JINSEI STORIES

滞日日記「真夜中に風呂の中でTシャツなどを洗濯しこれからのことを考える」 Posted on 2022/08/10 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、ホテル暮らしで辛いのはキッチンで料理が出来ないことだけれど、並んで辛いのが、洗濯できないこと。ランドリーに行けばいい、と言われそうだが、コインランドリーも父ちゃん的には敷居が高いのであーる。
なので、お風呂にお湯をはって、下着とか靴下を洗っている。えへへ。
これが、けっこう、力仕事なのだ。衣類をしぼる時に、皮膚がこすれて痛―い。
インドのガンジス川で洗濯をしているお母さんたちの映像は有名だけれど、たぶん、あれに似ている。
腰をかがめ、膝までお湯に足をいれて、ごしごし、ごしごし、洗濯おじさんなのであーる。
しかも、干すところがない。だから、あちこちに、ぶら下げるので、部屋の中はなんとなく水臭が立ち込めて、申し訳ない感じになる。あはは。
大阪ビルボードで着たTシャツを横浜でも着るので、洗わないとならない。これが大変。とほほ。
これが父ちゃんの現実だ。ステージでどんだけ気取って「バラ色の人生」などを歌っても、現実はなかなかバラ色というわけにはいかない。

滞日日記「真夜中に風呂の中でTシャツなどを洗濯しこれからのことを考える」

※ たまったTシャツ5枚を洗濯・・・。



そういえば、息子が不意に日本に来たので、一緒に福岡のばあちゃんに会いに行くことになった。
お盆だし、ご先祖さまへのご挨拶は大事。無事、大学生になったことだし・・・。
ということで「三四郎問題」が急浮上したのであった。
さんしー――。
三四郎はどうするんだ!!!!

さんしー、について、ここで、ちょっと脇道に反れます。
小話。
実は先のダンチュー祭りにおいて、二日間、父ちゃん作の豚汁こと「とんじーる」を完売したことは先の日記で記した通り、その時、ぼくの豚汁を作ってくれたのが、料理研究家、尾身さん料理チームなのだ。
そこにエミちゃんという仲良しがいる。
初日、辻風豚汁が完売したところに年配のマダムが登場、
「もうないの?」
とやんわりエミちゃんに迫った・・・。
「あのね、わたしは毎日、コーヒーを淹れて、辻さんの日記を読むのが日課なのよ。サンシーとか、もう家族同然なのよ。サンシーよ、わかる?」
「・・・はい」とエミさん。
豚汁は完売で大鍋には一滴も残ってなかったのであーる。
遠くを見つめる年配のマダム・・・。
「あのね、わたしは自転車で、ここまで来たのよ。わかる? 」
優しいエミさん、機転を利かせて、
「明日、早めにお越しいただければ、ご用意させてもらいます!」
すると年配のマダムが、希望を取り戻し、エミちゃんを振り返り、
「いいねー」
と指パッチンしたのだとか、・・・。(とくに脚色はしておりませんが、マダム、このような感じでよろしかったでしょうか? いつもご愛読、ありがとうございます)
三四郎を愛する読者さんのなんと、多いこと。
三四郎をほったらかしにしないとならない理由(?)を今はまだ言えないのだが、時が経ったら、きちんと耳を揃えて説明させてもらいます。えへへ。

滞日日記「真夜中に風呂の中でTシャツなどを洗濯しこれからのことを考える」

※ 大阪ビルボードでのライブ風景。撮影は yusuke okada!



三四郎は現在、ジュリアが面倒をみてくれているのだけれど、今朝、ジュリアから、「夏休みに入るので、8月中旬くらいから、別のスタッフにバトンタッチしたい」という連絡が・・・。いやいやいや、それは困る。
預けておいて「困る」はないのだが、ジュリアだから、安心して預けられるのだけれど、他の人には任せられない。
そこで、悩んだ。日本滞在が予定よりも一週間ほど長くなりそうなので、三四郎をパリに戻し、日常に慣れさせる必要がある。選択肢は限られてくる。
ジュリアが夏休みに入った後の、ぼくがパリに帰るまでの一週間ほどのあいだ、三四郎の面倒をみてくれる人を探さないとならない。あらたな問題であーる。
散歩のついでに、ぼくのアパルトマン周辺の、たとえば、もじゃ男のカフェなどにも、脚をのばせるような人がいいなぁ。
そうなると、三四郎の散歩係をしてくださっている椅子修復士でもあるマント・フミ子さんしか、思い当たらない。

滞日日記「真夜中に風呂の中でTシャツなどを洗濯しこれからのことを考える」



マントさんは多分、ぼくより一回り年上のマダムで、犬好き、いろいろな犬を飼っていた。三四郎の散歩がかりを引き受けてくれていた人物でもある。(いきなり、日記で、お願いって、それって、どうなの???)
「ということなのですが、8月中旬、マントさん、パリにおられますでしょうか?」
というメールを送ろうか、どうしようか、迷っている、ところ。
三四郎、本当にごめんね。
引っ越したら、家の前が広場だから、毎日、遊んであげられるからね・・・。あとちょっと、辛抱して・・・。

つづく。

今日も読んでくれてありがとう。
今日、父ちゃんは大阪から東京に戻り、それからずっとホテルで仕事に集中していたので、気が付いたら、23時過ぎまで、食事無し・・・。慌てて、近くのコンビニ(ファミマ)に行き、蕎麦弁当を買い、メンチカツをのっけてみましたー。美味しかったぁ。

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