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ぼくは再び学生たちと向かい合うことになりました。 Posted on 2020/04/07 辻 仁成 作家 パリ

ご報告があります。こんな大変な時代ですけど、4月1日付けで、帝京大学・冲永総合研究所の特任教授に就任することになりました。読者の皆さんはすでにお気付きでしょうが、去年から、帝京大がこのウェブサイトマガジン、Design Storiesの運営をサポートしてくれています。そのご縁から発展し、ぼくは5年ぶりに、再び教壇に立つことになったのです。新世代賞の創設や運営を通して若い世代と関わってきました。また京都造形芸術大学では10年間クリエイティブ・ライティングの教授をやらせていただきました。当サイトでもずっと「子供たちが日本の財産だ」と言い続けてきました。なので、大学という現場に戻れることはぼくの理念を実現させるためにも願ってもないことなのです。教育現場に再び立ち、学生たちとコロナ禍で苦しむこの地球の今後をデザインできたらと思います。ぼくは還暦ですが、少し長く生きた者として、新しい人たちの背中を押せる役目ならばできるかもしれない。それは同時に、新世代賞にもなにがしかの影響を及ぼすでしょうし、また、当サイト、Design Storiesにも大きな可能性を持ち込むことになると思うのです。
 

ぼくは再び学生たちと向かい合うことになりました。

冲永佳史理事長に直談判をし、ぼくは学部を超えた立場で、大学を横断し、全ての学生たちと膝を突き合わせて学びをやれる存在になりたいとお願いをしました。その熱意を感じてくださった理事長が冲永総合研究所という場所にぼくの席を作ってくださったのです。もっとも席も机もないのですが、霞ヶ関キャンパスがとりあえずのぼくの預かり先となりました。けれども、名刺を持ったこともないぼくですから、場所などもとより重要ではありません。そこに根城があるというイメージこそが重要なのです。

ぼくは学生たちと主にオンラインを通しての授業、それから時に実際に会っての面談授業の両方を通して、全学部を移動し、この大学の精神的支柱である「自分流」哲学の確立に加われればと思っています。(これからの時代、オンラインの活用が重要になるような気がします)感染症が世界の価値観を一瞬で変えてしまうようなこの時代にこそ必要な授業になるでしょう。また、東京とパリをオンラインで結んで、一般の皆さんへ向けて生涯教育の場としての「自分流塾」をスタートさせたいと考えています。これはかつてぼくが運営していた私塾「人間塾」の精神を受け継ぐ新しい鍛錬の場になるでしょう。若い人たちだけではなく大人の方々も、すでにリタイアされて時間を持て余している皆さんにもご参加頂ける哲学の道場とできればと想像しています。

残念なことに、コロナ禍の影響で現在、各大学はオンラインの授業などで学生と向き合わなければならない状態が続いていますが、先行き不透明なこの時代だからこそ、でき得る限りの可能性を追求しつつ、ぼくはこれから帝京大を精神的根城にして、若い世代と向き合い、社会人の皆さんとも向き合っていきたいと思っています。当ウェブサイト、Design Stories内にあるDSeducationというセクションで、新世代賞や帝京大学の可能性を強く発信していきたいと思います。ぼくがここで目指したいことは価値観が一変したこのコロナ時代以降の世界との新たな取り組み、新しい幸福感、価値観、未来感の想像です。暗くなりがちな時代ですけど、簡単ではないにしても、人間は必ず強く立ち上がることができると信じて疑ってはおりません。信じるだけじゃなく、それを形にしていくことが大学の使命かもしれません。若い諸君、帝京大で会いましょう。
 

自分流×帝京大学

posted by 辻 仁成

辻 仁成

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Hitonari Tsuji
作家。パリ在住。1989年に「ピアニシモ」ですばる文学賞を受賞、1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。ミュージシャン、映画監督、演出家など文学以外の分野にも幅広く活動。Design Stories主宰。