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ノルマンディ日記「再び、海沿いの非日常の世界に潜りこんで」 Posted on 2023/02/18 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、三四郎とぼくは再びノルマンディの非日常の世界へと戻った。
夜明け、窓を開けると、静かで穏やかな、田舎の風景が広がっていた。
油絵具で描いたようなパリとは異なり、水彩画のような世界にぼくらは包囲されているのであった。
三四郎を起こし、ぼくは自分のためにコーヒーを淹れた。
遠くに海を見ながら、苦いのを、味わう。
この時間が好きだ。
窓の向こうに広がる田舎の風景を眺め、少しずつエンジンをかけていく・・・。

ノルマンディ日記「再び、海沿いの非日常の世界に潜りこんで」

ノルマンディ日記「再び、海沿いの非日常の世界に潜りこんで」

ノルマンディ日記「再び、海沿いの非日常の世界に潜りこんで」



三四郎に朝食を与えた後、アパルトマンから出る。
坂を下り、村を抜けて、浜辺を歩く。
犬を飼う人たち(実はほとんどがパリジャン、もしくは、パリで生きて来てこの地でリタイアをした人たち)とぼくは交流を持っている。
犬好きたちに悪そうな人は少ない。
三四郎を見ると、みんな、へー、かわいい、と笑顔を向けてくる。
人間がまだ小さなぼく、やっぱ三四郎が一番かわいい、と思っていたりする。えへへ。

ノルマンディ日記「再び、海沿いの非日常の世界に潜りこんで」

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春が近いとはいえ、まだ2月。
極寒の英仏海峡で遊泳をするため、どこからか、若者たちがやってくる。
気は確かか、と思うけれど、彼らは毎日、寒中水泳を楽しんでいる。
やれやれ。
ぼくは三四郎と海岸線沿いにある犬カフェに立ち寄る。
顔なじみのギャルソンに、テ・ア・ラ・マントを頼む。ミントティーである。
温まるのだ。
冷え切った身体にミントティーがやさしい。

ノルマンディ日記「再び、海沿いの非日常の世界に潜りこんで」

ノルマンディ日記「再び、海沿いの非日常の世界に潜りこんで」



アパルトマンには戻らず、車に乗って、買い出しに出かける。
20分くらい山道を走った場所に英国かと思わせるような港町がある。
そこでは観光バスのかわりに、馬車が活躍をしている。
この町にあるパン屋にはイギリス食パンが売っている。一斤購入する。
ここの食パンで卵サンドや、ハムサンドを作って食べている。
毎日、ランチが待ち遠しい。
食事時に生き甲斐を感じている。
そうだ、昼と夜の食事にぼくは命を懸けている。
量は少なくてもいいので、感動しながら、きちんと食べたい。
そして、ちょっと、気の利いた食事をとりたい。
美味しいワインを舐めたい。

ノルマンディ日記「再び、海沿いの非日常の世界に潜りこんで」

ノルマンディ日記「再び、海沿いの非日常の世界に潜りこんで」



おっと、仕事をしなければ・・・。
机の上のパソコンを開けば、世界中の仕事仲間たちと一瞬で繋がる。
遠くにノルマンディの海を見つめながら、ぼくはメッセージをおくる。
今の時代はどこにいても、いつものように、誰とでも普通につながって、仕事をすることが出来る。
疲れたら、コーヒーブレイクだ。
リラックス。
焦ることはない。
もう、今となっては、のんびり、堂々と生きていこう。
比較する必要もない。
正面には海しかない世界にいるのだから。
誰もぼくを批判することができない。
なぜなら、ぼくは閉ざされた世界で生きているのだから。
三四郎と・・・。

ノルマンディ日記「再び、海沿いの非日常の世界に潜りこんで」

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つづく。

今日も読んでくれてありがとう。
さて、「パリごはん」も放映されました。いつも暖かいコメント、ありがとうございます。(再放送が、21日にあります)
皆さん、どうぞ、良い、一日を!!!

地球カレッジ



ノルマンディ日記「再び、海沿いの非日常の世界に潜りこんで」

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