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退屈日記「ショック。新物件、審査通らず。アーティストはダメと言われちゃった!」 Posted on 2022/06/23 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、そういえば、昨日、衝撃的な連絡が入った。
この日記で、あんなに「いい物件が見つかったよー」と大喜びしていた新しいアパルトマンなのだけれど、・・・・。
不動産屋の情報欄はすでに「契約済」になっていたし、不動産屋のRさんも、書類の不備はなく、問題なく契約になるはず、とメッセージを頂いていたので、安心をしていたところに、
「大家さんが、アーティストにはお貸しできない、と言い出していまして」
と連絡が入ったのだった。
がびーーーん!!!!
ちょ、ちょ、ちょ、衝撃的な出来事で立ち直れない・・・。
在仏20年になるのだけど、アパルトマンの物件の審査、通らなかったことがないので、驚いた。
確かに、日本ではミュージシャンや小説家など不安定な職業の人には物件を貸せないと言われたことがあった。
しかし、フランスには「銀行保証」という制度(日本にもあるかもしれない。すいません、詳しくなくて)があって、自由業の人は2年分の家賃を予め銀行側でブロックして、大家を守るシステムがあるのだ。この「銀行保証」ができるなら、契約はできるというのが常識なのであった。
不動産屋のRさん曰く、
「自分も20年不動産屋をやっているのだけど、初めての経験なので」
と戸惑っていた。

退屈日記「ショック。新物件、審査通らず。アーティストはダメと言われちゃった!」



「外国人だから、ダメなんですかね」
とぼくが言うと、
「いや、今時、こういう物件を借りる人はみんな外国人なんですよ。外国人は問題ではないでしょう」
という返答。
「じゃあ、何がダメだったのでしょう?」
「大家さんは、サラリエ(会社員)に貸したい、のだそうです」
「なるほど・・・。それを言われると、返す言葉がないです。ぼく、自慢じゃないですけど、62年間、一度も会社員を経験したことがないので」
「私もびっくりしているんです。辻さんの収入、過去三年間の納税書類、2年もの銀行保証、今住んでいるアパルトマンの家賃支払い領収書3か月分(ここは新しいところよりもうんと高い)どこにも不備がないので、ぼくの経験から、大家さんが断る理由がないんです。困りました・・・」
Rさんは首をかしげるばかりだけど、ケチがついたので、こちも気持ちがよくない。これは、諦めるしかなさそうだ。
うわあ、それにしても、ショックだぁ。
すでに頭の中には新しい生活の設計図が出来上がりつつあった。あそこに、この家具を置いて、とか、屋根裏部屋は仕事場にしよう、とか・・・、あの中庭に面した可愛いキッチンで料理が出来ないのかぁ・・・。しゅん。
内定をもらっていたので、他も探していないし、もう、来月頭には日本に行かないとならないので、時間切れ。ここから探しなおす体力も気力もないのである。
がっかりな62歳であった。

退屈日記「ショック。新物件、審査通らず。アーティストはダメと言われちゃった!」



ともかく、気を取り直さなければならない。
イメージしていた、9月からの息子との新しい生活だったが、仕切り直しということになった。
もちろん、今のアパルトマンがダメということはない。6部屋のアパルトマンが広すぎて、無駄なので、小さいところに引っ越そうと思っていた。ダメということだから、夏以降も、今までのアパルトマンでもうしばらく暮らし続けるしかない・・・。

ということで、残念なお知らせだったが、ぼくは今日か、明日には気力を取り戻して、この夏に抱えている多くの仕事へと頭を切り替えないとならない。
とりあえず、これから歌の練習をやらなきゃ、アーティストなので!!!(`・ω・´)ゞ
しかし、人生とは「山あり谷あり」である。

つづく。

今日も読んでくださり、ありがとう。
気落ちしている父ちゃんですが、ぼくはアーティストであることに誇りを持っているし、胸をはっていますので、ご心配なく。頭を切り替えて、先へ進みます。(`・ω・´)ゞ
さて、父ちゃんからのお知らせ。
6月26日、日曜日、いよいよ、父ちゃんのオンライン・文章教室が迫ってきました。
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