたら、ある日、そうさ、晴れた朝に君がやってきて、「トリュフ狩り」をしようと言ったんだ。それが、とても楽しかったし、広大なトリュフ園で、一緒にトリュフを探しながら、少しずつ、お互いのことを知ることができたのはよかった。ぼくは君のために、トリュフのリゾットも作ったよね。美味しかっただろ?
食後、意気投合したぼくらは、ぼくのプライベートレコーディングスタジオに籠って、まず、何かセッションをしようということになった。いくつかの音楽のアイデアを探し始めたんだ。
とても創造的で、とても本能的な時間だった。 しばらくのセッションの後、ぼくらはこの曲のアイデアを思いついたんだ。 そうなると、あとはレコーディングしかない!

:確かに、それは本当に素晴らしい即興だったね。セッションからインプロヴィゼーションスタイルのレコーディングが始まって、ぼくはちょっと驚いたけど、興奮し、楽しかった。ところで、このプロジェクトの何がよかった、と思う?

エリック:ぼくは予定調和のない自由な即興性が大好きなんだよね。しかし、即興は多くの経験を必要とする。しかも、ぼくらはお互い初対面。この種のエクササイズで快適になるには長年の経験を積まないとならないんだよね。そういうお互いの経験に裏付けられて、この曲は非常に速く、数分で気に入ったバージョンを録音することが出来たんだ。

滞仏日記「ディープ・フォレストとの『荒城の月』プロジェクト、全貌が明らかに!」

滞仏日記「ディープ・フォレストとの『荒城の月』プロジェクト、全貌が明らかに!」



:いや、君の可能性が半端なかった。ぼくは大いに刺激を受けたよ。ところで、このレコーディングではどのような創作手法に苦心した?

エリック:創作の苦心? ぼくが鍵盤に触れると、この曲のイメージや音楽の色が自然に出てきた。理屈なんか必要なかったよ。録音は完全にライブで、音声とキーボードもそのまま収録し、つまり、即興録音が実現したんだ。

:本当に、あっという間のレコーディングで、気が付いたら、この楽曲が生み出されていたんだから、・・・。ぼくは、あまりに呆気なかったから、なんか、音足すの? と君に訊いたらさ、なんで、これで完璧だよって、君は言った。笑。気に入らなかったのかな、と思っていたら、「シングルにして、出そう」と提案されたんだ。セッションだけでも奇跡的な出来事だったのに、なんと表現したらいいんだろうね、ぼくは有頂天だったよ。ところで、この曲のどこに惹かれましたか?

エリック:そりゃあ、なんと言っても瀧廉太郎のメロディーがとても美しく、そして深い。ぼくは演奏とタイトルをとても楽しんでいました。

滞仏日記「ディープ・フォレストとの『荒城の月』プロジェクト、全貌が明らかに!」

滞仏日記「ディープ・フォレストとの『荒城の月』プロジェクト、全貌が明らかに!」



:タイトル、「荒城の月」確かにね。まさに、今の時代に必要なタイトルだ。あ、そうそう、ところで、君は日本が好きだよね?

エリック:何言ってんだよ、当たり前じゃないか!!!

:じゃあ、エリック、最後に日本人へメッセージをください。

エリック:うん、とにかく、このような複雑な時代において、アートには国境がないことを確認することができた。ウクライナ危機を目の当たりにして、そのことがこれまで以上に重要になっていることをぼくらは知っている。 芸術一般、特に音楽には、無視できないパワーがあることがよくわかる。音楽にはこの世界を繋ぐ力があるんだ。辻、ありがとう。楽しかったよ。多くの皆さんにぼくらの「荒城の月」を聞いて貰おう。そして、日本でまたコンサートをしたいなぁ。京都でやったライブ、とっても、懐かしい。日本の皆さん、また、会いましょう。

滞仏日記「ディープ・フォレストとの『荒城の月』プロジェクト、全貌が明らかに!」

滞仏日記「ディープ・フォレストとの『荒城の月』プロジェクト、全貌が明らかに!」



ということで、このシングルの視聴方法をここでご紹介したい。
携帯にダウンロードすることも出来るし、spotify、などで聞くことも出来るのだ。
2022年、3月6日からItunesにて、先行予約がスタート。
3月19日から全てのプラットフォームで配信がスタートすることが決まっている
わくわくするなぁ。
ぼくは音楽配信プラットフォームのIDを持ってなくて、エリックが勝手に、というか、自由に、「Hitonari TSUJI」で登録してしまった。笑。それは、作家の名前なんだけど、ま、硬いこと言わないでいいね。
なので、ディープ・フォレストとやる音楽のコラボは、作家でもある辻仁成ということになったのであーる。じんせいファンの皆さん、ごめんなさい・・・。
こちらが、そのジャケットになります。
なので、ジャケットにはTSUJIだけに・・・。こちらではTSUJIでやるのだ。
ぜひ、父ちゃんの世界デビューシングル、皆さん、携帯にダウンロードして、楽しんでやってください。

滞仏日記「ディープ・フォレストとの『荒城の月』プロジェクト、全貌が明らかに!」



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