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自分流日記「文章が好きな皆さんへ、プラットホームを自ら持つということ」 Posted on 2022/05/26 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、いつの頃からか出版不況という言葉が囁かれるようになった。
昭和の文壇を経験し、平成を駆け抜け、日本の小説界を生きてきたぼくだが違和感を感じるようになった。
ネットが主流になり、作家は本が思うように読まれなくなる。
ぼくは10年ほど前から自分が責任をもって発信できる文芸のプラットホームを作らないとならない、と考えるようになった。
このままじゃ、自由に作品を世に出せなくなると考え、準備期間を通して7年前に自己資金でDesignStoriesを日本国内でスタートさせた。
当初から仏語、英語版を作りいつか世界に日本の小説や文章や創作物を届けられたら、と思っていた。
ともかく出版不況とかにとらわれることなく、作家である自分の世界を自由に発信出来るプラットホームがあれば、時代の浮き沈みに関係なく創作活動を続けることが出来る、というのが当初の意図だった。
ブログのようなものを中心に読者に毎日記事を配信していった。
海外拠点の強みを利用し「欧州最新情報」という情報も毎日出すようになった。
コロナ禍の時には最新コロナ情報、戦争になってからも欧州の戦争に関する情報を発信している。
ぼくだけのプラットホームにするつもりは最初からなく、海外で活躍するライターさんに門戸を開いた。ルイヤール聖子さん、セギュールちえみさん、ウエマツチエさん、八重啓介さん、マントふみこさん、など、すでに読者を抱えている作家も登場!
世界に目を向けたwebマガジンを目指すことになった。

自分流日記「文章が好きな皆さんへ、プラットホームを自ら持つということ」



ぼくはそこで日々のブログ、時々小説などを発表するようになった。
スタート当初のPV数は10万/月程度だったが、現在はほぼ100倍になった。
帝京大学が応援してくれるようになった。。
5年前、若い世代の表現者を応援する「新世代賞」を設立し、今年で6回目になる。
現在、6回目の準備に入っている。
若い世代にバトンを渡したい、彼らがもっと自由に表現できる日本であってほしい、という思いからスタートさせた。
新世代賞は、今年から若い世代に運営のバトンを渡すことになっている。
排出した新人たちのその後の活躍を耳にするとき、良かった、と安堵している。

自分流日記「文章が好きな皆さんへ、プラットホームを自ら持つということ」



とある人の紹介でNOTEの社長さんとも何かコラボが出来ないか、ということになり、5年ほど前、夕食会が催された。結局、ぼくがやろうとしていることがNOTEと重なることが多く、一緒にやる話にはならなかった。糸井重里さんが主宰されている「ほぼ日」ものぞかせて貰った。手帳が素晴らしかった。いつか、ECの機能を持ち「手帳」ではないけど、欧州の商品を日本に届けたいとも考えているが、これはぼくには敷居が高く、手が回らない、笑。そういう輸出入の元気な会社があればコラボすることは可能だと思うのだけど・・・。
それよりも、海外に展開するDesignStoriesFranceをやる方へと今は舵を切ることになった。優秀なバイリンガルの記者さんがぼくの周りにはたくさんいるので、webだし、世界へ読者を広げると考える方が自然だった。
9月1日の創刊を目指して現在は構築や記事集め、編集作業を進めている。

自分流日記「文章が好きな皆さんへ、プラットホームを自ら持つということ」



DSから生まれた「地球カレッジ」も二年目に入ったけれど、これは実に面白い。
セーヌ川ライブ、パリ市内バスツアーの成功のあと、ぼくは歌手、表現者であるのだから、ネットを使って、音楽や映像を配信することは大事だと思った。
とくに生涯教育の場などを作るのがいいと思い、地球カレッジに注力している。
特にここのところ真剣に取り組んでいるのが、「文章教室」であろう。
この日曜日に今年6回目のエッセイ教室があるが、回を重ねるごとに熱さが増していて、面白い。きっとここから新しい書き手の方が出現するのだろうなァ・・・。
地球カレッジは実は、国籍のない大学を作りたくてスタートさせた。
その趣旨に帝京大なども関心を示してくれている。
いつかパリを拠点にした世界大学のようなものが作れたら、新世代賞などもそこに含め、次の世代の人たちの新しいステージを作れるのだが、これは人生をかけた夢であろう。
道のりはめっちゃ長いけど、楽しんでやっている。
ぼくの座右の銘は、高杉晋作の「面白きこともなき世を面白く」なのだ。
明治の日本人は世界を目指した。今の日本は硬い貝の中にいる。
実は、世界なんか、めっちゃちっぽけで、ビビるほどのことはない。日本の若い人たちにはどんどん、飛び出してもらいたい。ぼくは応援をしたい。

ということで読んでくれて今日もありがとう。
文章教室、いよいよ、日曜日に迫ってきました。今回もエッセイ編ですが、ブログなど不特定多数の方々へ発信する文章の書き方、ノウハウ、心がける点、裏技などを父ちゃん講師がしっかりと取り組みますので、NOTEなどで発表されている皆さんなどもどしどし、ご参加ください。
詳しくは下の地球カレッジのバナーをクリックください。

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自分流×帝京大学

posted by 辻 仁成

辻 仁成

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Hitonari Tsuji
作家。パリ在住。1989年に「ピアニシモ」ですばる文学賞を受賞、1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。ミュージシャン、映画監督、演出家など文学以外の分野にも幅広く活動。Design Stories主宰。