PANORAMA STORIES
何食べているの~、父ちゃんのノルマンディ飯(19) Posted on 2025/10/05 辻 仁成 作家 パリ
おつかれさまです。
誕生日だったのですが、ぼくの誕生日を知っている人もこの界隈にはいないので、友だちのレストランに予約もせず、三四郎と、行ってきました。
普通、フランスは自分がみんなを招待して、誕生日会などをやるんです。そういうしきたりで、日本とは違います。
でも、なんかね、もう、そういう年齢じゃないですから、さらっと、過ごしました。
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なにせ、老けていくのが辛いですからね、誕生日が来るごとに、がっかりしています。
なんで、老けるのか、理解できません。
この間まで16歳だったのに、光陰矢の如し過ぎるんですよ、人生というものは・・・。
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しゃがんで庭仕事とか、腰を曲げて絵を描いたりするだけで、きついんですけれど、立ち上がる時に、背中に手をあてて、おじいちゃんが「よっこらしょ」っと掛け声をかけるじゃないですか、あれやらないと、めっちゃ、辛い、ということは、え、おじいちゃん決定!
自分も立ち上がる時に、身体が痛いものだから、つい、手を腰とかにあてちゃうわけで、ああ、老人になったな~、と実感する毎日です。
しんき臭ェ~~・・・
これじゃあ、ダメだ。なんとかしなきゃ、と毎日対策会議を開いているんですけれど、老化だけは食い止められません。悔しいですなー。
別に若返りたいわけじゃないし、いいですかね、このままで・・・
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ということで、誕生日の朝、自撮りをしましたので、記念に、どうぞ。
え?
いらん?
あはは。
個人的な老後の記念にしときます。
66歳、来ましたね。還暦過ぎたばっかりやったのに、もうすぐ、古希。笑。
ルート66で行くよ。
毛が、かなり細くなってまいりました。もともと猫毛なんだけれど、もう、揖保乃糸。
白髪も、数えられるくらいに増えたし、でも、ロマンスグレーにはなりそうにないし、・・・。
何が一番変化したか、というと、裸眼で本を読めていたのに、(ちなみに、この記事は裸眼で書いています)夜になって、光量が落ちますと、とたんに「老眼鏡はどこじゃーーーー!」となります。歳には抗えませんな。
寂しいじゃないですかァ・・・。
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しょうがないので、友だち(チャールズじゃない方)がシェフをやっているレストランに行き、いいワインを頼んでやりました。
誕生日、なんにも予定がないので、先細っていく鉛筆のような気分です。
今日は、贅沢をさせてもらいます、ということで、赤み肉のステーキを食べました。仏語で、フィレ・ド・ブッフ、と言いまして、ビストロで一番効果な肉メニューになります。しかも、ちょっとしか量がない。直径7センチ程度。
ソースはなし、フラードセル(塩の華)だけで、頂くのが父ちゃんスタイル。いい肉にソースは必要ありません。
いい男に高級ブランドスーツが必要ないのと一緒です。あはは。
たいへん、おいしゅうございました。
そして、付け合わせはフリットです。ワイン呑んで、フリットつまんで、肉を噛んで、よし、これから1年、もうちょっと頑張ってやろうじゃないか!!!!
で、帰ろうかな、と思って帰り支度おしておりましたら、御覧ください。
こういうスペシャルなギフトがあったんです。
というのも、店に入る時から、馴染みの店員さんたちに、
「俺、今日、誕生日」
「今日がバースデイーなんだ」
と言いふらした効果、というか、要求?
人気者は違いますな。
隣の席のマダムたちが、拍手を送ってくださいました。ぱちぱちぱち。
一生忘れられない誕生日というのは聞いたことがありますが、明日にも忘れそうな、誕生日というのも、この年齢になると普通なんです。
さよならいつか。
80歳になったら、盛大に祝ってもらいたい、と思っていますが、その時、まだ、ぼくは元気なのでありましょうか。
ともかく、今は、来週に迫ったパリでの個展に向けて、最後の力を振り絞っているところです。
ノルマンディのアトリエから、30枚の画布を抱えて持ち帰らないとなりません。自分で運転していきます。相棒の三四郎と!
すでに、数点のご予約を頂いているので、愉しみです。
10月13日から、26日まで、個展は続きます。画廊の開く時間は14時から18時くらいまで、気を付けてくださいね。
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新しい時代を切り開いて、ゴッホか、ピカソか、父ちゃんか、歴史に名を残せるように、あはは、がんばりまっせー。
えいえいおー。
久しぶりに、NHK「パリごはん」の再放送が決まりました。
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「ボンジュール!辻仁成のパリごはん 2023SP」
今回は、NHK BSP4Kでの放送となります。
「ボンジュール!辻仁成のパリごはん 2023SP」
【再放送】 NHK BSP4K
10/13(月・祝) 午前9:30~10:59
photo OHNO TOSHIO(SEKAI)
辻仁成、個展情報。
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パリ、10月13日から26日まで、パリ、ピカソ美術館そば、GALERIE20THORIGNYにて「辻仁成展」2週間、開催。
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1月中旬から3月中旬まで、パリの日動画廊において、グループ展に参加し、6点ほどを出展させてもらいます。
Posted by 辻 仁成
辻 仁成
▷記事一覧Hitonari Tsuji
作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。