日々のことば

自分流・日々のことば「金儲けか幸せか」 Posted on 2025/06/22 辻 仁成 作家 パリ

おつかれさまです。
今朝、田舎道を走りながら、考えていたのは「金と幸せ」についてでした。
いや、もう少し厳密に言うならば、「金儲けと好きなことをやる人生、どっちがいいの?」ということ。
毎日、こんなことばかり考えているわけじゃないのですが、今日はたまたま、考えちゃったんですよ。
「お金持ちになったら幸せになるじゃん」
と思われるかもしれませんが、ぼくの幸福感は、好きなことをやってそれをとことんやり続けて納得して死ぬこと、ですから、なんでもいいからビリオネアになってやる主義とは、かなり乖離があるのです。
とことん金儲けに集中をしたら、きっとぼくは今頃、大金持ちだったんじゃないか、と思う時はあります。
お金を儲けることって、なんとなくある種の法則があるというか、お金持ちを見ていると、よくわかりますが、「金儲け」だけを目指していたら、ぼくはとっくにビリオネアになっていたんじゃないか、と、怒られるくらいの自信があるんです。
あはは。
でも、ぼくはお金は必要だけれど、自分がやりたいことをやる方が自分にとってはもっと大切でその方が幸せだから、お金儲けだけの人生には進まなかったのです。
必要な分を確保出来て、あとはやりたいことをやれることが、最重要という生き方を選択しちゃったんですね。
つまり、お金にあまりならないことを選んでいるということでしょうか。
明らかに、ぼくがやっている創作って、それで金儲けを目指せるものではないですもんね。
ビットコインとか、一切、興味ないですし。
でも、たまにうまくいくことがあるので、そのおかげで、なんとなく、この年齢まで普通に暮らすことが出来ています。
で、歌手とか絵描きとか作家だけをやって、大企業の社長さんみたいに稼ぐことが出来るか、というと間違いなく無理なんです。
難しいですなー。

自分流・日々のことば「金儲けか幸せか」



たとえば、中世ルネサンス期のレオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロ、などがあれだけ完成度のたかい芸術表現と活動が出来たのは、フィレンツェで多くの芸術家をパトロンとして支援したメディチ家の恩恵によるところがかなり強かったですよね。
ルネサンスの時代には、芸術家を支援するパトロンがいました。
レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロが、生活のことを考えて創作をしていたら、違ったものが生まれていたかもしれません。
ぼくが時々、広告や依頼エッセイを受けるのは、美味しい食材を買うため、美味しいワインを買うための生活活動にすぎないんです。別に、ぼくはそれでいいと思っています。
ある程度の金儲けをしないと、自由に創作が出来ないのが、表現者の苦悩なんですよ。

自分流・日々のことば「金儲けか幸せか」



20歳の時、まだまだ、子供でしたし、月に5万円で生活してましたから、
「今、手元に100万円あれば、数年は創作だけに打ち込めるのになー、悔しいなー」
と思った夜がありました。
忘れもしません。あの日は、最高でしたよ。こんなことを悔しがることが出来るって、素晴らしいじゃないですか?

今の時代、パトロンという文化はほとんどないので、何かをどんどん生み出し、売っていくしかないわけです。
でも、ぼくもい生きているので、あまりお金のことを考えないで、集中して創作が出来れば、もっといいよな、とは思います。
生きているうちに、もっともっとすごい創作物を世に残せるのにな、と20歳の時と同じことを考えないこともないのです。
「時は金なり(Time is money)」
という有名なことばの通りです。
アメリカの政治家、ベンジャミン・フランクリンが残した素晴らしいことばですね。
「時間というのは自分が決めた浪費、つまり、時間は、自分が選択しているのだ。ならば、自分のためになるような行動をおこさないといけない」
フランクリンの哲学です。
時間は自分で操ることが出来るもので、その時間からお金が生まれるのだ、というのです。
ぼくは、お金も欲しいけれど、お金を超えられる創作が出来るといいな、と思っています。
ぼくの残り時間はすべて創作に割り当てているんです。
絵が売れたら、本が少し売れたら、その稼いだ分のお金をもっと自分に投資したいと思っています。
今は、無からどれだけ生み出せるか、そこがほんんとうに、楽しみでならないんです。よーし、頑張ろう。
はい、今日も精一杯生きたりましょう。
えいえいおー。

今日のひとこと。
「Time is money」

今日のごはん。
「アボカドと生ハムのサラダ」

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自分流×帝京大学

自分流・日々のことば「金儲けか幸せか」



父ちゃんからのもろもろお知らせ。
まずは、出版のお知らせです。
電子書籍の新刊「永遠者」が配信となりました。


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辻仁成のウェブ版美術サイトが更新されました。


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7月9日から、三越日本橋本店、コンテンポラリーギャラリーで、2週間開催されます。初日9日だけ入場制限があります。23日まで抽選受け付けているようです。三越さんにお問い合わせください。

7月23日から、岡山天満屋本店美術画廊にて、開催。初日だけ、整理券が出るようです。天満屋さんにお問い合わせください。

10月13日から、パリ、マレ地区にある画廊、20THORIGNYで2週間、開催いたします。新境地を打ち出します。

2026年、1月中旬から、パリの日動画廊でも、グループ展に参加させて頂きます。

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Hitonari Tsuji
作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。