ノルマンディ、ツジ村便り

辻村相談窓口、「家族」 Posted on 2026/04/26 辻 仁成 作家 パリ

おつかれさまです。
相談窓口を開店させて頂きます。
ええと、その前に質問の送り先なんですが、どこへ送ればいいのか、と言われました、笑、ですよね。各方面から、届いておりますが、これから、統一したいと思っています。毎月、デザインストーリーズのインスタのストーリーズで月に一度か二度、質問を募集することになりましたので、そこからよろしくお願いします。どうやら、そこだと質問者の素性が一般にはわからない、ようでして、・・・こっそりと投稿できますね。
ということでさっそくまいりましょう。今日のご相談です。

匿名希望Hさん
「あの、人間が嫌いなんです。幼い頃にちょっと親とうまくいかなくて、虐待というほどじゃないんですが、いろいろとあって、人間不信といいますか、心を閉ざしてしまったので、それ以降、人間とはうまがあいません。コミュ症の傾向もあります。今は、犬と暮らしていて、それがきっかけで、辻さんの本を読んで、ここに辿り着きました。愛犬と生きる、でしたか、あれです。犬は裏切らないので、ただ、その子も、もう9歳でして、いつかいなくなるかもしれない、と思うと、なんか不安でしょうがないのです。人間を好きになる方法じゃなくていいんですが、私はどうしたら、人間とやり直せるようになるのか、一緒に考えて貰えるとありがたいのです」

辻村相談窓口、「家族」

おこたえしまーす。

「犬はたしかに裏切らないですし、犬から学ぶこともたくさんありましたし、今現在もぼくは三四郎に助けられている、と思うんですが、こういうぼくでも、自分がいっぱいいっぱいになると、思わず三四郎にあたってしまっています。暴力をふるうことはもちろんないですが、ちょっとした意地悪をしたりして、そういう自分に、衝撃を受けたりしています。なので、犬と暮らすだけじゃだめだな、と思うようになっています。あなたの場合、過去のトラウマもありそうですから、何とアドバイスをしていいかわかりませんが、人とのつながりはそれでも大事ですよ。孤独を愛するぼくですが、だれか寄り添ってくれる人間が一人くらいはいたほうがいいんじゃないか、と思っています。べたべたする友だちはいりませんが、世界に一人か、二人、寄り添える人がいたらいいですよ。孤独は大事、でも、孤独過ぎるのはよくない、ということです。

実は、昨日ね、息子にラインしたんですよ。ふと、思い付いて。『いつもありがとう。ガールフレンドさんと楽しく過ごしなさいね』って。なんでもない一行ラインだったんですが、今朝、息子から、『あ、ありがとう』ってかえってきました。息子はね、彼も大変な人生を生きています。もう成人しているので、自分でいろいろ判断をしないとならないけれど、ま、はたから見ていても、健気に、一生懸命生きているんですよ。ぼくにとっては、大事な家族なのだから、思い出した時に、そういうことをちゃんと言葉で伝えなきゃって、気が付いてですね。昨日、慌ててラインをしたんです。この『あ、』というのが大事でしてね、ありがとう、だけだとそっけない。でも、『あ、』、あ点、のあとに、ありがとう。って・・・、よくないですか? ぼくは思うんですけれど、息子はぼくのことをどこまで愛してくれているか、わかりません。もしかするとどこかでアレルギーがあるかもしれない。うるさいですからね、笑。いつも、そこは不安です。離婚のあと、何度も大喧嘩をしました。でも、家族だから、この子のためには無条件でやらなきゃって、いつも思って生きているんですよ。多分、彼も親に対してはトラウマがあると思いますよ。でも、彼は今、ガールフレンド君と幸せになることをずっと望んで、一生懸命、がんばっています。二人はもう3年くらい付き合っているんですが、お互いを大事にしあっています。ぼくに出来ることは何か、考えました。だから、ラインを送ったんです。これだけ、孤独を推奨してきたぼくですが、どこかに、自分が心を届けたい人間がいるって、素晴らしいことじゃないでしょうか。あなたの場合、親がダメなら、友だちでもいい、兄弟でもいいじゃないですか。パートナーを探すことも可能ですよ。完全に世界をシャットアウトしちゃいけません。たぶん、まだぼくよりは若いだろうから、ここからです。誰かを探してみてください。パートナーとか見つけて、愚痴を言い合ってください。ぼくも人間は面倒だと思って生きてきました。でもね、人間は好きなんです。孤独は好きですけれど、それはきっと、裏切られたくないと思うからでしょうね。無償の愛というものがあります。何も求めず、ひたすら、好きでいればいい関係でいいんじゃないですか?『あ、ありがとう』と言い合える人が、どこか、遠くでもいいので、いなきゃダメですよ。愛犬も大事だけれど、あなたに必要なのは、人間への愛だと思います。世界って、こんなひどい世界で、悪口ばかりで、どうしようもない人間が多いですが、それらは一部です。いい人はもっといます。そういう人を探して、心を委ねてみて。絶対に、一人や二人、あなたの味方はいます。そういう人を大事にすることで、孤独はもっと豊かになりますからね。負けないで、応援しています。えいえいおー」

辻村相談窓口、「家族」

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