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ペラーラの入り江 Posted on 2021/04/23 八重樫 圭輔 シェフ イタリア・イスキア

発生から1年以上経った今も、依然として猛威を振るっているcovid-19。多くの国々では海外旅行はおろか、日常生活においても不自由を余儀なくされています。行楽シーズンに入ってもどこにも出かけず家に籠りきり、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。そんな中、皆さんと共にエア・ピクニックを楽しもうと、イスキア島にあるハイキングコースを2回に渡りご紹介しています。前回は、かのスタンダールも訪れたという絶景の岬までご案内し、ランチタイムに入ったところでした。今回は、ペラーラという名の、訪れる人も少ない秘密の入り江まで足を延ばしてみたいと思います。さあ、準備はよろしいですか?それでは出発です!
(※最後に地図と、イスキア島の簡単な説明がありますのでご参照ください。)

ペラーラの入り江

地球カレッジ



岬までの行程を半分ほど引き返すと、分かれ道があります。先ほど通ったのはこの左側でした。下の標識にはペラーラの入り江の小径とあり、これが今回のコースです。ロープの手すり、簡素な木枠の階段。いつの間にか童心に戻ってわくわくしている自分がいます。

ペラーラの入り江

ペラーラの入り江



坂を下りると、一本道が続いています。生い茂る植物たちに陽の光は次第に遮られ、少しひんやりとした、瑞々しい空気が満ちてきます。そしてここを抜けると、、、

ペラーラの入り江

土地が急に開けて森が姿を現します。なだらかな起伏があり、子供が遊ぶにはちょうど良い大きさです。写真は去年の2月中旬のものですが、きっと今頃は美しい新緑に溢れている事でしょう。トキワガシやナラの木、ヤマモモにエニシダ、足元にはシダやヒースが広がり、誰かの訪れを静かに待っているに違いありません。

ペラーラの入り江

気が付くと森の魔法にかけられて、時間が随分過ぎていました。秘密の入り江へ、少しだけ足を速めましょう。



ペラーラの入り江

けれども途中でこんな洞窟を見つけたら、寄り道しないわけにはいきません。え、中には何があったかですって?それは、、、皆さんの想像力にお任せしましょう。さあ、木がだいぶまばらになってきましたよ。出口が近いようです。

ペラーラの入り江

そして森を抜けると、目の前には荒々しい谷と、青い海が姿を現します。ここからは少しだけ険しい道が続きます。靴の紐を締め直し、足元に注意して歩いてくださいね。



ペラーラの入り江

うねりくねったむき出しの地層や、火山岩の間を縫うように進みます。古代の噴火活動や地殻変動に思いをはせ、自然への畏敬の念が生じます。さあ、あともうひと踏ん張りです。

ペラーラの入り江

ペラーラの入り江



お疲れさまでした!ここが道の終点、ペラーラの入り江です。周囲を断崖絶壁に囲まれた、小さな秘密の入り江。聞こえてくるのは潮風と、岩を洗う波の音だけです。それでは皆さん、しばらくの間、思い思いに過ごしてください。

ペラーラの入り江

中世には海賊の襲来に悩まされていたイスキア島。もしかしたら、彼らはこの入り江にも上陸したのかもしれない。そう考えると、水平線の向こうに帆船が見えたような気がしました。大人になり、いつしか忘れてしまった日常に潜むファンタジーを、入り江はもう一度呼び起こしてくれました。皆さんはどんなことを考えましたか?さて、太陽がだいぶ傾いてきましたね。名残惜しいですが、暗くなる前に帰路につきましょう。深呼吸をして、ただただ目の前にあるものを心に刻みます。



何度も振り返りながら坂を上ると、ペラーラの入り江は最後に素敵な贈り物を届けてくれました。空と海と夕日を絞った、一杯のカクテル。それはどんな海賊の財宝にも負けない深い輝きです。ゆっくり飲み干すと、あの下には今頃セイレーンが集まっていても不思議ではない、そんなほろ酔い気分になりました。

さて、今回のハイキングコースはいかがでしたか?写真を整理しながら、僕ももう一度あの場所に行って楽しむことができました。最後までお付き合い頂きありがとうございました。そして一日も早く、また自由に旅のできる世界が戻りますように。

ペラーラの入り江

(参照)
イスキアはイタリア南部のカンパーニア州(州都ナポリ)に属する面積46.3㎢、人口約7万人の島で、標高約787mのエポメオ山を中心に広がっています。幾度にも渡る古代の噴火によってできたイスキア島には、その温暖な気候や温泉を求めて世界中から観光客が訪れます。風光明媚なロケーションは画家や小説家、音楽家など多くの文化人たちも魅了し「太陽がいっぱい」をはじめ、沢山の映画の舞台にもなっています。また、紀元前8世紀半ばにはヨーロッパ最古のギリシア人による植民都市ピテクサイが建てられ、地中海交易の中継地として発展しました。貴重な発掘品はナポリの国立考古学博物館をはじめ、一部は島の博物館にも納められています。豊かな食材を使った素朴な郷土料理も魅力の一つで、ワイン作りも盛んに行われています。

ペラーラの入り江

ペラーラの入り江

自分流×帝京大学



Posted by 八重樫 圭輔

八重樫 圭輔

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Keisuke Yaegashi
シェフ。函館市生まれ。大学在学中に料理人になることを決め、2000年に渡伊。現在は家族とともにイスキア島に在住。