日々のことば

自分流・日々のことば「まわりもの」 Posted on 2025/06/23 辻 仁成 作家 パリ

おつかされまです。
ことわざなのかどうかよくわかりませんが、「安物買いの銭失い」ということばがございます。
これ、感じたことありませんか?
なんか、安っぽいものって、手が出せるからぼんぼん買っちゃうんですけれど、だいたい服とかですが、一回洗っただけでよれよれになっちゃうTシャツとか、何度も買う羽目になって、結局、捨てないとならなくなっちゃって損した、っていう経験、ありません?
やっぱり、高級服とか、迂闊に手を出ないものは、清水の舞台から飛び降りる覚悟で買うだけのことはあって、縫製とか、素材とか、しっかりしていて、長持ちしますから、20年、30年とか残るわけで、しかも、デザインはいいし、やっぱ、買えるから買えばいいってもんじゃないよな、と思うことが多いんですよねー、ねー?
そういう経験ないですか?
こういうことを、「安物買いの銭失い」というのだそうです。
ぼくは、あんまりお金は使わないし、田舎暮らしですから、ブティックに行くことありませんし、車にも興味ないし、腕時計しない主義だから、高級時計とか、とくにほしくないので、一番使うのは、食費というか、酒代なんです。
「酒飲みの銭失い」
あはは。
酒代を稼ぐために生きているといっても過言じゃございません。空き瓶捨てるのが、大変なんです。

辻仁成 Art Gallery

自分流・日々のことば「まわりもの」



自分流・日々のことば「まわりもの」

コロナの時期に、実は、ノルマンディの田舎の村に、小さなアパルトマンを買いました。
NHKの「パリごはん」という番組の撮影地でしたからね、低い天井、手狭な感じ、みなさんもよくご存じかと・・・。
ぼくは、家とか、土地とか不動産にも興味がなかったのですが、フランスはコロナ禍で、ロックダウンが続きましたからね、もう、都会で生きていくのは無理だな、って、還暦過ぎちゃいましたから、思ったんですわ。
で、たまたま、コロナ禍で、不動産が動かなくて、小さなアパルトマンが安く売りに出ていて、悩んだんです。
ものとか、持てば、大変になるのが嫌で、ずっと賃貸で暮らしてきたんです。
いつ日本に帰るかわかりませんでしたから・・・
でも、息子が、そばにいてほしい、というし、コロナ禍だったし、人のいない田舎の新鮮な空気をすって、老後に備えるのがいいかもな、と思ったんですね。
でも、屋根裏部屋の小さなアパルトマンとはいえ、ぼくにしたら、けっこう、高かったわけです。
悩んでいた、その時、ネットの記事で、前澤さんという会社経営で大成功をおさめてあまったお金を配っている方が、こんなことを言ったんです。
「お金は使えば、戻って来る」(ちゃんと調べてみたら、「お金は使えば使うほど増える」と言われていたようです。すいません。勝手にぼくは、「お金は使えば、戻って来る」に変換しており、あはは・・・でも、似ていますよね、まあ、ごめんなさい。人生は勘違いすればするほどに増えるのです)
ぼくはお金には興味がなかったんですが、ともかく、その発想ににはしびれました。
なんとなく、それは真理だと思ったんですね。
それで、このことばを、勝手に誤解したまま、信じてみた、わけです。
もちろん、戻っては来ませんでしたが、笑、でも、実は、もっと大きなものが戻って来たんですよ。
なんだろう、愛犬の三四朗ともそこで出会いましたし、そこで、戻って来る、という気持ちを持つことできました。
出て行ったお金以上の価値が戻って来て、新しい環境に癒され、ぼくにはゆとりができ、仕事がうまくいくようになったんです。
ほんとーです。
「金は天下の回り物」
といいますわな。
使わないで銀行に預けておいても、幸せにはなれなかった。お金は使えば、戻ってくる。お金は使えば使うほど増える!
これ、正しいような気がします。
今日、1ユーロがついに170円近くにまでなってしまいました。おっと、・・・。
さてと、今日も精一杯生きたりましょう。
えいえいおー。

今日のひとこと。
「お金は使えば、戻って来る」

今日のごはん。
「おいなりさん」

自分流・日々のことば「まわりもの」

自分流×帝京大学



自分流・日々のことば「まわりもの」

父ちゃんからのもろもろお知らせ。
まずは、出版のお知らせです。
電子書籍の新刊「永遠者」が配信となりました。


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辻仁成のウェブ版美術サイトが更新されました。あらたにアーカイブギャラリーが増設されました。


https://tsuji-art.com/



7月9日から、三越日本橋本店、コンテンポラリーギャラリーでにて、「Le Visiteur TOKYO」展、開催。

7月23日から、岡山天満屋本店美術画廊にて、「Le Visiteur OKAYAMA」展、開催。

10月13日から、パリ、マレ地区にある画廊、20THORIGNYで2週間、「Le Visiteur PARIS」展、開催いたします。新境地を打ち出します。

2026年、1月中旬から、パリの日動画廊でも、グループ展に参加させて頂きます。

・日々のことばを、生放送ラジオで、ツジビルは毎月3回、オンエアー中。詳しくはこちらから、どうぞ~。

TSUJI VILLE

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Hitonari Tsuji
作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。