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『チーズの声』第二話 サンネクテール Posted on 2020/05/10 久田 恵理 チーズ熟成士 パリ

Bonjour à tous!!
今回は、「サンネクテールフェルミエ」 L‘AOP Saint Nectaire Fermier の声をお届けします。

名称 Saint Nectaire Fermier
産地 フランス🇫🇷オーヴェルニュ地方
乳種 牛乳製
サイズ 直径 約22cm 高さ 4-5cm
最低熟成期間 6ー8週間

サンネクテールは日本人にはまだまだ馴染みがなく食した経験がない方も多いチーズの一つですが、フランス人にとっては、ナンバーファイブ(5位内)にランクインするほどの人気チーズの一つ。
このサンネクテールチーズの大きな特徴は、まさに一つとして同じ味がないと言われるほど土壌、ミルク、作り手、熟成士により個性豊かな外観、組織、アロマの違いを味わうことができます。

産地であるオーベルニュの地元で人気なものは、赤茶色の外皮にグレーのカビを纏い、組織はキュッと旨味と共に締まっているものなのに対し、パリで人気なのは、ビロードのようなグレーカビに覆われて、中はしっとりもっちりクリーミーなもの。
コクを味わうというよりは、口の中に広がるアロマやその後の余韻を楽しむ傾向があります。

『チーズの声』第二話 サンネクテール


同じ農家製でも作り手によって出来上がりがこんなに違います!
グレーカビに覆われた農家製(無殺菌乳製)とオレンジ色に仕上がる工場製(殺菌乳製)。

 
 
通常パリの市場に定期的に届くものでは満足できなかった私は、初代マダム久田と共に美味しい味を探し求め、オーヴェルニュへ。その時(4年前)に出会った、作り手さん、熟成士さんとはずっとお付き合いが続いています。毎年現場に出向き、コミニケーションをとりながら美味しいチーズがパリのお店や日本に届くようにお願いしています。今年2月にも、サンネクテール農家の協力の元、チーズ作りを体験してきました。

『チーズの声』第二話 サンネクテール


サンネクテールの熟成庫内にて。
とびきり美味しいサンネクテールを選びました!

 
 
パリ店(Fromagerie Hisada)は現在も新型コロナの影響で休業が続いていますが、日本市場にはこの貴重で美味しいサンネクテールが入荷しています。ご興味のある方は日本の販売先まで直接ご連絡お願いします。
(チーズ王国🧀http://www.cheese-oukoku.co.jp) 
*数に限りがあるため、売り切れていたらごめんなさい。

『チーズの声』第二話 サンネクテール


日本のスタッフとの研修旅行。
サンネクテールの熟成庫内いい香りと共に!

 
 
チーズ農家の危機
 
「covid-19」に伴い、世界的に危機的な状態が続いています。この、見えない敵といつまで戦えばいいのか? 大変厳しく窮屈な生活を送ってる方が多い状況が続いていますが、世界のチーズ市場の売り上げや消費は60%以下に落ち込み、農業大国フランスのチーズ農家でも悲しい現実が起こっています。

チーズ作りに欠かせない原料の乳は牛や山羊、羊、水牛などから得ています。これらの動物は、毎日ミルクを絞らないと病気になってしまいます。高品質のチーズに向く良質なミルクは、子の誕生とともに得れるのですが、春から初夏は牛の乳量が年間でも一番多く、また山羊と羊においては、現在出産のピークを迎えています。この時期に消費が落ち込む事は皮肉としか言いようがありません。

フランスにおいては、地元に密着型のFromagerieと呼ばれるチーズ専門店は営業時間を短縮するなどして、営業を続けていらっしゃる店舗も見受けられますが、マルシェ(野外市場)が営業禁止になったことによりチーズの流通は一気に下降の道を辿り、良質なミルクが破棄される状況が続いています。

『チーズの声』第二話 サンネクテール


美味しいミルクの提供者。半年以上の期間放牧が義務づけられている。
寒い季節や休憩は牛舎の中で!

 
 
このサンネクテールは、原産地呼称統制(AOP)の伝統とチーズ作りの厳しい規定を守って作られているチーズの一つでもあり、その決められたルールを守るためにチーズ農家たちを苦しめる決断をさせています。

絞ったミルクは長期保管が許されずチーズ製造しなければいけない事。農家ではミルクを殺菌出来ず、飲料として販売もできません。消費が落ち込むと作ったチーズの行き場がなくなります。だからミルクを絞って破棄する日々を送っているのです。

『チーズの声』第二話 サンネクテール

ミルク豆腐プリン🥛
チーズの最初の工程。

 
 
この悲しい現実を知り、サンネクテールと農家の声を皆さんにお伝えしたいと思います。困ってるのは、このサンネクテール農家さんだけではなく、世界的にミルクが破棄されている現状があります。日本に於いても、学校給食、レストラン、大手カフェチェーンの自粛休業が続きそれらのミルクの行き先が無く困っていると聞いています。

みなさんにぜひお願いしたいことは、いつもより1本多く牛乳を購入して欲しいということ。また、どんなナチュラルチーズでもいいので、家の冷蔵庫に1-2種をストックする習慣を持って欲しいのです。そして毎日、一口、二口、継続して食べてください!

ナチュラルチーズは、食べるビタミンカプセルと呼ばれるほどに良質なカルシウムやタンパク質、酵素、ビタミンAやビタミンB2が多く含まれています。カロリーを気にして食べていないという声もありますが実際にはその逆でチーズに含まれる乳脂肪はものすごく小さい脂肪球で体には蓄積されず、チーズに含まれるビタミンB2と一緒に摂取することで食べたものを消化させ、熱代謝として活発に脂肪燃焼させる効果があります。

「コロナ太り」したーっという方、いらっしゃいませんか?
この機会に、地中海式ダイエット、野菜や果物とナチュラルチーズ中心の食事もおすすめします。髪や肌、身体は食べたもので出来ている! 日々続ける事で、その嬉しい変化に気付けます。また、ナチュラルチーズはトーストだけでなく、お味噌汁にも相性抜群。洋風料理だけでなく、和風にもどんどん、ナチュラルチーズを使ってください。

cafeに多めにミルクを注ぐ! いつもより少しだけ多く!
皆さんのちょっとずつの心の助けと行動が、農家さん達にとても大きい希望となって戻るのです。
チーズ🧀とミルク🥛への応援を引き続きよろしくお願いします。

『チーズの声』第二話 サンネクテール


365日。毎日。朝4時夕方5時に搾乳。
農家の仕事はお休みなんてないのにいつも満面の笑顔で働いてる!

 
 
「コロナと共存、Virusと共に生きる」と、フランスのフィリップ首相。そして、フランスは5月11日に外出禁止措置が終了します。その後の生活について、段階的に社会経済活動の制限を暖和すると聞いていますが、カフェやレストラン、図書館などフランス人の生活に欠かせない施設はまだ解除されません。より一層、自己責任の強さが増すのだと気を引き締めています。

フランス当局は非常事態宣言を7月下旬まで継続させることを決めました。日本や海外から観光でいらっしゃる方々に安心してパリ滞在を楽しんでいただける日まで、乗り切って行く決意です。

『チーズの声』第二話 サンネクテール


熟成士ローリアンヌとは姉妹のように仲良しです❤️
天日で干した牛の大好物(干牧草)すっごくいい香り!

 
 

Posted by 久田 恵理

久田 恵理

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短大卒業後、(株)久田に新卒で入社。2004年、Fromagerie HISADAのOPEN準備スタッフとしてフランス店勤務となり、その後 約2年間フランスにて、製造、販売、熟成、輸出業務に携わる。2006年、輸入会社 KEN INTERNATIONAL JP 設立。代表に就任し、現在は、輸入者の代表として各国(フランス・イタリア・オランダ・スイス・オーストリア・スペインなどのヨーロッパ、オーストラリアなどの南半球)への出張、食材探し、及び、(株)久田 副社長代理を務める。またチーズを広めるための普及活動として、各地チーズのイベント業務、チーズ講師として活躍中。