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ザ・インタビュー「31字に込められたホストたちのコロナ対策」 Posted on 2020/07/18 辻 仁成 作家 パリ

ここのとろころ多出していたのが「夜の街」で「ホストクラブ」で感染拡大みたいな記事で、ホストクラブがそんなに問題になっているのだ、と思って、当事者たちの声はどうなのだろうと探してみるのだけど、滅多にホストたちサイドからの反論というか主張がない。片方だけしか報じないのはどうなのかな、と思っていたら、昔、一度会ったことのある歌舞伎町のホストクラブの経営者がいたことを思い出し、電話番号とかラインとか知らなかったのだけど人伝てに調べて、1万キロも離れているのだけど、インタビューをすることが出来ました。すると、メディアが報じていた内容と若干違う新たな一面を見ることも出来ました。歌舞伎町のホストたちの声。

ザ・インタビュー「31字に込められたホストたちのコロナ対策」

ザ・インタビュー「31字に込められたホストたちのコロナ対策」



 今回は本当に急な形で、しかも、ラインでのインタビューに応じてくれてありがとう。いきなり本題ですけど、夜の街という言葉が日本のニュースで連日とりあげられていて、いろいろと記事を読んだのだけど、本当のところはどうなのだろう、と思ってね。手塚さんは新宿・歌舞伎町でホストクラブを経営されていますが、何軒くらい経営されているの? 

手塚 マキ(以下、敬称略「手塚」) そうですね。今、歌舞伎町にホストクラブは6軒あります。水商売歴がかなり長くなってきました。

 ホスト歴は何年ですか?

手塚 ホスト歴は24年ですね。店を構えてからは17年、周りにあまり先輩がいなくなってきました。店も2、3番目に古いので。

 ぼくを含め、多くの方々は、ホストクラブの仕事、業界のことなどあまり知らないわけで、ぼくも行ったことがありませんし、ところが、今回のこの件があって、一方的に叩かれているというか、感染源みたいな言われ方をして、それに対して、なぜか、ホスト側からの意見ってあまり出ていなくて、探したのだけど、ほぼ見当たらず…。これは公平性からみても、もう一方の当事者側の意見を聞くべきだろう、と思って、ふと思いついて、ライン電話でのインタビューになったのです。忙しいのにありがとう。さて、ぶっちゃけ、この状況をどう思っているのか、訴えたいことなど、まずは率直にご意見を頂きたい。

手塚 まず、叩かれている事に対しては、もともと慣れてますね。最初の頃って水商売自体が国が率先する融資の枠からも外されていたんです。性風俗は今でも除外されています。でも、そういう排除は今に始まったことではなくて。普段から「ホストだから」という色眼鏡で見られるという事には慣れていますよね。だから、我々の業界に限らず、コロナ禍に起きている事というのは普段の社会の問題が顕在化してるだけのことだと思っています。急に僕たちばかり責められているという風には思っていません。業界の人間たちもそれに対してものすごくナイーブになっているわけではなく、結構、逞しく生きてますね、みんな。

 その、精神面ではそうかもしれないけど、具体的に新宿の夜の街からこう感染者が増えているという事に対してはどう思っているの?

手塚 それは本当に真摯に受け止めています。5月末に東京都が6月1日から自粛解除に向けてステップ1、2、3というのを発表したんですね。ステップによって自粛解除をしていくというものなのですが、そのステップ1、2、3にホストクラブが入ってなかったんですよ。だから、いつから営業再開できるという目処が立てられなくて、それで、6月1日からどこのホストクラブもキャバクラも営業再開しました。中には5月も営業している店があって、キャバ嬢とホストに感染者が出ていたようなんですけど、休業要請の状況で感染者が出てもどこの店で働いているかや、濃厚接触者も答えてくれなかったらしいんです。でも、保健所や行政からすると、営業する、しないの強制力はもともとないので、感染経路を追えないことが一番の問題でもありました。それで、僕のところに新宿区長から電話があって、そういう現状があることを説明され、区長曰く、「自分はホストとか、ホストクラブのことがよくわからないから、一度相談させて欲しい」と言われて、6月2日に区長に会いに行ってきました。

 え? いきなり新宿区長から電話がかかってきて、教えてほしい、と言われたわけですね。そのことははじめて知った。どこにも記事になってないですね。

手塚 ええ。区長はそこで、「我々は新宿区民の健康を第一に考えている、取り締まることが我々の役目ではないし、補償のない中で、やめろとも言えない。ただ、感染拡大、2次感染を封じ込めていくことがとても大切だ」とおっしゃられて、さらに「都知事やマスコミが『夜の街、夜の街』と連呼するけれども、我々は決して敵ではないので一緒に現実的な落とし所を模索しましょう」とも言われました。ただ、僕としてはそれを業界内に伝えたところでその時は都知事の発言が続いていたので、みんな行政というものは一括りに自分たちを除外する人間だと思って信じてはくれないだろうな、と思ったのです。ならば、「それを直接区長自身の言葉でホストなどの事業者たちに言っていただけませんか」と頼みました。「僕が区役所にできるだけ多くの関係者、実力者を連れていけるよう努力するので、区長が今話してくれたことを直接彼らにぶつけて話してください」とお願いして、それを区長が受け入れてくれたので、翌日の6月3日と4日の夕方に時間を空けてもらって、事業者を20人ずつくらい連れて行きました。

 手塚さん、それ、初めて知りました。なんか、日本のメディアが伝えている記事だけを斜め読みしていると、ホストの連中が何もしないで、ただただ客と大騒ぎして感染を拡大させて、対策もとってない、みたいにしか、読めない。話しをきちんと聞こうとして連絡をする区長もまっとうだけど、手塚さん、それにこたえて二日間で40人ものホストやキャバクラの関係者を区役所に連れていく、当たり前のことなんだろうけど、実際に人々に説明し説得して、区長に会いに行こうよ、というのは労力のいる行動です。

手塚 で、そこで、僕らは、それぞれこの間、ずっと疑問に思っていたこととか、都知事に対する愚痴なんかをぶつけたんですけど、それに対して区長も保健所の人もしっかり丁寧に対応してくれて、協力して一緒にやっていきましょう、という事になったんです。

 保健所の方もいたんですね

手塚 はい。その話し合いの結果、一人でも陽性者が出たら、保健所に連絡をして、集団検査を受けるという流れが整いました。区長を信頼したので、その後、率先して集団検査をやることになります。そうしたら、意外に陽性者がたくさん出て、数字が増えていったんですね。

 なるほど。新宿区とホストの人たちが手を組んで、そこまで言われるなら一生懸命PCR検査をやって対処していく…、フランスなどがロックダウン中にやってきたのと同じ方法、その時点で取り組まれていたということか…。ということは、歌舞伎町のホスト業界は、PCR検査を積極的にやる、やっているところを掘り下げてるから陽性者がたくさん出ているという状況が出来たわけですね。

手塚 そうですね。やり方は真っ当な方法だと思うんです。でも、だから、6月の初旬は他の地域では減っているのに、なぜか新宿区だけが増えていくという状況になってしまったわけです。これだけ出るならやっぱり問題あるよねって僕たちも思ったんですけど、理由はわからなくて。区長と話し合いも、もっと続けたいということになり、1時間でも、30分でもいいから、時間を見つけて話し合いを継続していこうということになりました。感染症というのは一人ひとりの意識の問題だから、一人でも多くの人の感染症への意識を上げていくことが大事なわけで。その流れがあって、ホストクラブだけでなく、他のキャバクラや飲食店とかも含めて、6月18日に「新宿区繁華街新型コロナ対策連絡会」というのを立ち上げました。その後も小さな勉強会のようなものを続けていて、感染者が減らない状況がなぜか、について皆で考えました。クラスターを出した店のオーナーだとか、厚労省の人が来たり、感染症研究所の人が来て、状況を説明してなぜクラスターが起こったのかというのを検証するために店を見学したりもして、原因究明をしていったわけですね。だから、新しい感染者が出ている事に対して当事者たちもびびってるし、どうにかして出さないように、と気をつけようと勉強していたわけです。ところがです。ただ、そうやって行政に協力していくことが風潮としては裏目に出ることになっていきます。ぼくらが積極的に検査を受け、その発表にも協力するから、夜の街ばかりが浮き彫りになってしまったのです。当然、歌舞伎町の関係者たちの中では「誠意をもって、こうやって協力したことがマイナスになった」という空気が生まれることになるわけです。



 知らなかった。でも、それは残念な流れだね。手塚さん、板挟みになりませんでしたか? しかし、あなたたちが積極的にPCR検査をやり、勉強会を開き、業界内で、感染をふやさないよう努力していなければ、逆を言えば、今どころの騒ぎではなかったかもしれない、もっともっと恐ろしいことが起きていたかもしれないのに…。

手塚 行政やメディアに対しても、僕たちの業界は誰一人、自分たちは悪くないとは一言も言っていないし、感染者が出てしまった以上、その状況をどうやって防いでいくのか、どうやって感染拡大させないのか、予防していくのかということを、真剣に考えていくしかないとみんな思っています。ただ、出てしまった事に対しても反省点もあるわけで、良いとか悪いとかだけじゃなくて、この社会全体を考えて、今後感染を拡大させないためには、メディアが「陽性者を叩く」ということをしてしまったら、ますます検査もできないし、名乗り出られない風潮になっていくと思うんですよね。現実問題として、経済的な理由で会社を止めることの出来ない中小企業もあるだろうし、もし陽性者が出ても取引先に伝えられない会社だって出てきてしまうのではないかと。今のホストクラブのように言われたら困っちゃうし・・・なんていうのは、どの業界でも思うと思います。ウイルスが別に職種を選ぶわけでも、時間帯を選ぶわけでも、ましてや地域を選ぶわけでもないじゃないですか。そもそも感染症って人と人との接触、主に飛沫で感染するわけで、そこをみんなが気をつけるという問題なのに、都知事やメディアの人たちが地域や職種を名指しすることはますますみんなの知識を遠ざけてしまうのではないかと思うんですよ。それをメディアの人には伝えているつもりなんですけど、インタビュー受けた記事のタイトルが「差別しないで」みたいな言い方にされていて、がっかりしました。そんなこと決して言ってないし、自分たちがやってきたことを棚に上げるつもりもないし、事実を受け止めて、それからどうやっていくか真摯にやっていくしかないと思っているのが現状なのに。

 今日はじめて、手塚さんとはこうやって深く話しをさせてもらっているけれど、あなたたちがそんなに努力して、問題を解決しようとしてきたこと、誰も知らないんじゃないのかな。「差別しないで」なんて一切言ってないのに、そう書かれちゃったんですね? 

手塚 大雑把に対立させるような言い方をするタイトルですよね。そういうマスコミの分断させるような仕掛けってバズるじゃないですか、そういう報道の仕方が、逆に、感染症の防止を遠ざけている、とぼくは思いました。

 たしかに。メディアの飛びつき方が裏目に出て、誰もが「感染しているのはまずい」という構図が生まれるという事だよね。自分たちの業界はつぶされないように、黙っていた方が無難だな、と思うところがたくさん出てしまった可能性もある。メディアの飛びつき方のせいで、そのほか大勢の問題箇所を裏に隠してしまったもしれない、ということだね。言いたくても、手を上げられない風潮ができてしまった。

手塚 そうなっちゃうんじゃないかって思います。ホストクラブで働いている人たちも、これだけ言われるとホストクラブ内では気を付けるように当然なりますよね。マスクもちゃんとしてるし、かなり早い段階からホストクラブもキャバクラも危ないってことを自覚してるんで、行政が出しているガイドラインなんかより全然レベルの高い予防対策をしています。

 予防対策、それをちょっと教えてもらえますか?

手塚 例えば、最初の頃ってガイドラインが出た時に、自分たちの店がやってる予防対策の方が全然レベルが高くて行政や保健所が驚くくらいだったんです。例えばうちは、入り口で足の裏を消毒させて、換気、検温、物理的にできることは全部やってると思いますね。

 僕が読んだ記事ではシャンパンコールとか、回し飲みとか、体に触れ合うとか、キスとか、その辺はどうなんですか?

手塚 シャンパンコールというのは祭ばやしみたいなものなので、みんなが騒ぐので飛沫は飛ぶので感染の確率は高いと思うんです。だから、もう早い段階からほとんどのクラブがやってないと思います。回し飲みもとっくにやってないですね。触ったりキスをしたりは普段からお店の中でそんなにないです。手を握ったりとかは今の時点でどれくらいあるかはわからないですが、消毒とかは徹底してますので。それに、ホストクラブってもともと50坪くらいのところにホスト20人が平均なんです。お客さんが10人入ると、だいたい2対1くらいになるのでそれがちょうどいいくらいなんですね。考えると、50坪で30人って全然蜜じゃないんです。飲食店に比べると全然蜜じゃないです。しかも、その10人のお客様とは連絡先を交換するので感染経路は絶対辿ることができるんですよね。だから、もし、感染が出たとしても追うことができる。集団PCR検査にも応じるし、

 そうか、お客さんたちはほぼ常連だし、ホストさんたちが連絡先を交換しているし、追跡が出来るんだ。50坪って、教室二つとか三つくらい、あるわけで、うちの子の学校は一クラス40人で、よっぽど密ですね…。で、今現在は陽性者の数は減ったんですか?

手塚 今は東京全体ですごく増えてるので、新宿区も増えてると思いますね。歌舞伎町も増えてるかもしれないですね。

 僕なんかは歳が歳だし、しかも、超神経質なので、バーに行くことさえも怖いと思うタイプなんですけど、皆さんはどんな意識なんでしょう。

手塚 おそらく、辻さんのように警戒心の高い人、経済至上主義でコロナなんてただの風邪だと言っている人たち、どれくらい予防すれば大丈夫なのかなと悩んでいる人たち、大きく分けると3種類がいると思うんです。夜の街で働いている人たちの中でもその比率は変わらないと思います。繁華街の魅力って刹那的な一瞬の酩酊だとか、社会で理性的に生きている時間から逸脱した場所である価値だと思うんです。

 非日常のね。

手塚 なので、繁華街にやって来て、人は、明日のことを考えて酒を呑まない。昨日のことも明日のことも忘れて、自分が何者かなんて衣を脱いで、ある意味裸になってただの一人の自分でいられる場所だからみんな行くんだと思うんです。だからそもそも、繁華街に集まる人たちというのは、苦しい日々を忘れたくて、明日のことを考えない人が多いとは思います。

 ホストクラブに来る人っていうのはキャバクラで働いている人が多いって聞いたことがあるんですけど?

手塚 うーん、そうじゃなくなってたんです。キャバクラはホストクラブと営業時間が同じなのでなかなか来にくいですよね。ただ、比率は昔に比べると一般化して、水商売、風俗以外のお客さんも増えたと思います。やはりこの状況では全然来なくなってると思いますけど。

 一般の方は来てる?

手塚 はい。だけど、その一般の方が来る比率の多い店は経営が苦しいですね。うちもその比率が多い方なので結構くらってる方だと思います。

 経営のこと聞くのは失礼かもしれませんが、今経営状況っていうのはコロナ禍の前と比べてどのくらいですか?

手塚 半分くらいじゃないですかね。6月が半分弱くらい。

 もちろん、補償や応援もないわけですよね。

手塚 ただ、銀行融資が下りるようになったので、それは僕らにとっては大きいかなと。経営的に難しいのは僕らの業界に限ってるわけではないので、あまりそこはしょうがないかなと。

 融資ってでも返さなきゃいけないよね。借りるけれども利子が安くなるだけで、返さないといけないのは大変じゃない?

手塚 もともと借り入れができない業種だったので、僕的には助かっています。

 今後、コロナが続くとしたら、感染者が増えている現状も含め、どういうビジョンでやっていこうと思っていますか?予防対策についても聞きたいです。

手塚 予防は行政が出している情報を聞いて、感染リスクの高くない人と人との接触方法がある程度浸透してくると思うんです。

 ホストクラブ内での工夫とかあるのかな。接客の方法を変えるとか、ほら、手塚さんは歌舞伎町で句会など開催しているし…。

手塚 それはないです。

 ないか。それはお客さん求めてないか。

手塚 ホストクラブとか水商売って、もともと社会に足りない要素を補うっていう場所だと思うんです。日常が息苦しいから逸脱したい。働いている側からすると、ちゃんとした家庭環境で育たなかった人たち行き場のない人も受け入れる職場なんですよ。社会のちょっと外にありながら、社会の足りない要素を補完する場所だと思ってください。自分たちが新しく作り出してイノベーションしていくぞっていう想いっていうのは基本的にないですね。これからどういう風に社会が変わっていくのか、人と人との繋がりがよくなって、温もりがあったり、昔の町屋みたいな感じに社会がなっていけばホストクラブやキャバクラの必要はなくなるかもしれないし。不倫や浮気が堂々とできるようになれば秘匿性が担保されやすい夜の商売はいらなくなるかもしれないし。僕たちが新しいことをイノベーションしているのではなく、現代における日本だと人と人との、肩書きをなくした繋がりとかが希薄になってるからホストクラブなんかが重宝されているし、女性と男性の男女格差があって、女性の虐げられている現実があるから息抜きのためにホストクラブが流行るとか、社会がどう変化するかによって僕たちも変化していくしかないかなと思ってます。

 なるほど、よくわかります。では、角度を変えて聞くけど、手塚マキという人間がホストとしてやっていることの夢というか、ホストの誇りを持っていることとかそういうのはありますか。

手塚 難しいですね。ずっとホストやってきてるんで、でも、やはり繁華街にはいい奴が多いです。そいつらと一緒に生きていきたいと思っています。最初からどうせホストだからという見られ方をするので、色眼鏡には慣れているんで、そんなに着飾らないですね。生き方とか発言に対して、自分を大きく見せる必要がないんですよね。ある意味、人を見る時に職業や年齢で人を見ないし、人を判断しない。とにかく、今、一緒にいて楽しい時間を過ごすという事にみんなたけてるんですよ。だから、なんて言うんでしょうね、みんな、めちゃくちゃ気のいいやつらなんです。そういう人間が増えること、そうやって生きることは閉塞的な現代社会にとっても大事なことだとは思っています。

 なるほど。ぼくはあなたたちの話しを聞いて、こうやって書くことしかできないけど、手塚さんたちが歌舞伎町の中で行動をしていたことはよくわかりました。ホストクラブの経営者として、若いホストたちに思うことは?

手塚 僕はずっとホストの教育というものに力を入れてきたので、10代後半の子とかも雇っていたし、その子たちの人生の責任を感じて、ちゃんと教育をしなきゃいけないというのが僕の20代後半のときの水商売で生きていこうと思ったきっかけでもあったんです。その時に、座学で何かをするというよりも、彼らは気のいい奴らなので、そこを伸ばすべきだと思って、お客さんが泣いてる時に一緒に泣けて、嬉しい時には一緒に喜べる、感情の幅を広げる事、彼らはそこの部分がすごく長けているのでそこを伸ばして欲しい。それを伸ばすにはやはり本を読んで映画を見る事だと思ったので、他人に対して想像力を働かせられる事というのが大事で、小説や映画でいろんな人の人生にシンクロしていくというのが良い事だと言ってきました。だけど、現実、やっぱり彼らそんな本は読まないですよね。そこで、ぼくは歌舞伎町に本屋を出したことがあって。

 知ってる。歌舞伎町のど真ん中に文学を売る店が出来たって、誰かに聞いたことがある。あれ、手塚さんだったのか。

手塚 ええ。で、本屋があれば、みんな本に関心持ってくれるかな、と思って。ホストたちに本を読ませる方法を考えたんですよね。詩集とか短歌とか短いものなら読むんじゃないか、と。その辺を重点的において、ホストって、会話を構築していくことをしないんですよね。飲み屋って瞬発的な会話を繰り返すだけじゃないですか。細切れでどんどん話を進めるので、飲み屋で「つまり」なんて接続詞を聞くことなんてないんですよ。意外に短歌って向いてるのかなと思ったんです。

 面白いね、そうか、「つまり」って、理屈が次に続かないと使うことのない言葉だけものね。気づかなかった。そういう観点で「つまり」について論じられたのははじめてだよ。あ、昔そういう映画を見たことを思い出しました。ニューヨークの郊外の暴力事件が頻発する不良のたまり場みたいな学校で、教師たちが赴任したがらない、そういう舞台に1人の情熱ある教師がやってきてね、あまりに子供たちが本を読まないから、わざとポルノを読ませるんです。すると子供たちは興奮して全員が読書の中に没頭する。その中の一人が、ある一節で感動をして、「この文章、綺麗だ」と呟く場面があって、その人間の本質をついた映画のことを思い出した。

手塚 それは面白いですね。彼らは自信がないんですよ。例えば、夜の業界の人が今回のコロナ問題でなぜ発信しないかというと、その言葉自体を持ち合わせていないんですよ。ホストたちだって、俺たちは頑張ってる、一生懸命予防対やってると訴えたい。でも、言葉が足りない。学がない。だからメディアに書かれたい放題になり、言で勝てないから、黙ってしまう。そうすると、世の中は全部、ホストクラブのせいにする。スケープゴートです。

 そして君たちは自分たちの非も最初からオープンに認めて、協力してきた。でも、その取り組みは誰もみてくれない、そういうことですね?

手塚 はい。今は流れが良くないですね。ちょっと開き直りではないけど、感染を防ごうと一生懸命にやっていた最初の頃の気力が、次第に、メディアの取り上げられ方のせいで、ホストたちの本来のイージーな部分が出てしまって、なら、しょうがないな、どうせ俺らにはなんもできない、みたいな空気感に、これはよくないです。あんなに頑張っていたのに、メディアがどう取り上げるかというのは重要だと思います。

 いくら手塚くんが一人頑張っても全員の意思を束ねることは難しいですからね。でも、何かがぼくには伝わりました。インタビューの前にネットで調べていたら、短歌集を出されたんですね。※「ホスト万葉集」

手塚 ウイルスは人を選びませんから、そこを賛否両論させているのはメディアだと思うので。ホスト万葉集がいいタイミングで出たのは、ホストというイメージがあるんだけど、コレラやペストが流行った時だって、不道徳な人間がかかる病気だと言われて、全く同じことが今起きてると思うんですよ。

 なるほど、不道徳な奴らだから、あいつら叩け、ということなんだね。

手塚 ホスト=不道徳、不道徳だから感染するというような流れにメディアがしているというのは寂しいですね。ホストって、歌舞伎町だけで7000人くらいいるみたいなんですけど、7000人が同じわけないじゃないですか。7000人に1時間ずつインタビューしても大したこと言えないと思うんですけど、しかし、なぜか短歌で、31字で言ってごらんとやらせてみると、いいこと言ったりするんです。若い子たち、短歌を通して、今、歌舞伎町で人間を学んでいるんですよ。流れ流れてこの歌舞伎町に辿り着いた子たち、彼らは歌会で素晴らしい歌を作っています。ぼくらの声にも、耳を傾けてもらいたいです。 

ザ・インタビュー「31字に込められたホストたちのコロナ対策」

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posted by 辻 仁成