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退屈日記「この晩夏、最大の夕陽に三四郎が大はしゃぎの巻」 Posted on 2022/09/03 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、ここのところ、必ず外でトイレをするようになった三四郎なのである。
なので逆に、寝起きも我慢をしているので、ちょっと震えていたりする。
それはピッピかポッポ(おしっこかうんち)のどちらかを我慢している合図だとわかったので、特に朝は、とるものもとらず、大急ぎで外に飛び出すようにしている。
家では何もしない。おしっこシートが不要になってきた。ずいぶんと成長したものであーる。
この24日(地球カレッジの日)に、1歳を迎える三四郎、だんだん、大人になってきた。自動車も助手席ではなく後部シートに載せると、ずっと大人しくしている。(たぶん、夏の間、合宿先で犬たちと毎日森へ行っていたので、後部シートは自分の場所というのがあるのかもしれない。ずっと寝ていてくれるのでありがたい)
次第に成長してきた三四郎、
「海に行こうか」
こう告げると、すくっと顔を上げ、大喜びをする。
車が海の近くに停止すると、もう、そわそわして、早くドアを開けてと催促をする。
「わかったから、海好きだよね。今開けるとからね、もうちょっと待ってて」

退屈日記「この晩夏、最大の夕陽に三四郎が大はしゃぎの巻」



で、浜辺で、リードを外してあげると、ものすごい勢いで、走り回るのだ。
あんなに足が短いのに、走る速度が半端ない。あはは。
浜辺で知り合った犬仲間たちも、こんなに機敏なダックスは珍しい、と口を揃える。
なんか、自分が褒められたようで、うれぴい。
今日は、夜ごはんを食べさせた後に行った海の夕陽が凄かった。
こんなに大きな夕陽、はじめてみたかもしれない。
手前に並ぶ人々と比較してもらいたい・・・。ああ、なんて赤かとした夕陽なことか。
三四郎は大喜びで走り回っている。
ぼくは佇み、太陽が沈み切るのを見送った。
やっと、落ち着くことが出来た。夏が終わった。
最近、よく考えているのは、これからのぼくの生き方である。
ぼくの場合、リタイアというのはできない。年金が65歳から支給されるけれど、それだけではやっていけないので、死ぬまで働き続けないとならない。
でも、これまでのような勢いで仕事をしていたらきっと身体を壊す・・・。
っていうか、身体を壊したら、ぼくはどうなるのだろう、と考えたりする年齢になった。
まだまだ元気だし、定期健診でも「健康」と烙印を押されたのだけど、でも、一人だと、いろいろ、不安といえば不安なので、いざ、という時のことを考えておく必要がある。
寂しいことは寂しい。
でも、ロッカーなんだから、健康ばかり気にして生きていちゃいけない。あはは。
なるようになるだろう、というのがこの悩みの結論なのである。
「さ、サンシー、行くか?」
三四郎は、戻って来ない。
帰るぞ、というと、どんどん、遠ざかって行く・・・。やれやれ。

退屈日記「この晩夏、最大の夕陽に三四郎が大はしゃぎの巻」

退屈日記「この晩夏、最大の夕陽に三四郎が大はしゃぎの巻」

退屈日記「この晩夏、最大の夕陽に三四郎が大はしゃぎの巻」



三四郎が走った浜辺に、小さな三四郎の足跡が残っていたので撮影をした。
この子はこの近くの村で生まれた。
いわば、ここが三四郎の生まれ故郷なのである。
田舎にもっと機軸を移して、じっくりと生きる残りの人生を模索する必要があるのだろうか?
振り返ると、そこに、気の早いお月様が出ていた。

つづく。

今日も読んでくれてありがとう。
とってもきれいな夕陽でした。願い事をいくつかして、手を振って、バイバイをした父ちゃんとさんちゃん、小さな幸あれ・・・。
さて、そんな父ちゃんの小説教室、第二弾を、9月24日(土)に開催いたします。この後、詳細を報告いたしますので、予定にいれといてください。今回の課題のテーマは「食べるもの」「食について」の小説です。「一杯の掛け蕎麦」のような食べることをモチーフにした掌編小説、もしくは長編の冒頭を、原稿用紙10枚以内で。締め切りは9月20日。書き始めてくださいませ。明日には告知を開始しますね。

退屈日記「この晩夏、最大の夕陽に三四郎が大はしゃぎの巻」



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