PANORAMA STORIES

マダム・アコのパリジェンヌ通信”ピクニック、夏の始まり” Posted on 2023/07/13 Ako アーティスト/フリージャーナリスト パリ

 
パリはすっかり夏真っ盛りです。
熱々の太陽が燦々と、プラタナスの木々や、石畳や、カフェのテラスや、アパルトマンのバルコニーや、パリジェンヌのワンピースなどに照りつけていますが、なんだか爽やかな感じがする、パリの夏。
 



 
ジリジリと暑いのではありますが、湿気がないので日陰に入れば心地よく、夏の間はテラスやバルコニーをダイニングや書斎にするパリジェンヌたちもたくさんです。
そして週末のパリの公園や森や川辺は、 ピクニックにやってくる沢山の人でお祭りのよう。
クーラーボックスには冷えたロゼワイン、バスケットに入れたバゲットとハム、チーズは、その場で即席サンドイッチに。
ポテトチップもピクニックに必須です。
こちらではジャガイモで作られたポテトチップは、野菜として栄養ある一品とされているのですから。
(そんなわけで、子供の遠足にもサンドイッチ、飲み物、果物と共に、小さな袋のポテトチップを持参するよう指示があるのです)。
食後にはポットに淹れて持って来た熱い珈琲。
どんなに暑くても、食後はきりりと一杯のホット珈琲、が、パリジャンたちの好み。
パリ式ピクニックは荷物が多いのですが、お喋りに花咲くランチにはじまり、珈琲を飲んだはずなのにリュックを枕にお昼寝したり、元気派は芝生の平らな場所を探してバトミントンやフリスビーをしたり、と夏の昼下がりをたっぷり満喫します。
 

マダム・アコのパリジェンヌ通信”ピクニック、夏の始まり”

地球カレッジ



 
湿気が少ないおかげで暑くても、汗が滝のように流れることはなく、実は蚊があまりいないのも利点。
とはいえ日本の皆さん、そんなパリの夏をあまり恨まやしがらないで。
日本のあの湿気こそ、日本女性の肌をしっとりとさせ、シワを作らないとパリジェンヌたちは羨ましそうにしているのですから。
 

マダム・アコのパリジェンヌ通信”ピクニック、夏の始まり”

 
爽やかな感じがするもうひとつの理由は、パリの人々が大移動して、田舎や外国へバカンスに出かけているから。
道には車の数もまばら。公害もぐっと減るのです。
パン屋さんや八百屋さん、ワイン屋さん、靴修理屋さん、本屋さん、劇場もバカンスで閉まり、いつもよりずっと町が静かです。
 フランス人の主食であるバゲットを売るパン屋さんは、パン屋さん同士で連帯していて「我が店は*月*日から*月*日までお休みですが、*通りのパン屋さんは*日までやっています。*通りのパン屋さん*日から始まります」と張り紙がされます。
パリに残ったパリジェンヌたちはパンを求めていつもと違う道を歩きます。
 



マダム・アコのパリジェンヌ通信”ピクニック、夏の始まり”

 
また石造りのアパルトマンの室内は、暑さが遮断され、ほとんどの家に冷房はありませんが、どうにかしのげるもの。
我が家の暑がりの男性陣は、扇風機をぐるぐる回して、上半身裸でおやすみなさい、という夜もありますが。
上階住まいで寝室が他のアパルトマンに面していないのを良いことに、私は窓を開け放して眠るのも好き。
目を瞑ると、部屋の前のプラタナスの葉が風に揺らされている音が、まるで森にいるよう。
なぜ人間はこんな心地よい季節に外で眠ることを放棄しているのだろう、と思うくらいです。
いいえ、まさに今、たくさんのバカンスに発ったパリのたくさんの人々が、自然の中でキャンプをしたりして、自然と一体になっているのでしょう。
 



マダム・アコのパリジェンヌ通信”ピクニック、夏の始まり”

 
すでに旅に出ている人たちから、ポストカードが届き始めています。
フランスではバカンス先から親しい友人やファミリーにポストカードを送る習慣があります。
「こんな素敵な所に来ているの!」と伝えると同時に、旅先で元気なことを知らせ、そして何と言っても「遠く離れてもあなたのことを忘れていないの。再会を楽しみにしている!」というメッセージが、そこには一番込められているのです。
田舎のセカンドハウスに腰を落ち着けている人々からは、ゆったりのんきな姿がビデオ電話に映ります。
もうそれが、彼らの主たる人生であるかのように。
私もあともう一仕事終えれば、遠い国の見知らぬ海辺へ出発です。
皆さんもどうぞ良い夏を!
 

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Posted by Ako

東京生まれ。1996年よりパリ在住。セツモードセミナー在学中にフリーライターとして活動を始める。パリ左岸に住みアートシーン、ライフスタイルなど、生のフランスを取材執筆。光のオブジェ作家、ダンスパフォーマーとしても日々活動。