ノルマンディ、ツジ村便り

辻村相談窓口、「限界」 Posted on 2026/07/19 辻 仁成 作家 パリ

おつかれさまです。
さーて、さっそくですが、辻村相談窓口、開店させます。
じゃらーん。

匿名希望Kさん
「辻さん、私は年齢的な問題もあり、いろいろな限界を感じる年頃なんです。辻さんに訊きたいのは、辻さんは限界を感じることがありますか? それはなんですか? その限界を突破できると思いますか、という質問です。よろしくお願いいたします」



おこたえしまーす。

「いきまり、来ましたね。限界はあるとは思いますが、モノにもよると思います。子供のころ、算数の時代にすでに数に関しては限界を感じて生きていました。算数が終わり数学になると、もはや、全くダメで、限界というよりも極限でした。今現在は、数学的な世界を視界から完全に削除して生きております。ま、ともあれ、ぼくにとって「限界」を感じるもの、いや、「限界」表すものは「肉体」のような気がします。限界は肉体の中にあるのは事実ですね。肉体は限りあるもので、せいぜい100年しか持ちませんから、これは「限界」と呼んでいいと思います。その限界を引き延ばすために、いろいろと運動をしたり、栄養をとったり、やっています。脳も肉体なので、思考も脳の劣化とともに限界を迎えるような気がしますが、魂だけは、限界がないかな、と思って、ま、精進しておる次第です。

ただ、限界に関しては、こう捉えることが出来るのじゃないでしょうか?
「限界とは超えるためにあるもの」
人間が限界だと思うことは、不可能というものが見えた時に、出てくる言葉ではありますが、同時に、限界への挑戦というものが、そこには必ず付いて来るようにも思うのです。
ぼくは、そもそも「無理」という発想が好きで、そういうもので拒否られると、燃えるタイプでした。ぼくはご存じのようにいろいろなことに挑戦をしてきましたが、しくじればしくじるほど、その山を上り切ってみせたいと思う意地の強い人間で、でも、同時にそれだけたくさんの挫折も味わっています。というか、ほぼ全部に挫折は付き添っていますが、「ああ、もう限界だ」と言葉にしながらも、どこかで、いつか必ず再挑戦してみせる、とは、思っています。ええと、数学以外ですけれど・・・。

やはり、人間には、得意不得意というのはあります。不得意はそもそも最初から眼中には置きません。人生は短いので、最初からできそうにないものには、よっぽどの好奇心がない限り手を出さない主義なんです。でも、得意なものであれば、限界は越えられる可能性がある、と思って生きています。それでも突破出来ないものがありまして、「挫折」を何度も経験してきました。成功したら自慢しますが、挫折に関しては皆さんには言いません。この年齢でも、しょっちゅう落選しています。落選の知らせしか、最近は来ません。落選があるということは「応募」をしているということです。応募は挑戦です。意志があるから、応募をします。でも、結果は、残酷で、やめとけばいいのに、と思われるかもしれませんから、周囲には言いません。息子にも、スタッフさんにも言わない挑戦を各方面でやっています。昨日も、とあるジャンルの最高峰から落選通知が来ましたが、これも、実は二度目の落選、です。でも、チャレンジできるのだから、まだ、限界ではない、と思っています。いい年齢ですが、大家になるより、新人でいたいんです。自分の領域を広げることが、魂の鍛錬になると思ってやっています。楽しんで、限界突破を夢見ているわけです。楽しいですよ。落選にはすっかり慣れてきました。先日も居酒屋で隣になった日本人に、「辻さんってちゃらいイメージですよね」と言われたんです。53歳くらいの人でしたが、ぼくは笑いました。反論はしませんでしたよ。いつか、見てろよ、です。でも、自分は挑戦を続けているので、悔しくはなかったです。そのうち、この努力が必ず限界を突破する日が来るのを、知っているからです。限界とはそういうものです。諦めた日が「限界」の最終地点になります。えいえいおー」



父ちゃんの独り言、&、近況のようなもの。
そうですね、今度の個展も、限界への挑戦の第一幕のようなものです。ちゃらいイメージのぼくとはかけ離れた努力家のぼくが、織りなす世界です。見ればわかります。ものすごく自信がありますよ。その53歳の銀行員さんにも、見に来い、見てからもう一度意見を聞かせてみろ、と言っときました。ラインを交換したので、攻め続けます。笑。柔らかい表面のぼくとは別の内部のマグマの部分をぜひ、みなさん、見に来てください。チャラい、と言われ、笑いながら、世の中はいまだ呑気だな、と思ったものでした。結論は三越日本橋本店、6階、特選画廊で、8月5日から11日に、正体が判明する仕組みとなっております。渾身の力というものを見せつけてやりましょう。
あはは。

辻村相談窓口、「限界」

辻仁成 Art Gallery

辻村相談窓口、「限界」

※ かなりちゃらい父ちゃん、そうとうにちゃらい三四郎・・・。



自分流×帝京大学