PANORAMA STORIES
想い出の美味しいもの旅日記「アンダルシア旅」 Posted on 2026/07/15 辻 仁成 作家 パリ
※ 2019年にスペインのアンダルシアを旅行した時の、旅日記を掘り起こしました。
パリのマルシェで出会った美味しいもののルーツを求める旅は、前回がイタリアのフィレンツェ、その前がポルトガルのリスボンであった。
そして、今日からぼくはスペインのアンダルシア地方へと取材旅行に出かけるのである。
ぼくの頭の中ではロッシーニの「セビリアの理髪師」が響き渡っている。
アンダルシアといえば、スペイン南部に位置し、フラメンコダンスと闘牛の発祥地として知られている。
シェリー酒でも有名だ。
南下するとジブラルタル海峡がある、グラナダにはアルハンブラ宮殿などがあり、アラブ文化との接点でもある。
とにかく、ディープなスペインが堪能できる地域なのだ。
息子君はバカンスが終わり、新学期が始まったので、食べ物を冷蔵庫にわんさか詰め込んで、ぼくは一人出かけることになった。
家事、子育てに疲れて、ちょっと鬱気味だったので、大いなる気分転換になることであろう。
料理雑誌での連載が名目の、ようは気分転換旅行でもある。
ああ、やっと休める。
息子がふさぎ込んで仕事ばかりしているぼくに、「パパ、たまには自分のこと大事にしなよ」と言った。
「自分こそ大事にしないとだめだよ」と叱られた。
ということで、息子のお墨付きも頂いたので、思う存分、アンダルシアを満喫したいと思う。
スペインは25~30回は訪れた大好きな国だがアンダルシアは初めて・・・。
ここを制すればほぼスペイン制覇となる。個人的には期待値は最高レベルだ。


セビリアに到着して、地図もないまま、夜歩きをした。
そして、地元民で溢れかえる店を見つけたので、大きなスペイン人を押し分け、中へ中へと…。(ほんとうに度胸があるよ)
ラモンおじさんが経営するお店であった。
満席で「席はない」と言われたが、「一人ならカウンターで飲み食いできるよ」とかなりわかりにくい英語で言われた。
ついていくとカウンターじゃなく、客席と客席の間のワイン台を与えられた。はじめての経験だ。みんなすぐ真横で、しかも着席して食べていた。恥ずかしい…
「おすすめの何か、ください」
とラモンさんにいうと、彼が考案したというラモンの卵、Huevos de Ranon というのを出してくれた。
ぼくはそれとこの地域のおすすめのシェリー酒、Pastranaを頼んだ。
卵と茹でジャガイモという超シンプルな料理だったが、これが信じられないくらいに絶品だった。
「うまい!!!」
思わず大きな日本語が飛び出し、お客さんの失笑を買った。
小皿料理を他に3品、ワインを3杯、お腹いっぱいに食べて、飲んで、なんと、15ユーロ! パリだったら、50ユーロはするはず、安い!!! さすが、アンダルシアだ。
初日の夜から大満足であった。


タパス、またはタパは、いわゆるスペインのアペタイザーのことで、日本では小皿料理として広まっている。
小皿に蓋(タパ)をかぶせていたところ(ハエから食べ物を守るためという説が有力)からタパスと呼ばれるようになった。
スペイン人は夕食が遅いので、ディナーをとる前にちょっとつまむ感じでタパスをはしごする。日本人の胃袋的には、というのかぼくの胃袋ならタパスだけで十分だ。
ともかく、ぼくは歩きながら、自分の目と感覚でガイドブックにない美味しい店を探して歩きたい。
こういう予定調和のない、人間賛歌の旅が大好き。さて、どんな出会いがあるだろう。まずは、ラモンさんと出会うことができた。
ということで、このラモンおじさんの卵料理、作り方はぼくのYouTubeで、御覧くださいね。詳しく、レシピ、解説しております。美味いよ!
下のURLをクリック!
https://youtu.be/v5TT8KLn0mw

Antigua Abacería de San Lorenzo
Calle Teodosio,53,41002 Sevilla

Posted by 辻 仁成
辻 仁成
▷記事一覧Hitonari Tsuji
作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。




