THE INTERVIEWS

祝 DEEP FOREST30周年!おめでとう、エリック!! Posted on 2024/02/17 辻 仁成 作家 パリ

活動30周年を記念するアルバム『BURNING』をひっさげてこれから世界ツアーを開始しようとするフランス・エレクトロ界のレジェンド、そればかりか、アメリカではグラミー賞を受賞した世界的アーティスト、DEEP FORESTのリーダーことエリック・ムーケ氏にインタビューを試みた。彼の音楽の本質をひもとく、迫真のザ・インタビュー、ご堪能ください。

祝 DEEP FOREST30周年!おめでとう、エリック!!

 まずは、Deep forestが30周年ということで、アルバム発売、おめでとうございます。この30年間を振り返りつつ、今回の最新アルバム『BURNING』に行きついた、アーティストとしての精神的な軌跡を教えてください。このアルバムにこめられた意味、願い、コンセプトなど、聞かせてもらえますか?

エリック・ムーケ(以下、敬称略) 30年前にディープ・フォレスト最初のアルバムがリリースされて、それから今まで、世界中のミュージシャンと仕事をする機会を得ました。さまざまな文化や音楽スタイルを探求する機会を得たのです。これらの音楽体験に共通するのは、常にエスニックな色彩とエレクトロニック・サウンドの繊細な融合だった。90年代から2000年代初頭にかけて、世界はよりグローバル化し、交流し合い、地球の美しさに対する関心を高めていた。しかし近年、世界はますます暴力的になり、環境は危機に瀕するという、ほとんど逆の傾向が見られます。僕たちアーティストは、人々に希望を与え、この世界をより良い場所にするために、今まで以上の努力をする必要があります。

祝 DEEP FOREST30周年!おめでとう、エリック!!

<『BURNING』DEEP FOREST>>



 新作の『BURNING』はファンの期待を裏切らない現時点での素晴らしい出来栄えでありながら、30年前から今日まで続くディープフォレストの音楽的ルーツをちゃんと踏襲しているように思います。その中でも、ここは苦心をした、今までと違う試みなど、制作過程で今までにない面白味、楽しい試みがあったなら、教えてください。

エリック 今回のアルバムでは、今のエレクトロ・シーンを盛り上げている若い世代と一緒に仕事をしたかったんです。実際、多くの若いアーティストがディープ・フォレストに影響を受けたと言ってくれれるのだけど、それは彼らの親が僕の音楽を聴いていたから。ディープ・フォレストのアルバムは子守唄だったんです。だから僕は彼らを “僕の子供たち“と呼んでいるのだけど……スタジオで彼らと時間を共有し、彼らが僕の音楽をどのように受け止めてきたかを知ることができたのは、僕にとって素晴らしい経験でした。

祝 DEEP FOREST30周年!おめでとう、エリック!!



 ぼくは、個人的に「プレイヤー」という曲が気に入りました。この曲は、他の曲とは違うカラーがあるように感じられます。歌というかボイスも男性ですし、全曲の中でも非常に力強い、何か祈祷のようなメロディとリズムを感じます。この曲の誕生秘話や制作過程の話について、とくに、お聞かせください。

エリック この曲はほとんど一回でできたと言っても過言ではないのです。友人のサミファティが、自分で録音して聞かせてくれた歌声に魅了されて、即興で演奏してみたら、次の瞬間にはこの曲ができあがっていたのです。

 少し前のことになりますが、昨年、5月、本当に友人として、ぼくのオランピア劇場でのライブに出演をしてくださり、ありがとうございました。あれはぼくにとっても音楽ファンの皆様にとっても一生忘れられない出来事になりました。その時、あなたは何を思いましたか?

エリック パリの伝説的なステージであなたと一緒に演奏できたことはとても感動的だった。あの日、一瞬一瞬をじっくり味わおうとしていたんです。もちろん、演奏したのは1曲だけだったから、曲が終わってすぐにバックステージに戻らなければならなかったのはちょっと寂しかった。もっと何時間も一緒に演奏したかったよ!!! とにかく、招待してくれてありがとう!

祝 DEEP FOREST30周年!おめでとう、エリック!!

 ぼくはあなたが暮らすドルドーニュのベルべスに行き、あなたのスタジオで一緒にレコーディングセッションをしましたね。その時、あなたが愛するベルべス村と人々をご紹介いただきました。静謐で、美しい村と優しい住人たちのことが忘れられません。ベルべスがこの最新アルバムに与えた影響があれば、また、ベルべスの魅力、そこにい続ける理由、について思うことがあれば、お聞かせください。

エリック 僕は、僕が住んでいる村、そして、地域が本当に好きです。平和な場所。自然がそのまま残っていて美しいし、思った時に孤立して、自分が人生ですることの意味を考えることができるのですから。創造するには格別の場所だと思います。そこに、本物のフランスがあるのです。

 あなたのシンセというか、奏でる音は、多くのミュージシャンに影響を与えました。しかし、あなたは、どこから、何から、どのように影響を受けて、常に進化を試みているのでしょうか? もしかすると、進化を求めていないのであれば、それはなぜでしょう? あなたの音楽には一貫したサウンドがあると思います。あなたの創作のヒントを、教えてください。

エリック 僕の音楽には2つあります。1つは、メロディーを探求するために多くの空間と自由を与えてくれる調和言語を生み出したこと。これはラヴェルやドビュッシーといった僕が敬愛するフランスの作曲家から直接インスピレーションを受けているんです。彼らからの遺産だと思っています。もう一つは、前衛的なサウンドリサーチ。僕はそのために、常に今あるテクノロジーの最先端にいます。これがディープ・フォレストの2つの柱なのです。



 最後になりますが、30周年の記念アルバム『BURNING』をひっさげて、これから世界ツアーを計画されているということで、その最初が日本と訊きました。日本のファンの皆さんに、メッセージを、そして、日本公演へのご自身の思いを語ってください。

エリック 4月8日と9日、この2日間、東京で演奏できることが嬉しくて仕方ないです。東京は僕が大好きな街だし、あなたの国はフランス人にとってとても魅力的な国です。今回の日本への旅は、一分一秒、寸暇を惜しんで楽しむつもりです。

 わが友、エリック、今日はありがとう。また、パリか、ドルドーニュで会いましょうね。成功を祈ってやみません。

エリック ありがとう、TSUJI! また、近いうちに会いましょう。


+++++++++++++++++++++++
DEEP FOREST – BURNING TOUR 2024 -30th Anniversary
4/8(Mon)1st Stage 17:30スタート / 2nd Stage 20:30スタート
4/9(Tue)1st Stage 17:30スタート / 2nd Stage 20:30スタート

自分流×帝京大学



posted by 辻 仁成