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q.b.レシピのないレシピ帳~クリスマスのお菓子モスタッチョーリ~ Posted on 2024/12/19 八重樫 圭輔 シェフ イタリア・イスキア

q.b.レシピのないレシピ帳~クリスマスのお菓子モスタッチョーリ~

 
捲るページの無くなったカレンダーを眺めながら、今年の出来事をぼんやりと回想するこの頃。家族全員がケガもなくささやかに暮らせたことに感謝しつつ、それにしても1年が過ぎ去るのはこうも早いものかと不思議な気持ちになります。年始に立てた目標は(毎年のことながら)ほぼ達成できませんでしたが、常に気にはかけていたので向上心があってよろしい、ということにしています。何かと気忙しいこの時期、今更慌てて何かしようとしても空回りしてしまうことが多いので無理はせず。
 

q.b.レシピのないレシピ帳~クリスマスのお菓子モスタッチョーリ~

 
イタリアの本格的なクリスマスシーズンは12月8日の“無原罪のお宿りの日”から1月6日の“公現祭”まで約一か月の長丁場です。期間中は普段の仕事に加え、特別な料理やお菓子を大量に作る機会が多いので、街中に流れる軽快なクリスマスソングとは裏腹に心はちょっぴりマイナーコード。とは言っても毎回ポジティブに切り替えて、何とか楽しく焼いたりこねたり刻んだり揚げたりしています。古臭いかもしれないけれど、愛情を込めて作らなければ美味しくできませんからね。僕は結構そういうのを信じています。
 



q.b.レシピのないレシピ帳~クリスマスのお菓子モスタッチョーリ~

 
そんな中、何か皆さんにもご紹介できるクリスマス料理はないかと考えているのですが、これがなかなか難しいのです。日本でも材料が調達できて尚且つ日本人の口に合いそうで調理や説明が複雑ではないもの、、、、そこで思いついたのが今回のモスタッチョーリでした。材料の一部に日本で調達できるか不安なものがあったのですが、リサーチの結果何とかなるでしょうということで決断しました。モスタッチョーリというのは主にクリスマスシーズンに作られるお菓子で、南イタリアの多くの州で作られています。その中でも名高いのがここカンパーニア州(ナポリ)のものです。
 

q.b.レシピのないレシピ帳~クリスマスのお菓子モスタッチョーリ~

 
ヨーロッパのクリスマス菓子といえば香辛料がきいていて、ドライフルーツやナッツが入っていて比較的ずっしりしたものが多いというイメージがあるかもしれません。このモスタッチョーリにも香辛料はたっぷり入っているのですが、くせは少なくチョコレートもかかっているので食べやすくなっています。最近ではふわふわのパネットーネやパンドーロが日本でも人気があると聞きました。どちらもイタリアを代表するクリスマスのお菓子ですが、次に来るのはきっとこのモスタッチョーリ!!、、、かもしれませんよ。みなさんも時代を先取りして作ってみてはいかかでしょう。ではレシピをどうぞ。
 



q.b.レシピのないレシピ帳~クリスマスのお菓子モスタッチョーリ~

 
               モスタッチョーリ
材料(20~25個分)
〇薄力粉 250g 〇アーモンドプードル 75g 〇グラニュー糖 120g
〇無糖カカオパウダー 20g 〇水 50g 〇オレンジ汁 40g 
〇オレンジの皮 2分の1個分 〇はちみつ 10g 〇塩 一つまみ 
〇製菓用アンモニアパウダー(後述)2g 〇ピースト(後述)2g 
ビターチョコレート(カカオマス50%以上のもの。今回は70%のを使用)200~250g
※製菓用アンモニアパウダーはこちらではメジャーな膨張剤のひとつです。日本でも手に入るようですが、見つからない場合はベーキングパウダーで代用してください。ただし焼き上がりには微妙な差があるかもしれません。
※ピーストとはカンパーニア州で使われる粉末のスパイスミックスで、クリスマスのお菓子作りには欠かせません。シナモンをメインに、ナツメグ、コリアンダー、アニス、クローブが配合されており、胡椒が入っているものもあります。
日本ではシナモンを1g、オールスパイス(シナモン、クローブ、ナツメグ、胡椒の風味がある)を1gずつ混ぜれば近い風味になるのではと思います。

作り方
①薄力粉、カカオパウダー、アンモニアパウダー、スパイスミックスをボールの中で一緒にふるいにかけます。
②アーモンドプードル、砂糖、塩を加えてよく混ぜたらオレンジの皮、オレンジ汁、水、はちみつを入れて混ぜます。
③全体がまとまってきたら作業台の上で均一になるまでよくこねます。初めはパサパサしていますが次第にまとまってつややかになります。ラップで包んで1時間ほど涼しい所で寝かせます。※ベーキングパウダーを使用の場合は30分位にした方が良いかもしれません
 

q.b.レシピのないレシピ帳~クリスマスのお菓子モスタッチョーリ~



 
④軽く打ち粉をし、綿棒で8mm~1cm位の厚さに伸ばします。ひし形にくり抜いていきます。本来は一辺が8cmかそれ以上とかなり大きいのですが、お好みで小さくしてもよいです。今回は5cmです。型がない場合は伸ばした生地を帯状に分け、ひし形に切っていきましょう。余った生地は再びまとめて伸ばし、最後まで使い切ります。
⑤170度のオーブンで15分ほど焼きます。周りは固く中はしっとりとした感じです。
(焼いた後、アプリコットジャムに少量の水と砂糖を混ぜて煮詰めたものを上に塗ることもできますが、この工程は省いてもよいです)
冷めたら湯煎で溶かしたチョコレートにさっとくぐらせていきます。ボールのふちにトントンと打ち付けて表面が滑らかになったらケーキクーラーあるいはオーブンシートに並べます。ホワイトチョコなどでデコレーションすれば豪華になります。数時間おいてチョコレートが固まったら出来上がりです。容器に入れて10日くらいは保存できるので食後ののコーヒーのお供に。
 

q.b.レシピのないレシピ帳~クリスマスのお菓子モスタッチョーリ~

q.b.レシピのないレシピ帳~クリスマスのお菓子モスタッチョーリ~



q.b.レシピのないレシピ帳~クリスマスのお菓子モスタッチョーリ~

 
クリスマスにこだわらずともこの冬、余裕のある時に挑戦してみてはいかがでしょうか。スパイシーな香りと共にナポリの喧騒が聞こえてくるはずです。それではまた次回、普段着の食卓でお会いしましょう!
 

q.b.レシピのないレシピ帳~クリスマスのお菓子モスタッチョーリ~

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Posted by 八重樫 圭輔

八重樫 圭輔

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Keisuke Yaegashi
シェフ。函館市生まれ。大学在学中に料理人になることを決め、2000年に渡伊。現在は家族とともにイスキア島に在住。