PANORAMA STORIES

母のデッサン、ぼくの絵の原点がここに Posted on 2026/08/01 辻 仁成 作家 パリ

おつかれさまです。
母は無事に退院し、元気になっています。
母と面会した時、弟が一枚のデッサンを見せてくれたのです。
それは、「バラの辻」と言われた刺繍家、辻恭子の若き日のデッサン画だったのです。
母は刺繍をする前に、下書き、下絵を描いていたのだとか、ぼくがこれらの鉛筆画を見たのは生まれてはじめてでした。
「おおお、すごくないか?」
「そうなんだよね。これは刺繍のお弟子さんたちもみんな、見た瞬間に、どよめくんだよ。迫力あるよね」

母のデッサン、ぼくの絵の原点がここに

母のデッサン、ぼくの絵の原点がここに

母のデッサン、ぼくの絵の原点がここに

母のデッサン、ぼくの絵の原点がここに



すごいですよね。
しばらく、じっと覗き込んで見入ってしまいました。
つぎはぎしているところもあって、たぶん、気に入らなくて、描き直しをしたのだと思います。

そして、その下絵を元に、刺繍作品が出来ていくんですよね。
母が、刺繍を学び始めたのが、ぼくが小学4年の頃で、先生になったのが、ぼくが中学3年生の時だった、と思います。
そこから、とくに、母はバラばかり、刺繍したんですよ。
「なんで?」
母にかわって、弟が答えます。
「好きだったからでしょうね~」
母は、横で、頷いておりました。

母のデッサン、ぼくの絵の原点がここに

母のデッサン、ぼくの絵の原点がここに

母のデッサン、ぼくの絵の原点がここに



退院を記念して、91歳になった辻恭子の作品集が出来ます。販売はしません。56年もお世話になってきた戸塚刺繍協会の先生方に、さしあげる記念本なのだそうです。
長崎の印刷会社の方々が丁寧に見本を作ってくださっています。いい思い出になりますね。冒頭に、「バラの辻」という母についての文章を書かせてもらいました。

母のデッサン、ぼくの絵の原点がここに



母のデッサン、ぼくの絵の原点がここに

思えば、ぼくも今回、バラばかり、描いている!!!!!

父ちゃんの独り言、&、近況のようなもの。
たぶん、この母があって、ぼくが今、絵を描いているんだと思いますね。母の母は、発明家でしたし、モノづくりが好きな一族に生まれてよかったです。手元にあった、今度の個展のカタログ(三越さんが作成)を一冊、母にあげましたところ、すっごく絵が上手になったねー、と褒められました。あはは。今までで一番いい、とびしっと褒められました。「だれの人生だよ」の人ですから、嘘はない、と思います。あはは。
8月5日から、11日まで、三越日本橋本店、6階、特選画廊にて、辻仁成展「鏡花水月」、開催です。あと、四日後ですぞ!!!!
えいえいおー。

母のデッサン、ぼくの絵の原点がここに



母のデッサン、ぼくの絵の原点がここに

辻仁成 Art Gallery
帝京×パリ・オンラインアートカレッジ



Posted by 辻 仁成

辻 仁成

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Hitonari Tsuji
作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。