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ロックダウンが大好き Posted on 2020/04/18 Summer Shimizu 現代美術家、写真家 ニュージーランド・オークランド

「ロックダウンが大好き」という日記を見せてもらった。私の息子ではなく、友達の息子が学校の宿題で書いたものだ。

このご時世、もし大人が同じことを言えば、「医療関係者は不眠不休で働いているのに」と眉間にシワを寄せるだろう。でも子供は驚くほど正直だ。
 

ロックダウンが大好き

普段は忙しいパパとママがロックダウンのおかげで家にいる。家で弟と遊ぶことは楽しいし、温かいランチを食べられることが、ロックダウン大好き男子に変身させているようだ。彼は自主的に家にある段ボールや食品パッケージを使ってどんどん工作を作り上げている。ママは横から口出しすることなく、工作作業テリトリーだけを決めてあとは自由に作らせている。私とテレビ電話で話した時、部屋に溢れかえるほどの作品を息を継く暇もなく紹介してくれた。

「どうして卵の入れ物?」とロックダウン大好き男子に聞くと、
「恐竜に住む家を作ってあげたかったんだ。ちょうど卵のトレーがあったから、ほら、森みたいでしょう?」と誇らしげに見せてくれた。
「本当だね、緑色と形が森っぽい!」

私には彼がロックダウン前より、今の方が楽しく過ごしているように感じられてならない。
 

ロックダウンが大好き




他にも「ロックダウンストレスはゼロ!」というママ友がいる。二人の娘さんと一緒に毎日キッチンに立つことが楽しいようだ。子供がテレビやゲームをしている時間を自分時間にあて、見たいドラマを楽しんでいる模様。彼女の「何も特別なことはしない」子育てを近くで見ていつも感じる。彼女の娘たちはまるで、スクスク上を見て育つ健康的なアスパラだ。

ロックダウンのおかげで色んな無料配信が始まっている。先日、ニュージーランドロイヤルバレエ団も過去のショーをネット配信した。アスパラ姫様たちは家でドレスアップして、まるで家族で劇場へ行ったかのように観賞。楽しんでいる写真が送られてきた。でもやっぱり長女のアスパラ姫は、「お友達に会えなくて寂しい」とポロリ。だったらお手紙を書こう! と手紙を書き、近所に住むお友達の郵便受けに入れて楽しんでいる。
 

ロックダウンが大好き

ロックダウン生活を楽しく過ごしているママ友もいれば、「24時間喋るオウムが接着剤で両肩に止まっている」というママ友もいる。慣れない在宅勤務に子供の通信教育。自分時間の確保が難しい環境なだけに、長期間に及ぶロックダウンの精神的ストレスは計り知れない。
「オウム肩に考えさせられるんだ。何が違うんだろう?」
「なんだろうね。特に頑張らなければストレスの要素もできないし、頑張りすぎないことがいいのかなぁ?」と、アスパラママはいつも通りさらっと教えてくれた。
「今日校長先生からメールが来たよ。”ストレスを抱えている親から何かを教えられる事で、それがまた子供にもストレスになる。今大切なのは子ども時間を共有すること。” なるほどと思ったよ。」
「確かに親と子供はシンクロするね。アスパラママすごい!」
「私はただのグータラ母さんなだけよ。(笑)」

ママはママで、ママは学校の先生じゃない。自然なことだが、自分を責めて我慢しているママが多いのかもしれない。ニュージーランドのナイジェル・ラッタ(※注1)心理学者が言っていた。”子供がゲームを長時間遊びたかったら遊ばせれば良い。勉強したがらないのなら、無理にさせなくても良い。昼まで起きてこなくても心配することはない。ロックダウン中で一番大切なのは落ち着いた家庭環境を作り、それぞれの家族にあった過ごし方をすること。” ロックダウン大好き男子ママも、アスパラママも無意識のうちにリラックスしているのだろう。そうだ、自分に厳しくしなくてもいい。
 

ロックダウンが大好き

私はと言うと、とあるソフトウェアをマスターしようと意気込んでいる。過去に何度か独学を試みたが毎回挫折してきた。努力が足りないのであろう。今ここでもう一度リベンジの時がきた。動画を見ながら奮闘するが、分からなすぎてすぐに嫌になる。ひねくれてソファーで昼寝することも多々だ。これが実に贅沢な時間。ナイジェル・ラッタも自分に優しく、と言ってくれたしね。

数日前からこの国の空気感が変わった。もうすでに、次のギアが入ることを感じているのかもしれない。「新しい日常生活」が始まった時のために、今このロックダウン生活を前向きに過ごすもよし、準備期間に当てるには絶好のチャンスだ。もうすぐ、「よ〜い、どん!」が来る。
 
 
※注1:Nigel Latta (ナイジェル・ラッタ)
1967年ニュージーランド生まれ。女王エリザベス2世創設のニュージーランド・メリット叙勲受章者。臨床心理学者、作家。オタゴ大学人文学部哲学、同大学動物学部、オークランド大学人文学部心理人間学卒。「しつけの勘違い:子供がイライラする前に」など著書多数。2011年カンタベリー地震後、子供の地震トラウマに社会貢献する。2020年4月「ロックダウン生活、子供との過ごし方」をテーマにアーデン首相とFacebookビデオ対談。子育てに悩む親を中心に強い支持を受ける。
 



Posted by Summer Shimizu

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Summer Shimizu
現代美術家、写真家。オーストラリアだと思い込んだ学校が合格後にニュージーランドだと判明。そのまま1997年ニュージーランド移住。英語試験IELTSに4回失敗。5回目で大学入学を掴み取る。2003年Massey大学情報サイエンス学部コンピューターサイエンス&情報システム学科をダブル専攻卒業。ITサポートとして大学やアパレル会社アイスブレーカー本社で世界支社を支える。退職し写真学校で写真基礎を学ぶ。国最高峰のアートスクールに2016年入学、オークランド大学芸術学士号卒業。2019年同大学院芸術修士号をFirst Classで卒業。広告写真撮影のアシスタント業をしながら現代美術家として個展やグループ展を開催。現代彫刻、異文化交流や社会性、帰属意識を概念とした作品が多い。