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自分流塾「周りを批判している時って、自分がうまくいってない時だったりする」 Posted on 2023/04/09 辻 仁成 作家 パリ

時々、Twitterなどを覗くと、誰かの批判とかしか出ていないので、ビックリすることがある。
かく言う自分も、あいつ本当にダメなんだよな、とイラっとして周囲に愚痴っていることがままある。
誰かが誰かのことを、バカなんじゃないの? と吐き捨てている。
こういう世界にぼくら現代人は生きている。
みんなイライラしているな、と思う時というのは、実は、どこかで自分がイラッとしてる時だったりする。
みんなバカばっかりなんだよな、と吐き捨てている時は、実は、自分がちっともうまくいってない時だったりするのだ。
つまり、周りがダメだと思う時というのは、実は、自分がうまくいってない時なのである。
これだけ世界が大きいのだから、人間関係が複雑に絡み合い、うまくいってない怒りの矛先は、自分ではなく、周囲へと向けられる。ま、その方が楽だしね・・・。
「ほんと、なんでできないんだよ」
「ぜんぜんダメじゃん。あいつほんとダメ。一度死んだほうがいい」
「バカがっかり」

自分流塾「周りを批判している時って、自分がうまくいってない時だったりする」



でも、これって、結局、自分がダメなのを周囲のせいにしていることが多い。
もちろん、その相手は出来ない人かもしれない。でも、そこに怒りの矛先を向け続けても、世界は思い通りに動いちゃくれない。
あいつも、あいつも、あいつも、みんなダメだ、と文句を言っているのは、自分に問題があるのだ、と気が付かないとならない。
人間だもの、みんながスーパーマンということはあり得ない。
ダメだと思う人が回りにたくさんいるという場合、実は、自分自身が全くイけてないのだ。
自分がダメだから、人のせいにしている。
ゆとりのある人は、周囲に怒りをぶつけたりはしないだろう。
この大きな世界で、そんな小さなところをつついてなんになる、と思ったらよい。
まわりがみんなバカだと思うのは、自分がバカな証拠である。
ぼくの場合だが、実はこんな偉そうなことを書いているぼくこそ、いつも、周囲に不満を抱えているのだ。
そういうことを口走った後、ぼくは鏡を見て、吹き出している。
「ちっちぇーな、ひとなり!

自分流塾「周りを批判している時って、自分がうまくいってない時だったりする」



みんながバカばっかりなんだよな、と思う時は自分がちっともうまくいってない時。
みんながダメだと思うのは自分がダメな時。
世の中平和だな、と思う時は、実は世の中がけっこうやばい時。
むしろ、俺は何やってもダメだ、才能がない、最悪だと思う時は、よく考えてみてほしい、怒りを外へ向けていないので、実はチャンスなのである。
謙虚に自分の弱点を見極め、落ち込んでいるということは、己を知っているということだから、もう、アップするしかない。
つまり、チャンスなのである。
自己嫌悪を抱える人は、むしろ、がっかりする必要はない。
俺はダメだ、というのは、逆に、頑張り時なのだ、ということである。
周囲に責任転嫁しないで、自分を冷静に見ることが出来ているのだ、最悪ではない。
最悪な自分を知ったということは、あがるしかないのである。
周囲なんかに期待しちゃダメだ。
うまくいってる人間が、あいつはバカだ、とイラつくはずがない。
文句ばっかり言っている自分ならば、問題はそこにある、と思った方がいい。
まずは、わが道を究めよう。
ちっちぇーひとなりも、精進したい。

自分流塾「周りを批判している時って、自分がうまくいってない時だったりする」



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Hitonari Tsuji
作家。パリ在住。1989年に「ピアニシモ」ですばる文学賞を受賞、1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。ミュージシャン、映画監督、演出家など文学以外の分野にも幅広く活動。Design Stories主宰。