PANORAMA STORIES

マダム・アコのパリジェンヌ通信”パリジェンヌたちからの学び、心弾むもの” Posted on 2023/09/30 Ako アーティスト/フリージャーナリスト パリ

 
「親愛なるAko。お願いがあります。来年7月*日を開けておいてくれるかしら?」と、友人からショートメッセージが届きました。
夏のバカンスが終わってすぐに、次の夏の話なんて、フランス人でもなかなか珍しい。秋が深まるやいなや始まるこれからの話題は、なんと言ってもノエルの過ごし方=クリスマス休暇ですから。
 

マダム・アコのパリジェンヌ通信”パリジェンヌたちからの学び、心弾むもの”



 
けれどすぐに、私はそれが何を示すかわかり「わーお!」と声にしながら、メッセージを返しました。
「もちろん、絶対に!あなたと同じくらい今、私はとても幸せな気持ちよ!」
それは、20代や30代の頃に届いたウェディングパーティのご招待とは違う種の、胸にくる喜びがありました。
そして涙が出そう。
 

マダム・アコのパリジェンヌ通信”パリジェンヌたちからの学び、心弾むもの”

 
私がパリに住み始めてから数年たった20代から30代の頃は、同年代の友人や旦那さんの同僚たちなどの結婚ブーム。
おかけで、随分と様々なスタイルのフランスの結婚式に招待して頂きました。
フランスには結婚式場というものが特になく、カップルはそれぞれみな違ったスタイルで、リゾートホテルや、お城や、田舎のお家や、船や、レストランなどを会場にして、オリジナルな結婚式を開きます。
それは大体たっぷり一日(時には二日間!)に及び、教会へ行って、市役所へ行ってと、初日の日中はそんなお決まり事をこなし、その後はそのカップルならではの個性あるパーティがゆったりと、夕刻くらいから始まります。
 



TSUJI VILLE

マダム・アコのパリジェンヌ通信”パリジェンヌたちからの学び、心弾むもの”

 
まずはシャンパン片手のアペリティフ。
カナッペなどをつまみながら庭を歩いたりして招待客たちは自分を紹介し合ってコミュニケーション。
それから着席での長い食事会が始まります。
それは典型的なフレンチのフルコースで確かに長いのですが、かしこまらないスピーチがあったり、二人の映像が流れたり、歌が歌われたり、二人を主役にしたショーのようなものが繰り広げられて、大笑いしたり、友情や家族愛にジーンと涙がこぼれたりで、美味しく楽しいひと時です。
そして0時前後になるとダンスパーティが始まります。
社交ダンスのようなものから始まって、だんだん弾けて、ディスコパーティになっていきます。
踊るのは若者が中心だと思ったら大間違い。
小さな子供からおじいちゃんおばあちゃんまで、みんな一緒です。
そしてもちろん、新郎新婦も!
私はいつもダンスが始まる頃合いにハイヒールをこっそり脱いで、車のトランクに入れておいた踊りやすい靴に履き替え、心ゆくまで誰より弾ける準備です。
 

マダム・アコのパリジェンヌ通信”パリジェンヌたちからの学び、心弾むもの”



 
そんな結婚式が久しぶりにあるというのもワクワクですが、なんと言っても、彼女がこれからの人生を共にしたいと思う運命の人を見つけて、もう懲り懲りなんて言っていた結婚を再び決意したことは、もうおめでたく嬉しくほっとするばかり。

実際、20代から30代の結婚ブームが終わって10年くらいが過ぎると、親しい友人たちから「Ako、実は…」と打ち明けられ、「えっー!?」と目を丸くして驚くことが重なりました。
それはなぜか赤ワインを二人で飲んでいる時が多く、驚いた拍子で私が手にしていたグラスは大きく揺れて、思わずワインがこぼれそうになります。
咄嗟に持ち直すのでこぼれることはありませんが、私の中には、白いテーブルクロスに濃い赤の液体がこぼれて広がり、取り返しがつかない光景が浮かび上がるのです。
 

マダム・アコのパリジェンヌ通信”パリジェンヌたちからの学び、心弾むもの”

 
日本では、フランスは「恋愛の国」と言う印象を持つ人が多いようです。
そしてそこに、「恋愛に自由奔放な国、恋愛がどんどんできる人々」というイメージが付き纏っているとしたら、私はそれは断然違うと反論します。
私の知る限り日本人もフランス人も、誰かが誰かを「恋する気持ち」、誰かが誰かを「愛する深さや長さ」に違いは全然ありません。
ただ恋愛に対して自分が素直であるかどうか、に、違いがあると感じます。
 

マダム・アコのパリジェンヌ通信”パリジェンヌたちからの学び、心弾むもの”



マダム・アコのパリジェンヌ通信”パリジェンヌたちからの学び、心弾むもの”

 
友人のパリジェンヌたちは「こんな状態になってしまっては、もう一緒には過ごせない」と、お別れを決めました。
長く一緒にいた、一度は深く愛した人とさよならをする辛さは日本人もフランス人も関係なく、胸が張り裂けるようで苦しく、それは人間として同じです。
恋愛に対して素直に、相手に対して素直に、自分に対して素直に、決断した彼女たちの、青ざめた肌に、痛みを伴って流れる血のような涙をすくって、痩せてしまった肩を、どうしようもなくぎゅっと抱きしめるしか私にはありません。
けれど「こんなに美しくて、クレバーで、繊細で優しい貴方には、もっとぴったりな人がいるわ」と、心から出る言葉を投げかけると、それを否定しないのがパリジェンヌたちのいいところ。
それを自ら認められると言うことは、前に進めるということなのですから!
 



 
そして「ほら、言った通り!」。いくつかの季節をやり過ごし、今では私の周りは新しいカップル誕生ブームです。
泣いた烏がもう笑った、と言うには、少し長すぎる期間がかかっていますが、穏やかな真の笑顔、弾けるような馬鹿笑いがまた宿って、ますますチャーミングな彼女たち。
心の傷は完全に癒えるものではないけれど、恋愛の傷と言うのは、男にも女にもこれほど滲み出るかっこよさはないくらいの渋い勲章。
しかもなんだか若返っていて。
羨ましいくらいではないですか。
 

マダム・アコのパリジェンヌ通信”パリジェンヌたちからの学び、心弾むもの”

 
自分に素直な彼女たちは、40代を過ぎても70代を過ぎても、80代になっても「こんな歳だから」なんて思いません。
好きになる、と言う気持ちは心弾むもの。
一人でいるのも好きだけれど、噂のレストランのディナーも、秋の週末の田舎の散歩も、愛する人との方が断然楽しい。
人生、恋愛ほど心に近く、自分に嘘のつけないものはない、と、私は彼女たちから学びます。
 

自分流×帝京大学



Posted by Ako

東京生まれ。1996年よりパリ在住。セツモードセミナー在学中にフリーライターとして活動を始める。パリ左岸に住みアートシーン、ライフスタイルなど、生のフランスを取材執筆。光のオブジェ作家、ダンスパフォーマーとしても日々活動。