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フィンランドの森で癒やしのキノコ狩り Posted on 2021/11/22 ウエマツチヱ プロダクトデザイナー フランス・パリ

フィンランドの森で癒やしのキノコ狩り

 
フィンランドの森では、冬を目前にキノコ狩りが、最後のチャンスを迎えている。
首都ヘルシンキからバスで30分の場所にある、シプンコルピ国立公園に向かった。
民泊サイト「Airbnb」では旅先で、様々な「体験」が申し込めるのだが、それを利用し、キノコ狩りの名人に案内をお願いした。
 

フィンランドの森で癒やしのキノコ狩り



 
ヘルシンキ市内よりも、気温が低く感じる自然豊かな土地。
ムーミンがひょっこり出てきそうな雰囲気の、不思議だけど優しい空気の森だ。
足元は分厚い絨毯のようなフカフカの苔。様々な緑が折り重なり合い、踏みしめる場所で質感が異なり、歩いているだけでも楽しい。
自分たちだけでは方向感覚を失ってしまうそうな深い森を、案内人のニコルさんはどんどん先に進んでいく。
「携帯とか、GPSとか、現代機器に頼る方が道に迷う。ひとりで来るときは携帯も持たずに来るんだ」と。
方向を見失わないポイントは太陽の向きだというが、薄曇りで日がほとんど差さない今の季節は、素人には難しそうだ。
 

フィンランドの森で癒やしのキノコ狩り

 
今は、ミキイロウスタケというキノコが採れる。
これは、フランスで人気のキノコ、ジロール茸の仲間で、とても風味が良い。
ニコルさんに生で食べてみることを勧められ、恐る恐る口にすると、森の香りが口の中いっぱいに広がった。
周りの松の樹の影響を受けるのか、針葉樹の爽やさ。
キノコが少し凍っていて、改めて気温の低さを実感した。
また、ジロール茸も、ひとつだけ見つけた。
日本ではアンズ茸というが、ニコルさんは「森の花」と呼んでいて、その名の通り、薄暗い森の中で、パッと鮮やかなオレンジが目立って愛らしい。
 

フィンランドの森で癒やしのキノコ狩り

フィンランドの森で癒やしのキノコ狩り

地球カレッジ



 
キノコがある程度採れたら、湖が見渡せる高台の焚き火コーナーに向かった。
誰でも無料で使えて、薪まで用意されている公共施設だ。
キノコは、シンプルにオリーブオイルと塩で味付け。
凍っていた水分が旨味に変わりスープのように溢れ出す。
パンの上にのせ、熱々を火傷しながらも食べるのが止まらなかった。
 

フィンランドの森で癒やしのキノコ狩り

フィンランドの森で癒やしのキノコ狩り



 
ニコルさんは料理教室も行っており、そこで教えているフィンランドの伝統的なパイや、シナモンロールも持ってきてくれた。
この森で摘んだ木の実で作った、甘酸っぱいジャム入りだ。
日々の暮らしは、森で摘んだものを多く取り入れているそう。
たくさん取れたときは保存食にするなど、かつての日本人の生活に近いものを感じた。
 

フィンランドの森で癒やしのキノコ狩り

 
私達がキノコを焼いている間にも、持参したソーセージや、串に刺した肉を焼く地元の人たち。
その場で、会話も生まれる。
そのとき、ニコラさんは、フィンランド語でも英語でもない言葉を話していた。
聞けばイラン語だという。
ニコラさんはイラン系クルド人で、21歳のときにフィンランドに移り住んだ。
住んでいたクルディスタン地域の街が化学兵器の攻撃を受け、難民として受け入れられたという。
 

フィンランドの森で癒やしのキノコ狩り

 
後から調べてみると、「ハラブジャ事件」という、イラン・イラク戦争の末期に起こったもののようだ。
フィンランドに来る前は、フィンランド語はもちろん、フィンランドがどんな国かもよく知らなかった、とニコラさん。
他国への移住を希望するかどうかのみで、どこの国に行くという選択権はなく、友人知人たちは数カ国に振り分けられたそうだ。
移住後に、電気技師の資格を取り、大学まで行った。
堪能な英語もフィンランド語も、その頃に必死で学んだという。
 

フィンランドの森で癒やしのキノコ狩り

フィンランドの自然の魅力について語るニコラさんだが、壮絶な時期を経たからこそ、たどり着いた穏やかな暮らしなのかもしれない。今では、6人の子どもたちのお父さん。最近は、「チャーガ」と呼ばれる白樺にできる幻のキノコを見つけたと、嬉しそうに写真を見せてくれた。粉末状にして飲むと一日元気で過ごせるそう。他にも、色々な自然の恵みの効能を教えてくれた。疲れたときには森に来て癒やされるそうで、自然が身近にある生活が羨ましくなった。私たちも、2時間以上は歩いたが、不思議と疲れなかったのは森の力かもしれない。自然とともに暮らし、その魅力を訪れる人々に伝えるニコルさんとの素敵な出会いであった。

フィンランドの森で癒やしのキノコ狩り

自分流×帝京大学



Posted by ウエマツチヱ

ウエマツチヱ

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tchie uematsu
フランスで企業デザイナーとして働きながら、パリ生まれだけど純日本人の娘を子育て中。 本当は日本にいるんじゃないかと疑われるぐらい、日本のワイドショーネタをつかむのが速い。