日々のことば
自分流・日々のことば「まにまに」 Posted on 2025/07/02 辻 仁成 作家 パリ
おつかれさまです。
生きていますか?
ぼくはなんとか生きております。
実は、ここ最近、悩むことがあり、心が落ち着きませんでした。
個人的な問題ですが、それは大きな悩みでもありました。
人間、何歳になっても、どんな立場になろうとも、そしてそれはもしかすると死の直前まで、続く苦悩かもしれないですね。
問題のない人などいないわけですし、世の中はつねに「諸行無常」ですからね、ただ、襲ってくる横殴りの雨のようなものから、身と心を守り、苦難を乗り越えていかないとならないのが、また、人の一生でもあるわけです。
苦しいことから解放されるためには、やはり、誰かに話をすることが大事になります。
話しているうちに、解決策が見つかる場合もありますし、話すことで、納得することもあります。
黙って、自分一人で抱えていると、人間というのは、悪い方へ悪い方へと自分を追い込んでいく場合があるので要注意です。
どんなに厳しい問題でも、解決策はあります。
完全な解決が出来ない問題であろうと、それなりに、落ち着ける場所を探し出すことは出来るのです。
だから、信頼できる人に、相談をし、一人で抱えず、まずは、自分の意見を聞いてもらうことをおすすめします。
生きていると、誰も悪くないのに、袋小路に陥ることがあります。
そういう時に、頭を整理し、感情的にならないようからみついた紐をほどいて、整理し、心を落ち着かせることだ大切です。
☆
万葉集に、
「かにかくに 物は思はじ朝露の わが身ひとつは君がまにまに」
というのがあります。
「一人で悩んでもしょうがないですよね、あなたが好きなことは変わらないのですから。朝にできた露は、そのうち消えてしまいますね? 私も同じですよ、あなたが思うままに、お任します」という意味のようです。
一人で悩んでもしょうがない。
万葉集の時代から、やはり、人間は悩んで生きてきたわけです。
それにしても、この「まにまに」ということばが気になりますね。
「まにまに」を漢字にしますと、「随に」と書きます。(間に間に、と書く人もいます)
現代人もたまに、使いますが、この古語には、「ものごとや相手の成り行きや状況に合わせて行動するさま」があります。
「まにまに」ということばには、
「あなたにお任せします」
という意味が宿っているようですね。
優しい響きです、まにまに、= お任せします、ですから。
この苦しみも、心のまにまに、生きていくのが大切かもしれません。
はい、今日も精一杯生きたりましょう。
えいえいおー。
今日のひとこと。
「まにまに」
今日のごはん。
「牛肉のタイ風サラダ」
注意のお知らせ。
悪質ななりすましがいます。ぼくがラインなどで知らない、一般の方と直接やりとりすることは一切ありません。十分に気を付けてください。
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個展のお知らせ。
いよいよ、もうすぐですね。個展、迫ってきましたよ。なりすましに注意しつつ、よろしくお願いいたします。
「Le Visiteur」展、
東京、7月9日から21日まで、三越日本橋本店、コンテンポラリーギャラリーにて。
岡山、7月23日から28日まで、岡山天満屋本店、美術画廊にて。
パリ、10月13日から26日まで、パリ、ピカソ美術館そば、GALERIE20THORIGNYにて。
問い合わせは、各画廊へお願いします。
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そして、毎月3回やっているラジオ・ツジビルはこちらから、です。どうぞ。
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posted by 辻 仁成
辻 仁成
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作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。