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ザ・インタビュー大阿闍梨 塩沼亮潤「宗教とはなんぞや」 Posted on 2020/11/01 辻 仁成 作家 パリ

風邪をひこうが、頭が痛かろうが、春から秋にかけての4ヶ月間、険しい山中を1日48km往復する「千日回峰行」。
9年の年月をかけて千日間歩き続ける、なんともすさまじい荒行だが、これを万行されたのが大阿闍梨 塩沼亮潤さん。
しかも、千日修行の後、食物、水を一切口にせず、横にならず、眠らず9日間、堂にこもって真言を唱え続ける「四無行」まで達成している。

ご縁があって知り合いになり、ぼくが主催する「地球カレッジ」の第一回講師をやっていただくことになった。
その打ち合わせで、昨日、都内ホテルの喫茶部で向き合った。その僅か一時間の間も、ぼくらは「生きること」「人間とは何か」についてとりとめもない問答を繰り広げることになる。
そのやり取りはとっても充実しており、話し合った後、心がすっと軽くなった。
主に「地球カレッジ」での中身について話し合ったのだけど、「人生大相談」と題して、生きにくいこの世界でたくましく生きていくための心構えや面倒の避け方、なによりも「ままならないこの世界」でどうやって心の拠り所を探していくのか、そういう議題で進めていこうということになった。
ぼくはらずっと笑っていたので、11月14日の第1回地球カレッジも笑いのたえない豊かな講義になると思う。
今日はそんな講義の軽い前哨戦です。大阿闍梨 塩沼亮潤さんと行った軽いやりとりを読んで頂きたい。

ザ・インタビュー、大阿闍梨 塩沼亮潤が語る「宗教」とはなんぞや!

ザ・インタビュー大阿闍梨 塩沼亮潤「宗教とはなんぞや」



 塩沼さんは仏典や理屈よりも先に、自然とか、生きる身の丈の中で修行をされた方だと思っていますが、塩沼さんにとっての「宗教」というのは何なのですか?

塩沼 そうですね。今、ふと頭に浮かんでくるお話を二、三させて下さい。まず、宗教というのは神や仏を解き明かすものだと思うのです。それは、やはり開祖というものがいて、その人が宇宙や天地と繋がって、言葉をアートで包むということ、それが仏典だと思うのです。だけど、残念ながら開祖って人間なので必ず死んでしまいます。例えば、作曲家が死んでしまって楽曲が生まれないのと同じで、もう残った人はその曲を聴くしかないんですよね。新しいアルバムはもう出てこない。なので、私は宗教というのは、「ファンクラブ」だと思っていますね。

 あはは(笑)。それはわかりやすい! なるほど、その解釈は初めて聞いたかもしれない。

塩沼 私、海外でこんなこと言ったらボコボコにされるかもしれないですけど(笑)。

 宗教はファンクラブ!

塩沼 うちの宗教が一番、うちのアーティストが一番、その考え方のせいで分断が起きている気がするんですよね。

 なるほどね。

塩沼 私は、だから、世界のどの宗教も素晴らしい教えだと思っています。仏教にご縁があったのでお釈迦さんもすごく心からリスペクトしていますが、人生の終盤は「釈迦を超えるぞ!」くらいの気持ちでおります。そういう遊び心がないと、なんか、自分が向上心を持って突っ走れない気がするんですよね。うちの先生がこう言ったから僕こうします、という人生じゃ、すごく束縛されるようで、なんか、つまんないですよね。自由がなくて。だから、私は「宗教」というのは好きではない。もちろん、否定はしないです。世界のどの宗教にも興味はありますし、教えというのは素晴らしいと思いますけど、一番大切なのは「信仰心」だと思いますね。

ザ・インタビュー大阿闍梨 塩沼亮潤「宗教とはなんぞや」

 では、「信仰」とは何なのですか?

塩沼 信仰って、心の中で手を合わせて、悪いことをしないとか、その中で本質的な部分を高めていくことじゃないかなって思います。信仰はお金じゃないし、形じゃない。心でするものかな。

 それは、祈りということですかね。

塩沼 はい、ずばり、宗教で一番大切なものは「信心」であり、信心で一番大切なものは「愛」と「祈り」だと思います。だから、もう、宗教の壁はそろそろ無くしていいんじゃないかなと思っています。

 ほう。僕は宗教にとても興味があるのですが、この歳まで一度も、宗教に属した事がない。宗教を持っていませんという事なんです。だけど、自分はずっと祈ることを続けてきて、何に向かって祈っているかさえもわからないのだけど、苦しい時や良い事があった時、必ず祈ってる。感謝するというか。宗教というのは、僕には何なのかわからなかった。ただ、天と呼んでいいのか、形はわからないけど、人間や生命を作った、何か尊い存在があるのかな、とうすうす思って生きてきたのです。それにいつも自分はどこからか見られているという気持ちを持って生きてきました。それは謙虚でしょうかね? 今、塩沼さんからそのお話を聞いて、ふと腑に落ちたというか、そんな気持ちです。

塩沼 私も全く一緒です。

ザ・インタビュー大阿闍梨 塩沼亮潤「宗教とはなんぞや」

 僕は塩沼さんの本を読んで、この行間から滲み出る修行の厳しさや凄さの合間に、なぜか、謙虚な余裕を感じたんですね。それがすごいなと思いました。それは何なんだろう、それが祈りや信仰なのかな、と思いました。

塩沼 自分で修行を経験してみて、修行自体はそんな大した事ないなと思っています。大学生が大学に行くようなもので、人生って一体何なんだろう、どうやったら世界の人々がみんな仲良く暮らせるだろうということにずっと興味があったので、興味があるから知りたくて、研究したんですよね。その研究の期間が千日修行だったかなと思います。

 ところで、塩沼さんはニューヨークによく行かれるようですが、何をしに行かれるのですか?

塩沼 ニューヨークには昔からずっと興味がありまして、ブルーノートが大好きなんですね。写真を見るだけで涙が出てくるような、何なんだろうっていう感覚をずっと持っていたんです。私は修行をしていたので人と話すのも苦手だったし、本を書くこともできないし、だけど、38歳くらいの時から、講演しなさい、本を書きなさい、テレビに出なさいって次から次へと依頼が来るようになって、ひどい時はひと月に全国で6、7件講演がありまして、年間2冊の本を書いて、そんなことをしていたら血尿血便が出るようになって…。

ザ・インタビュー大阿闍梨 塩沼亮潤「宗教とはなんぞや」

 それは千日回峰行より大変だったってことですか?

塩沼 もう、千日回峰行は幼稚園みたいなものですね。ものすごく苦しくて。すごく緊張する人間だったので、自分の素を表現できなくて、どうやったら自分の素を表現できるのかと思っていたら、いい意味で慣れてきた。それで、49歳の時に5、6台のテレビに囲まれても全然緊張しない自分がいた時に、これじゃまずいと思ったんです。ストレスがなくなったらまずいと思って、英語も喋れない、人脈もないのに、ニューヨーク行きの切符を買って当てもなく飛んで行きました。それから、通い始めて3年になりますが、やっと向こうでイベントなんかもできるくらいまでの人脈やコミュニティに入る事ができてきました。人種の坩堝(るつぼ)の中で、自分が山の中で(修行中)ちょっと気づいたこととかが、どういう風に伝えていくかな、という勉強をこれから20年間はしようと思っています。

 それはニューヨークだけに対してですか?

塩沼 いや、世界に、です。

 是非、パリにも来て下さい。僕は38歳の時に1年間ニューヨークで暮らしたんですけど、その時、ニューヨークからサンフランシスコまでアムトラックという鉄道に乗って横断した事があって。アメリカを知るといういい経験をしました。アメリカを知ってみたい、ニューヨークを知ってみたい、世界を知ってみたいという願望があったので、暮らしてみました。でも僕がアメリカで経験したことは悲しい事が多くて、結局自分が選んだのはフランス・パリだったわけです。海外で暮らし始めて日本がよく見えるようになりましてね、僕自身は還暦になって日本に対する想いも強くなっているわけです。塩沼さんがどういう人生をおくられてきたかは知りませんけれど、ニューヨークで獲得された何かというのは、たぶん僕が異国で感じているものに近いのかもしれませんね。外で暮らすっていうのはまた大変な事で、修行の連続みたいなものですね。でも、ブルーノートが好きって、ジャズが好きだったんですか?

塩沼 いや、実は正直な話、他のお坊さんに聞かれると怒られるかも知れないのですが、自分がどういう表現をしたらいいのか、というのはお坊さんの講演を見たり聞いたりしても感じるものがなかったんで、僕にとってはいろんなアーティストさんが教科書だったんです。

 仙台のお寺でもコンサートなどされているようですね。

塩沼 アーティストの方が、「御堂貸して下さい」と言うことがたまにありまして。ぜひ辻さんをお待ちしています。実現したら嬉しいです。

 今はおいくつですか? もう修行は考えていない?

塩沼 52歳です。もう、修行はないですね。いつまでも修行してると逆に、いつまで経っても悟らないのかと言われていまします(笑)。今も厳しい修行はたくさん待っていますけれど。

 「現実」という修行ですね。興味深いお話をありがとうございました。11月14日の第一回地球カレッジ、どうぞよろしくお願いします。楽しみにしております。
塩沼 はい、ありがとうございました。本当に楽しみにしています。有意義な90分を過ごしたいです。

塩沼亮潤 x 辻仁成 「生きること、人生大相談」2020.11/14 (Sat) 20:00〜

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*定員になり次第、締め切らせていただきます。

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ザ・インタビュー大阿闍梨 塩沼亮潤「宗教とはなんぞや」



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posted by 辻 仁成