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ミュンヘン日本語補習校の試み Posted on 2020/03/18 川合 英介 建築士 ミュンヘン

先日、小学校2年生の次男君の友人が、泊りにきた。彼はドイツ学校の友人で、息子はその学校には平日通っている。では、日本語は何処で学習しているかというと、一週間に一度、土曜日に日本語週末校に通っている。結果、二つの異なる学校に通う事になり、それぞれで友人を持つ事ができるので二倍も楽しいじゃないか、と大人は考えるのだけど、どうもそういうわけでもないらしい。

友人が多くできるのは、どちらかというと副産物で、子供たちにとっては負の側面が強い。平日は、ドイツ語の授業と宿題があるのに、それに加えて、土曜日の日本語学校の宿題までしなければいけない。自分の息子たちは、進んで勉強をする気はまるでない。宿題をやっていたはずが、ボーと遥か虚空を覗き込んでいたりする。
次男君には、日本語週末校に入学した当初は、「どうして、日本語週末校に申し込んだの?」と何回も聞かれ、そこには明らかに「余計なことして」、という批判的なニュアンスが含まれていた。

長男君は5年生まで日本語週末校に通ったが、6年に上がる段階で退学した。自分が日本語習得に関して厳しすぎたのも、その原因の一つだった、と今では反省している。

ミュンヘン日本語補習校の試み

それ以降かなりほったらかしていたら、なんと最近は日本の文化(というかほとんど漫画と音楽)が彼のアイデンティティーに次第に影響を与えていることが散見されるようになった。今年1月に「天気の子」がドイツで上映されたが、「自分の誕生日会として、友人を招待して見に行きたい」と言い出した。ちなみに彼の誕生日は8月である。結果、ドイツの友人たちと日本文化を共有できたことを嬉しそうにしていた。加えて、一日に少なくとも一時間はRADWIMPSをピアノで弾いている。
先日は、日本語週末校にもう一度復学するのもやぶさかではない、と言い出したのだから、驚きである。

ところでこの日本語週末校、子供たちの苦労もさることながら、親たちの苦労も並大抵のものではない。子供たちの尻をたたいて日本語の学習をさせ、親子で休日の半分を学校で過ごし、学費を払う。それには、何故、そうしなければいけないのかという、子供と自分自身を納得させる理由が欲しい。なんとなくだけど、僕にとってのそれは、「日本語を勉強して、日本という自分のルーツをより理解してほしい」ということなんだろうなぁ、と思う。

だから、日本に帰省する際には、子供たちを日本色の濃い所へ連れ回す。前回は、長男と、京都、大阪へ小旅行をした。お寺の宿坊に泊まり、金閣、銀閣、銅閣見学を制覇し、蓮華王院で彫像群を見て、風神雷神図を拝み、茶室の起源から秀吉の天下統一へ想いを馳せた。

ミュンヘン日本語補習校の試み

ミュンヘン日本語補習校の試み

日本語週末校は、保護者のイニシアティブで運営されている学校で、保護者が自分たちで学校組織を運営していかなければいけない。つまり、平日から宿題でブーブーいう子供たちの背中を押して、土曜日の授業に出席させ、そして学校運営までしなければいけない。

ミュンヘンの週末校は、年によって変動があるが、150人以上もの子供たちが通う大所帯。だから、これを動かすだけでも大変なのに、色々なことが突発的に起こる。
今までは運営委員という保護者の代表者が大部分の運営の仕事を請け負っていたが、これではやってられんぞ、という話になり、昨年は改革について話し合った。
4月からは新しい体制で臨む一年目である。諸々の事情で、僕も運営委員に就任することになった。これからどうなってしまうのか。事態は好転するのか、暗転するのか。早速、コロナ問題と対峙しなければいけない局面に望み、気の引き締まる3月である。

ミュンヘン日本語補習校の試み



Posted by 川合 英介

川合 英介

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Eisuke Kawai
建築士。静岡県出身。2003年交換留学生として渡独。以来、ミュンヘン在住。ミュンヘン工科大学にて「都市壁撤去後の都市境界形成」について博士論文を執筆、博士号取得。現在、建築士として設計事務所に勤務。住宅、幼稚園、事務所、集合住宅の新築、改修、増築プロジェクトを担当。パティシエの妻、二人の息子とバイエルン生活をドタバタとエンジョイ中。