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フランス子育て事件簿「失くしたドゥドゥのゆくえ」 Posted on 2021/11/06 セギュール ちえみ(DS編集部) 料理好き パリ

子育てには大なり小なりの事件がつきものだが、10歳の息子がまだ3歳だった時、幼稚園に入園してすぐの頃だったか、家に帰ると大事なドゥドゥが見当たらない! という大事件が起こった。

「ドゥドゥ」とは、小さな子供が持ち歩くお気に入りのぬいぐるみや布のことを指す。
フランスの子供たちはドゥドゥを肌身離さず持っているのだ。
しゃぶりながら寝たりするので、ドゥドゥというものは、たいがいジメッとしている。
他人から見ればうす汚いぬいぐるみやボロ布にしか見えないが、子供にとってはかけがえのない存在。泣いている時も、ドゥドゥをギュッと抱きしめて気持ちを落ち着かせる。
親や誰かに頼らず、自分自身で人生の荒波を乗り越えていくことを学ぶための相棒。精神安定剤のようなモノなのだ。

フランス子育て事件簿「失くしたドゥドゥのゆくえ」

幼稚園初日、ドゥドゥに助けを求める図

 
フランスでは子供が生まれた時に、家族や親しい友人がドゥドゥをプレゼントしてくれる。
赤ちゃんが初めて自分の手で触れ、自分のモノという感覚を認識するのもドゥドゥだろう。たとえ「モノ」であっても、いつも近くにあり、触れている物には、不安を和らぐ効果がある、と、心理学的にも検証されているようだ。

ドゥドゥに選ばれるのは動物のぬいぐるみのことが多く、息子の場合は義母がくれた白いクマとオオカミのぬいぐるみだった。だった、というか、10歳になった今でも、毎日一緒に寝ているし、泊まりがけで出かける時など、まだその2つのドゥドゥをしっかりリュックに忍ばせている。

そんな大事なドゥドゥを失くしてしまった日、息子より動揺したのは親である私の方だった。
幼稚園から帰ると、手にしていたはずのドゥドゥが見当たらない。
記憶をたどり、どこかで落としてしまったに違いないことが判明した。
すぐに幼稚園までの道のりを必死で探し回り、町内中のゴミ箱を探した。
けれども、息子のドゥドゥを見つけることはできなかった。



フランス子育て事件簿「失くしたドゥドゥのゆくえ」

ドゥドゥ

 
寝る時間になり、息子にはプチヌヌス(息子が白クマにつけた名前、「ちっちゃいクマ」という意味そのまま)は幼稚園にお泊まりしてるから、今日はプチルー(息子がオオカミにつけた名前、「ちっちゃいオオカミ」という意味そのまま)と2人で寝よう、と、ごまかした。
その翌日、幼稚園には「気分転換に」と、無理やり違うぬいぐるみを持っていかせた。
けれど、息子だって、すぐにプチヌヌスがいなくなったことに気づくだろう・・・。

暗い気持ちで幼稚園に迎えに行くと、幼稚園の入り口で、一枚の張り紙が目に入った。
幼稚園には色々な張り紙があるけれど、その張り紙に目が止まったのは、息子が失くしたドゥドゥにそっくりな写真が付いていたから。
近づいて読んでみると、

「シモンを探しています!! 親愛なるシモン、君が僕を失くしたなら、ママに頼んでこの番号に電話してもらって。雨の日に道で拾われ、お風呂に入れてもらった。君の迎えを待っているよ。ドゥドゥ」

と書かれていた。

フランス子育て事件簿「失くしたドゥドゥのゆくえ」

幼稚園に貼られていた手紙

 

地球カレッジ

それは間違いなく息子のドゥドゥからの手紙だった。
すぐさま電話をしてみると、電話に出たのは自宅と反対側の通りに住むまったく知らないマダムだった。
息子のドゥドゥを道で拾い、名前が書いてあったので、洗って、幼稚園に張り紙をすれば持ち主が見つかるかも、と張り紙を作り、連絡を待ってくれていたという。
私もドゥドゥを失くしたことがあるから、と。

何か落としたり、忘れたりすると二度と手元に戻ってこないのがフランス。
(フランス人の友人は息子に同じドゥドゥを7個用意していた) 
そう思って諦めていた私は息子のプチチヌヌスがこんなあたたかい方に拾われ、夢のある形で息子の手元に戻るとは想像もしていなかった。

フランス子育て事件簿「失くしたドゥドゥのゆくえ」

友人の息子が持っている同じドゥドゥ×7

 



街を歩くお爺ちゃんも、カフェの店主も、大統領だって、ドゥドゥと共に大きくなったフランスの大人たちは、子供にとって、ドゥドゥがどれだけ大切なものかをよーく知っている。

ドゥドゥは赤ちゃんが大きくなって自立するまで、子供たちの心を支え続ける。
フランスの子供たちはドゥドゥと一緒に強く、大きくなってゆくのだ。
10歳になった息子は今日もドゥドゥと仲良く眠りにつく。

フランス子育て事件簿「失くしたドゥドゥのゆくえ」

プチルーとプチヌヌス

 

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Posted by セギュール ちえみ(DS編集部)

セギュール ちえみ(DS編集部)

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パリ在住の料理好き。特にトラディショナルな料理に魅力を感じている。