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自分流塾「人と違うことをしてみる勇気」 Posted on 2024/02/10 辻 仁成 作家 パリ

人生は、山あり谷ありなので、いい時もあれば、そうじゃない時もあることは、覚悟しておいた方がいい。
でも、一番、よくないのは、谷を恐れて、何もしない、ということだ。
「何もアクションを起こさなければ、現状は維持され、特に変わらない」と思っているのは、過去的思考であって、何もしないのは安定ではなく、人生そのものが減衰する瀬戸際、ということに他ならない。
人間は、豊かになるために、つねに行動を起こしていることがいいのだ。
人生を面白くさせる最善の方法が、なにか、動き続けることにこそ、ある。
小さな行動でいい、しかし、その行動が次第に大きなうねりを連れてくる。
その上で、人と違うことをすること、がそのうねりを山とする道なのかもしれない。
誰かが何かをやって成功をして、その真似をする人が多いが、残念ながら、それでは、その人を越せないばかりか、「柳の下にいつもどじょうはいない」が立証されるだけ。
人がやらないようなことを、面白がって、やり始める時に、人間の運命は動くものである。
山にのぼるためには、谷を恐れない行動をとらないとならない、いうこと。
荒野に道ができるのは、そこに踏み入った人間がいたからであり、大勢の人がその後を追いかけて、それが道になるのだった。
なので、最初に荒野に踏み込んだ人間の真似をしても、その道が太くなるだけで、後の人はすべて、二番煎じということになる。

自分流塾「人と違うことをしてみる勇気」



しかし、人と違うことをやるのは、なかなか、そう簡単なことではない。
なによりも「勇気」がいる。
勇気がないと、荒野に踏み入ることができない、それだけのことだ。
しかし、荒野に踏み入れば、蛇に出会うかもしれない。
恐ろしい魔物に襲われるかもしれないので、それなりの勇気というものが必要になる。
ほとんどの人は、荒野に踏み入ることを、この段階で、断念する。
小道ができるのを待って、踏み入ることになる。
かつて、「金がある」との噂を聞いて、多くの人が未開地を目指し西へと向かった。これが有名な「ゴールドラッシュ」であった。
でも、金山を発見できた人間は一握りで、多くの人が夢を果たせず、荒野でのたれ人でいる。
勇気があっても、鉱脈を見つけることができない可能性の方が高い、ということを多くの人が知っている。
しかしだ、逆を言えば、みんなが恐れる谷だからこそ、チャンスも眠っている、ということにならないだろうか。
そのチャンスを掴むためには、用意周到な準備と訓練が必要であろう。
その金山を掴むための、まず、足腰を鍛えることが大事になる。
様々な角度から、分析し、研究し、準備を重ねたうえで、荒野に踏み出す時、ある種の自信が、金山への道を生み出すのかもしれない。
焦って、欲を出して、ただがむしゃらにやればいいということでもない。
弓を引いて、もっともっと強く引いて、放つ時、その矢は遠方へと飛んでいくように。

自分流塾「人と違うことをしてみる勇気」

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みんなが「右へ倣え」をするなら、これは大きなチャンスなのである。
今、流行っているものは、すでに、そこには何もないことを意味している。
みんなが大挙押し寄せるところに「金」などありゃしない。
ものごとを生み出す時は、右へ倣え、ではなく、あえて左をとる行動が大事なのだ。
誰かの真似をしている限り、右へ倣え、が続くことになり、そこにチャンスの芽はない。
人と違うことを始める時、そして、足腰を常に鍛えているのであれば、分析し準備しつくしているのであれば、あるいは、その荒野を渡りきることができるだろう。
新しい何かを生み出す人は、谷を恐れない、ということである。
まず、一歩、獣道に、踏み出してみる。
荒野へ。

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自分流塾「人と違うことをしてみる勇気」

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辻 仁成

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Hitonari Tsuji
作家。パリ在住。1989年に「ピアニシモ」ですばる文学賞を受賞、1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。ミュージシャン、映画監督、演出家など文学以外の分野にも幅広く活動。Design Stories主宰。