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滞仏日記「別にどうでもいいこと、父ちゃんの今年度のアー写が決定! は~?」 Posted on 2022/06/07 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、ZOOM取材とか受けると、必ず最後に「アー写をください」と言われる。
日本の秘書さんが急逝してコントロールする人間がいなくなり、「アー写ください」というのがぼくのところに直接くるようになったので、対応に苦慮している。※ アー写とは、アーティスト写真のこと。
弟とは先日、大喧嘩をやらかし、「やめろ」(兄)「ああ、そういうこと言うんだ。言ったな」(弟)「そんな奴と仕事出来ない」(兄)「ああ、そういうこと言うんだ、言ったな~」(弟)と言い合いをして、今、ちょっとだけ、兄弟げんか真っ最中なのである。
事務所の一部が博多に移転して、彼もフローリングの床を買ったり、荷物の整理におわれて殺気立ってるのだから、仕方がない。
弟だから、いつも兄としては、許してきたけど、「お前にはもう頼まない」と啖呵を切った手前、あいつの謝罪がない限り、いろいろと頼めなくなって、ぼくはてんてこまいになっている。(笑)
フランスのスタッフさんはみんなフランス人なので、日本とのやりとりが出来ないし、違った意味で細やかなことは頼めない。(笑)やれやれ。
ということで、今までのアー写は写真家の宮本武さんによる、ボージュ広場での一枚だったが、もう4年くらい経ったのでちょっと古いのは事実。一応、これです。笑。

滞仏日記「別にどうでもいいこと、父ちゃんの今年度のアー写が決定! は~?」



で、4年前だとぼくは58歳くらいなので、50代だったが、これからは、やはり60代になってからの写真がええやろうということで、今回、高嶋佳代さんという女性カメラマンさんが撮影してくださったこちらの一枚を選んだ。
ちょっとロッカーぽいのだけど、作家用にも使えそうなギリギリ感が気にいってる。
今回の、ビルボードライブからこの写真の使用が開始された。高橋さん、宮本さん、ありがとう。
ということで、こちら、ミュージシャン兼作家のアー写である。

滞仏日記「別にどうでもいいこと、父ちゃんの今年度のアー写が決定! は~?」



しかし、この写真、数年は使わせていただくので、父ちゃんの60代の顔ということになる。
昔、作家の原田宗典さんと仲が良かった時代、新宿のカフェとかで作家談義をよくやったが、その時に、氏が面白いことを言った。
「だんだん、ぼくも作家顔になってきたんだ」
これはとっても、衝撃的な言葉であった。
「作家顔」という単語にはめっちゃインパクトがあった。
そんなことを考えたことがなかったが「作家顔」というのが世の中にはあるのか、とはじめて意識をした瞬間であった。
「辻さん、やっぱり、作家って、書いているうちに、だんだん、顔が出来てくるんだと思う」
こういうことをおっしゃった。
30年ほど前のことで、アドホックビルの前にあったカフェでの一コマである。
そういえば、そこで、ぼくは作家の中上健司さんとも何度かお茶をした。なんか、不思議なロック歌手とか奇妙な恰好の演劇人とかそういう人が氏の周囲にいつも屯していた。
ぼくは、実は中上健司さんの「十九歳の地図」でやられた世代だったので、はじめて二人でお茶をした時は相当に興奮をした。あの作家さんだ、と思った。
確かに、かなりの作家顔であった。
昭和の作家だと、太宰治さん、三島由紀夫さん、みんなすごい作家顔である。
顔の迫力が筆力に及んでいる先生たちで、それに比べ、父ちゃんは坊ちゃん顔だから、到底、作家顔からは遠かった。
そういえば、デーモン小暮閣下と20代の頃、ソニースタジオで一緒だったが、ロビーでお茶をしていると、「辻さんさ~」とデーモンの声がするのに、振り返るとサーファーの美形青年(顔の輪郭は□っぽい)がいて、メイクしてないと普通の顔じゃん、と驚いた経験があった。
優しい目をしている、実はかなり知的な男。
デーモン閣下に関しては、あのメイクが彼の売り、入り口なのである。
さて、ぼくはロッカー顔で行くべきか、作家顔で行くべきか、どっちなんだろう、悩むところだけれど、自分の顔と職業ってなんか関係あるのだろうか? 
寿司屋の大将とかやっぱ寿司職人顔の人が多いし、政治家とか、画家とか、やっぱり、ありますねぇ・・・。

滞仏日記「別にどうでもいいこと、父ちゃんの今年度のアー写が決定! は~?」



人間は62歳にくらいになると、目の下はくぼみ、窶れまくる。これはもう、どうにも抗えない。デーモン閣下は永遠にデーモンでいられるから、うらやましい。
実は今、シミがひどくなってきて、困っている。
ほうれい線はまだひどくないのだけど、皮膚のたるみとか、寄る年波に勝てない感じなのであーる。
しかし、そこを逆手にとって、年輪を武器にした作家顔というものをあえて目指した方がいいのかもしれない、と個人的には路線変更の機運が高まっている。
いつまでも「若いですね~」は不可能なのだ。
若さの追求よりも、年輪にふさわしい顔で勝負ってどうだろう。苦み走ったいい男を追求して、頑張ってみたい。
どうでもいい、話なのに、2000字も書いて、無理やり皆さんに読ませてしまう、辻仁成という作家・・・、この文章の筋トレのような毎日が、ぼくの顔にどのような文脈の小じわを刻んでくるのか、そういう年齢の地殻変動も楽しみにしながら、今日はここらへんで筆を置かさせて頂きたい。えへへ。

つづく。

ということで、今日も読んでくれてありがとう。
実は今朝、6時から夕方までに原稿用紙150枚程度の作品を書き上げたので、頭の中が膿んでいる状態なのです。小説ではないのだけど、これは今日、明日がリミットのもので、不可能かな、と思って挑んだのだけど、一歩も家から出ないで、(三四郎も犠牲になり)取り組んで書いてみたら、意外や、書けるものなので、驚いた。なので、何も書くことがない一日をこのような形の日記でまとめた父ちゃんのけなげな努力、買ってくださいませぇ。
とまれ、愉しんで頂けたら、作家冥利に尽きるという次第でして。原稿用紙150枚の作品については、いずれ・・・。
さて、お知らせです。
6月13日、父ちゃんの日本公演のチケットの発売日になります。
8月8日、大阪ビルボード、12日は横浜ビルボード!!!!!!!
NHK・BSの新作「ボンジュール、辻仁成の春ごはん」の本放送は6月17日に迫ってきました。
それから、6月30日はマガジンハウス社から、いよいよ「パリの空の下で、息子とぼくの3000日」が発売に。
で、
6月26日に、地球カレッジ、前期エッセイ教室の最終回、総まとめ編です。
エッセイを書くのが大好きな人、文章家を目指しているあなた、ブログをやっている皆さん、ぜひ、ご参加ください。課題もあります。
詳しくは、下の地球カレッジのバナーをクリックください。

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