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ノルマンディ日記「チャールズに中央フランスをめぐる小旅行に誘われた父ちゃん」 Posted on 2023/03/03 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、チャールズのレストランに食事に出かけた。(三四郎は足元のバックの中)
ぼくたちはよくお互いの家を行き来しているので、チャールズの性格は知り尽くしているつもりであったが、まさか、フレンチ・レストランで「うどん」が出されるとは思わなんだ~。
たしかに、一度、オペラのうどんレストラン「国虎屋」に連れて行ったことはあったが、いくらなんでも冒険家過ぎるやろ、と思ったが、いやはや、これが、実にうまかった。
「何が、入っているの?」
恐る恐る聞いてみた。醤油ベースのスープなのだが、なんか、違う・・・。
「あのね、チョリソーとモルト」
「ええええ、マジか」
チョリソーソーセージはスペインの辛いソーセージだが、モルトはフランスのちょっと薫の香りのする大きなソーセージなのである。
「どうだった?」
「美味しかったけれど、びっくりした。勇気あるね」
「あはは、お客さんが衝撃をいつも求めてくるから」
魚のダシは使っておらず、チョリソーとモルトでスープをとっている。
「うどん」と謳ってはいるけれど、まあ「醤油系のスープ」ということになる。
チャールズが我が家に食事に来た時に、ぼくが「明太子パスタ」をつくったことがあった。その翌月、店に行くと、イタリアのゴミッティという乾麺にタラの卵を絡ませ、「ゴミッティ・ヒトナリ」なる料理を創作していた、・・・・怖いもの知らずのチャールズ。
なので、「うどん」が出ても驚かない。
こちらが、その「うどん」になる。これは前菜なのだ。マジで、うまかったよーん。

ノルマンディ日記「チャールズに中央フランスをめぐる小旅行に誘われた父ちゃん」

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で、メインが焼き豚だった。韓国風である。
もう、こうなると、フレンチとはいえない感じがする。やばい。
彼にとって、伝統的なフレンチだけで勝負するのは退屈なのかもしれない。
こういう料理をだしては、ぼくの顔色を窺い、驚かせては喜んでいる、へんな男。
それにしても、美味しかった。
前菜、メイン、デザートで39ユーロなのである。一応、星付きレストラン。笑。
満席だったが、チャールズの凄いところは、自分で作った料理は自分でお客さんに届けるところだ。
「今日はスーシェフが休みなので、忙しいんだ」
といちいちぼくに言いに来るくせに、料理を自ら運んでいる。
よくみていると、客が食べた料理を自分で下げている。
20人くらいのスタッフが働いているのだけれど、自分で出ていき、地元のお客さんらとの交流を忘れない。
愛されキャラなのである。
ぼくもチャールズは大好き。
「チャールズ、一枚!」
携帯をむけると、ぼくの前でポーズを作った。あはは、いい奴でしょ?
「ハーイ!」

ノルマンディ日記「チャールズに中央フランスをめぐる小旅行に誘われた父ちゃん」

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メインが終わる頃になると、チャールズがぼくのテーブルにやって来て、
「ところでひとなり、月末、一緒に旅しないか?」
と言うてきた。は?
「ちょっと疲れたから、仲間たちと中央フランスを回るんだけど、来ない?」
即座に、行く、と返事をした。
「うちのいとこがワイナリーをやっているので、まず、そこに立ち寄る」
「いいね」
「シャトーで泊まって、呑んだくれて、次の日も別のシャトーで呑んだくれて、みたいな」
「マジか。最高だね」
「でも、辻、ライブ近いから、平気かい?」
「今月の話でしょ? ライブは5月29日だから・・・」
「OK。コロナやインフルエンザにならないよう、ぼくが守るよ」
「あはは、なら、なおさら大丈夫だね」
「メンバーは12人なんだ。最高の旅になるよ」
「12人!」
それは、すごい企画であった。彼のいとこがワイナリーを経営しているのだという。そこにノルマンディの仲間たちが大挙押し寄せる。
これは、ギターを持っていかなきゃ、である。
ワインカーブで、ぼくのミニコンサート開催、となるのかな・・・。
三四郎は久々、ジュリアにでも預けることにしよう。
たまには、いいよね。

ノルマンディ日記「チャールズに中央フランスをめぐる小旅行に誘われた父ちゃん」



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
この小さな旅は、いわば、息抜きの旅になりそうですね。来月になると、もう、ライブに向けて厳戒態勢に入るので、オランピア劇場ライブ以前では最後の小旅行になりそうです。ま、二泊三日程度、ぼくは参加し、一人パリに戻る予定でおります。もちろん、ご報告いたしますね、中央フランスをめぐる旅、きっと最高ですよ。えへへ。
さて、エディットピアフも立った。ビートルズも立った。ローリングストーンズも、マドンナも、スティングも立った。あのオランピア劇場でのライブが近づいてきました。セットリストも決まりました。バンドメンバーも全員、盛り上がっております。フランス国内、もしくは周辺国、あるいは世界各地にお住まいの皆さん、ぜひ、遊びに来てください。旅慣れていない皆さんには、JALパック・パリさんが協力いたしますので、こちらをクリックください。

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ついでに、父ちゃんのニューアルバム「ジャパニーズソウルマン」、お好きな音楽プラットホームから選ぶことが出来ますので、聞いてみてくださいね。

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