PANORAMA STORIES

ドイツ人の本音「Nase voll!(もう、うんざり!)」 Posted on 2021/03/26 マイヤー 智栄 会社員 ドイツ・マインツ

ドイツ語の表現にNase voll というのがあります。
Naseは鼻、vollはいっぱいという意味なので、直訳すると「鼻がいっぱい」??となるのですが、「もううんざり」という意味で使われる慣用表現です。
そしてまさにこれが今ドイツで暮らす誰もが感じている気持ちでしょう。

前回「終わりの見えない、ドイツのロックダウン下での生活」というタイトルで記事を書きましたが、あれから約3か月が経とうとしている今になってもこれからどうなるのか、全く先は見えません。
ロックダウンは延長に延長を重ね、今週火曜日3/22に行われたメルケル首相と各州の首相との会議で4/18までのロックダウン延長が発表されました。

12月に一段と厳しいロックダウンに入ってから順調に感染者数は減っていたのですが、2月あたりからでしょうか、下げ止まりの日が続いていると思ったら、あっという間に激増しドイツは今コロナの第3波の真っただ中にいます。
感染力、致死力共に強いと言われているイギリス由来の変異種の感染者数が増えているようで、政府も対策に苦慮しているのが伝わってきます。

地球カレッジ



今年で政界を引退することを発表しているメルケル首相の求心力が低下していて、彼女が率いる政党、キリスト教民主同盟(CDU)の人気がないことも右往左往している対策の一因ではないかと思います。
現在のドイツの政権はキリスト教民主同盟(CDU)、姉妹政党キリスト教社会同盟(CSU)、社会民主党(SPD)の連立政権なのですが、CDUの最近の人気のなさには目を見張るものがあります。

今月、私が住むラインラント=プファルツ州とバーデン・ビュルテンブルク州で州議会選挙があったのですが、どちらの州でもCDUは前回よりも大きく議席を減らし惨敗といってもよい結果でした。
今年9月には総選挙が行われますが、最近のCDUの人気のなさをみると、きっと苦戦することになるでしょう。
メルケル首相の後継として党首となったラシェット氏は残念ながら人気がありません。。

追い打ちをかけるように、3月に入ってから医療用マスクの公共調達に絡む汚職疑惑でCDUとCSUの議員が辞職しています。
コロナ禍で国民が苦しんでいる中、何十万ユーロもの現金を受領していたとのこと。このニュースが出た時にはすでに期日前投票を済ませていた人が多かったため、もしもう少し早くこのニュースが明らかになっていたら選挙結果はCDUにとってさらにひどいものだっただろうとも言われています。



メルケル首相も迷走気味で、22日の会議の後突然イースター中の4/1木曜日と4/3土曜日を臨時の休日とする、との発表がありました。
この発表にドイツ国内は大混乱。学校はイースター休暇中なのでよいとしても、企業での取り扱いはどうなるのか? と大きな議論が巻き起こっていたところ、翌日になって突如、追加休日の導入を撤回すると発表されました。

「すべての責任は私にあります」と即座に謝罪したメルケル首相ですが、これだけ大きな混乱を引き起こしておいて謝罪すればすむのか、といった意見も多くみられ、メルケル人気はさらに低下している模様です。

ドイツ人の本音「Nase voll!(もう、うんざり!)」

16年という長期にわたり政権を維持してきたメルケル首相の苦労は測りしれないものがあると思うのですが、国内政治にはあまり目を向けてこなかったという声もよく聞きます。
事実、メルケル氏が首相になってからというものドイツ国内の貧富の差はかなり拡大しており、子供の貧困もよく問題になっています。
先進国のドイツで起こっている現実とは信じられないのですが、ドイツ国内では7人に1人の子供が貧困に苦しんでいるのだそうです。
今年メルケル首相が引退した後、ドイツはどうなっていくのでしょう。少しでもドイツに暮らす人、特に子供に優しい社会になりますように、と願わずにはいられません。

ロックダウンが続いても季節は移り替わります。
家の中にちょっとだけ春がやって来ました!

ドイツ人の本音「Nase voll!(もう、うんざり!)」

自分流×帝京大学



Posted by マイヤー 智栄

マイヤー 智栄

▷記事一覧

東京都出身。2010年よりドイツ、マインツ在住。
ドイツ人の夫と息子、2匹の猫との5人暮らし。