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滞仏日記「なんてことをしてくれたんだ三四郎! 2」 Posted on 2022/08/23 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、古い椅子の修復家マントさん宅で、三四郎が修復中の椅子の足を破壊したことについては、先日、ここでご報告をさせて頂いたばかり・・・。
その椅子のその後はちょっと怖くて聞けないでいるのだけど、今日、新たな破壊工作が行われたので、ちょっとご報告させていただきたい。
NHK・BSの「辻仁成のパリごはん」のプロデューサーであるSさんから、「犬の噛み癖を直すおもちゃ」ということで頂いたぬいぐるみがあった。(実はもう一つ、かわいいウサギ?のぬいぐるみも、あわせて計二つ頂いていた)
どういうものか、というと、太陽の形をした丸い円盤状のぬいぐるみで、触ると、中にカシャカシャと音がする何かが入っている。
我が家のソファとか壁とかかなりぐちゃぐちゃにされているので、これでは無理だろうとは思っていたし、Sさんご本人からも、たぶん、マントさんの家での日記を読まれたのか、「あれでは噛み癖直すところまではいかないと思います」というメッセージを頂いたところであった。
一昨日、帰仏後すぐに渡したぬいぐるみは、昨日の夕方には、ものすごいことになっていたので、ぼくはとっても申し訳ない気持ちでいっぱいになった・・・。

滞仏日記「なんてことをしてくれたんだ三四郎! 2」



で、昨夜、三四郎は、カシャカシャ音のなる太陽のぬいぐるみを、ついに噛み千切ってしまい、中のプラスティックを食べはじめたので、これは危険だ、と思ったぼくの判断で、奪い取り、捨てることになってしまったのであーる。
中にはごわごわの透明のプラスティック繊維が詰まっていたのだけど、それを焼きそばみたいに食べだしたので、慌てて、口に手を突っ込んで、飲み込むすんでのところで、引っ張りだした。
これ以上はもう遊べない・・・。噛み癖直すおもちゃの三四郎寿命は24時間であった。恐ろしすぎる・・・

滞仏日記「なんてことをしてくれたんだ三四郎! 2」

滞仏日記「なんてことをしてくれたんだ三四郎! 2」

滞仏日記「なんてことをしてくれたんだ三四郎! 2」



それから、もう一つのウサギか何かのぬいぐるみなのだが、なぜ、特定出来ないのか、というと確認せずに与えていたら、顔が食べられていたのだ。
すっぽりを顔の部分、鼻とか目とか、口が完全に消えていて、もう、何かわからないぬいぐるみになってしまっているのではないか・・・。
Sさんにどう謝ればいいのか、分からないでいる。
大変、お世話になっているのに申し訳なく、マントさんと同じように、ここから公開謝罪をさせて頂く次第である。うちのサンシーをお許しください。ごめんなさい。
恐るべし、三四郎であった。

滞仏日記「なんてことをしてくれたんだ三四郎! 2」

※ 怒ると反省をするのだけれど、このウサギちゃん、すでに鼻と口はない。この後、顔全体が食べられていた。餌よりもぬいぐるみとか木枝とか大好きな、さんちゃん。困ったちゃんなのであーる。

滞仏日記「なんてことをしてくれたんだ三四郎! 2」

※ 三四郎も海より深く反省中・・・。



帰仏してから、マントさん宅での破壊工作のことがあったので、ネットなどで犬の噛み癖専門家のYouTubeチャンネルなどをいくつか覗いてみた。
遊んであげないストレスから、何かを探し、見つけたらそれをストレス解消の道具にしている、という説などいろいろとあったが、三四郎の場合、そういう理由だけじゃなく、狩猟犬の中でも特に、噛む執着の強い犬、というだけのことだと気が付いた。
これはストレスというよりも、彼の本能なのかもしれない。
夏のあいだ、預けていたジュリアの家ではお泊りをした初日に、ジュリアが大切にしていたネックレスを破壊して使い物にならなくさせた、という新たな連絡を受けたばかり。
とりあえず、目を離さないで、噛みたくなりそうなものから、注意を反らすよう、心がけているのだけど、24時間三四郎を見ているわけにもいかず、先の長い戦いになりそうな予感であーる。
ただ、ジュリアのところに預けたことで、「伏せ(クッシェ)」が出来るようになっていた。
おやつを与える前に「クッシェ」というと、ちゃんと床に寝そべって伏せをする。
これは可愛い。あまりに可愛いので、おやつをあげすぎた父ちゃんであった。

滞仏日記「なんてことをしてくれたんだ三四郎! 2」



つづく。

ということで、今日も読んでくれて、ありがとうございます。
恐るべし三四郎の破壊力ですよねー。彼が破壊出来ないのは、動物の角のおやつなのです。これは骨の中の骨髄を食べきった後も齧り続けています。一番持つのがそれで、骨型の超硬いおやつもだいたい原型をとどめないところまで行きます。噛み癖というより、習性ですね。新居に移って、家具を一新した後のことを想像すると、すでに眩暈が・・・。

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