日々のことば

自分流・日々のことば「続ける」 Posted on 2025/06/29 辻 仁成 作家 パリ

おつかれさまです。
ローリングストーンズというロックバンドは、ほんとうにすごいなーと思います。
何が凄いのかというとバンド名と一緒で「転がる石たち」でい続けることの凄さでしょうね。
だって、ビートルズと同じ頃にスタートしたバンドでありながら、ビートルズはすでにクラシックの域であるのに対し、ストーンズはいまだ現役なのですから。
続けることの凄さを、一言で言いきることは出来ません。
「使っている鍬は光る」
ということばがありますが、鍬というのは毎日使っていれば錆びる間もない、ということ、つまり、活動し続けているものはいつまでも現役で老けることなく光り輝き続け、ま、生き生きとして見える、ということ・・・。
似たようなことばに、
「人通りには草生えず」
「流れる水は腐らず」
「転がる石には苔が生えぬ」
などがありますね。
最後のことばは、そのまま、ローリングストーンズ、と英訳してもいいかもしれません。
昔、そういえば、ミックジャガーさんとラジオの番組で30分、対面し、対談というか、こっちが勝手にご挨拶をしただけですが、話しをしたことがありました。
ミステリアスな人で、奥ゆかしく、物静かで、知的で、忘れられないオーラをお持ちでした。
ステージとは真逆!!!
今となっては、素晴らしい思い出です。
それが30年以上も前のことで、なのに、まだ、現役なんだから、びっくりですね。もう一度会って話す機会があるなら訊いてみたいです。
「自分やキースに飽きることはありませんか?」
たぶん、超越しているんでしょう。
まさに、光リ輝く、鍬のようです。

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自分流・日々のことば「続ける」



さて、ミックジャガーは、ちょっと、偉大過ぎるので、横においとくとして、人間にとって大事なことを「使っている鍬は光る」ということばが教えてくれます。
人生100年の時代になりました。
60歳でリタイアをしても、100歳まで生きるのであればまだ、40年もの歳月が残っている計算になります。
仕事をやめて、田舎にひきこもって、犬の相手をして一生を終わらせるには若すぎるわけです。
そこで、「使っている鍬は光る」が大事となります。
身体も、頭も、使い続けないと錆びてしまうということなんです。
「忠言は耳に痛い」
と言いますが、まー、これはちょっと考える価値があります。
第二の人生ということばがある通り、まさに、リタイアしてからこそ、本当の人生がスタートするのじゃないでしょうか?
そう考えるとわくわくしませんか?
80歳を越えたローリングストーンズが、ステージでジャンプする姿には希望があります。
使わなければ、鍬も錆びてしまうのですから、使いましょう。
仮に60から、はじめたって、40年近くあるんだから、50からはじめたら、もう50年、40からスタートしたら、おお、60年も、・・・なんだって、出来ると思いますよ。
ぼくは最近、死ぬまでに3000枚から4000枚の絵を描き残したいと思っています。
なんで?
なんででしょうねー、ぼくの中にある好奇心に火がついてしまったからです。
たった一度きりの人生ですからね、最終的に、好きなように生きたもの勝ちです。
はい、今日も精一杯生きたりましょう。
えいえいおー。

今日のひとこと。
「好きこそ物の上手なれ」

自分流×帝京大学

自分流・日々のことば「続ける」



今日のごはん。
「子羊とアリコ・ブロンのパスタ」

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Hitonari Tsuji
作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。