PANORAMA STORIES

マダム・アコのパリジェンヌ通信”パリの歩道で迷う楽しみ” Posted on 2023/06/10 Ako アーティスト/フリージャーナリスト パリ

 
「パリの顔」と言えば、“エッフェル塔”。
では「パリの表情」と言えば?
それは、“通り”にありそうです。
パリのみならず、各国の街の通り=道の姿は、人々がそこでどのように生きているのかを映し出しています。
長い歴史を持つパリの道々は、その表情に今まで生きてきた年月の重なりが刻まれていて、覗き込め覗き込むほどあれこれ秘密が隠されているよう。
この街をよくご存知の方であれば、パリの地図を心の中で開くだけで、パリの静々とした通り、カフェのテラスに人が溢れる騒がしい通り、雨に濡れた石畳の道、パン屋さんのウィンドーに様々なパンと重なって映る道などが、その喧騒や匂いと共に脳裏に浮かんできませんか。
 

マダム・アコのパリジェンヌ通信”パリの歩道で迷う楽しみ”



 
パリのどの道を歩くのが一番楽しいですか?と問われれば、決まった道を一直線にではなく、迷い込んで道と出会う、ことをお勧めしたい。
突然開けた光景に、どきっとすることほど素敵なパリ散策はありません。
特にサンジェルマンデプレやカルチェラタン、マレなど、中心部は少しばかり賑やかで観光地的でも、そこからほんの少し細い道へと踏み込むと、人間味あるパリの飾らぬ表情がたくさんあります。
 

マダム・アコのパリジェンヌ通信”パリの歩道で迷う楽しみ”

地球カレッジ



 
そして誰がなんと言ってもやっぱりセーヌ河岸散策。
左岸、右岸、東側、右側、それぞれに違った表情があって、どんな季節も気持ちがいい。
どこかでお茶をしたり、川に足を投げ出すように岸に座り込んで休憩をしたりしながら、パリのセーヌ河岸散歩道は端から端まで案外歩けてしまいます。
日本からの観光客をここで見かけたことがありませんが、デパートでのショッピングや噂のルーフトップでのお茶より、セーヌ河岸を歩く方がパリの素敵をじーんと感じられると思うのは私だけかしら。
パリ在住の方は灯台下暗し、日常に紛れてこのセーヌ河岸の魅力を忘れがち。
ピクニックにもよし、人が多くないときは自転車をこぐのもよし、パリが再発見できる素敵な時間になりますよ。
実はセーヌ河岸にはパリジェンヌたちとっておきの、知る人ぞ知るカフェやレストラン、本屋さんも多くて。例えば、シテ島の先端の、パリの真ん中とは思えない穏やかな時間が流れるドーフィン広場を囲む小粋ないくつもののレストラン。
自転車を止めてペリエをアペリティフにランチを楽しむ若いパリジェンヌたち。
夏の夜には、広場で子供を遊ばせながら、ディナーに舌鼓をうつママンパリジェンヌたち。
 

マダム・アコのパリジェンヌ通信”パリの歩道で迷う楽しみ”



 
サンルイ島前の右岸には、珈琲のスペシャリストであるブラジル人が開いたという珈琲専門店。
頑固にエスプレッソオンリーが主流なパリのカフェですが、ここではアイス珈琲だって、豆乳カフェだって、日本の珈琲だって(ある日、日本のフィルター珈琲をお勧めされたのです)愉しめます。
そのお隣には、主人が美味しいと思った手作りのナチュラルワインのみを扱うワイン屋さん。
またパリに関する書籍、写真集、絵画集等々を集めた「パリの歩道」と言う名の小さなパリ専門本屋さんもあります。
「お客さんは観光客が多いでしょう?」と女主人に問うと「そんなことないわ。お隣のパリジャン、パリジェンヌから、ちょっと遠いタイやブラジルやアメリカ…、世界中のパリ好きがやってくるの」。
 

マダム・アコのパリジェンヌ通信”パリの歩道で迷う楽しみ”



 
 もうひとつ、とっておきの道があります。
なんでもないパリの住宅街の一角ですが、子供の声が聞こえるレンガ造りの幼稚園があって、小粋なプチホテルが何件かあって、町の人々に愛されるイタリア料理屋さんとクレープ屋さんがある。
200メートルもないそのアヴェニューの両側には、背の高いプラタナスの木々があり、四季を鮮やかに映し出します。
鳥も巣をつくりに来るのです。
なんでもないパリの日常の幸せを教えてくれる、静かな通りです。
特別なようですが、どこもが住宅地であるパリには至る所ところにこのような通りがあるのですよ。
ぜひ迷い込んでみてください。
 

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Posted by Ako

東京生まれ。1996年よりパリ在住。セツモードセミナー在学中にフリーライターとして活動を始める。パリ左岸に住みアートシーン、ライフスタイルなど、生のフランスを取材執筆。光のオブジェ作家、ダンスパフォーマーとしても日々活動。