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リサイクル日記「人間はなぜ怒ったら負けなのか。本当の前向きについて」 Posted on 2023/03/03 辻 仁成 作家 パリ

 
某月某日、結局、僕はよく嫌なことを思い出しては、ぷんぷん、怒っている。
怒っている自分ってなんて情けないんだろうと思いながらも、ぷんぷん、している。
結構、怒るのが好きなのかもしれない。
この怒りのエネルギーは実際、生きる上で大事なものだったりもする。
怒ることにはエネルギーが必要だからだ。
ぷんぷん、で燃え上がることがある。
なので時々、短時間爆発するのが、いい意味でのぼくのガス抜きになっている。

でも、いつまでもいつまでも忘れられないこと、たとえば昔言われた嫌な言葉や意地悪や馬鹿にされた一言とかを思い出しては怒り続けているのはよくない。とってもよくない。
なぜかというならば、そういう過去にいまだ支配され続けているからこそ人間は思い出して怒るのである。
結局、それは嫌なことをされた、言われた奴らの怨霊にいまだ支配されているという証拠でもある。
だから、過去を思い出していまだに怒っている自分に気が付いたなら、ふっと笑って「ちいせ~ちいせ~」とおならでも手で払うようにしてその場から去るのがベスト。
自分のおならを嗅ぐ必要はないからね。

リサイクル日記「人間はなぜ怒ったら負けなのか。本当の前向きについて」



恨みを持つというのは、結局、過去にもめた連中にいまだ支配され続けているという悲しい現実だったりする。
思い出すたびに頭に来ているなら、それはその相手にいまだに牛耳られている証拠でもある。
忘れろ! 
きれいさっぱり、新しい人生を生きるのだぁ!!
気が付いた瞬間、即座に忘れるのがいい。
支配されているだなんて、それはあまりにも情けないことだからだ。
人生は短いのだ、もっと広い世界にでかけよう。
まだ、あんな過去に支配されてるの? 
悔しくないの? と自分に言ったらいい。
僕はそうしている。
そして、これ以上、自分をダメにさせないために、速攻、忘れ去る。
いいね、前向きな自分、最高だよ!

リサイクル日記「人間はなぜ怒ったら負けなのか。本当の前向きについて」



僕は今日、とっても悔しい過去を思い出した。
それはもしかしたら、一生恨んでもいいような出来事だったかもしれない。
でも、その経験がきっと今の自分をちょっと強くさせてくれたのも事実じゃないか?
二度とそういうものには近付かないという教訓を得ることも出来た。
それに、過去を恨み続けるということは今を無駄にしているということでもある。
いまだにあいつらの影響下にあると思うだけで、がっかりしちゃうなぁ! 笑。
だからこそ、そうだ、忘れろ! 
そんなことで今や未来を台無しにする必要などないのだから・・・。
ぐずぐず嫌なことを思い返していると、何か負のエネルギーが体内に溜まっていくような気がする。
綺麗な空気を吸い込んで、一気に嫌な気分を吐き出してしまえ。
美しい空を見上げたい。
美しい海が見たい。
赤ちゃんを見たらわかる。
本来、人間はみんな美しい生き物なのだ。
これこそが、本当の前向きなのである。
えいえいおー。
 

リサイクル日記「人間はなぜ怒ったら負けなのか。本当の前向きについて」



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