PANORAMA STORIES

大人気の三四郎、父ちゃんの孤独を癒す Posted on 2026/09/13 辻 仁成 作家 パリ

おつかれさまです。
怖いおじさんばかりが集まる村のカフェ。田舎ですからね、おしゃれなお姉さんとかいません。
もう、ものほんのギャングかな、と思うような、イタリアのコルレオーネファミリーであってもおかしくないような風体のおじさんたち、道ですれ違ったら、ぜったい、避けて通るような連中がぼくの村のカフェには集うんですが、その怖い顔のおじさんたちが、三四郎にだけは、でれ~、っと甘い顔になって、
「あああ、なんてキュートなんだ。この子、嚙まない?」
と言って、近づいてくるんです。噛むか! あんたの方が怖いわ。
☆
今日は、5人のおじさんに、三四郎は愛でられておりました。
「この子、触っていいの?」
「どうぞ」
2メートルくらいある屈強な体つき、黒いサングラス、なんか、腕にはタトゥがびっしり、で、怖い・・・。
するとおじさん、しゃがんで三四郎の髪の毛を触って、いきなり、サングラスをはずして、怖い目がしなって、
「わあああ、この子、柔らかいじゃん。めっちゃ、毛が柔らかいじゃん。もう、やだわ、びっくり」
マジで、こういう感じで、なんでか、体がしなって・・・、つまり、狂暴そうな体が、お姉さんみたいになって、怖い目の中心で、星が光って、とろーんと頬骨が下がって、ラブ光線を三四郎に浴びせながら、去っていきました。
ほかの4人も、だいたい、そんな感じ・・・。
毎日、カフェに行くと、どこからか、おじさんやおばさまがやって来て、まああああ、かわいい、と愛でていきます。
あはは。

大人気の三四郎、父ちゃんの孤独を癒す



で、パリに行くとですね、これが、若い女の子たちが、ほっときません。
「わ、かわいい。あの、触ってもいいですか?」
「どうぞ。(ぼくじゃないよね?)」
「わああ、かわいい、一緒に写真撮ってもいいですか?」
「どうぞ、どうぞ。(ぼくじゃないですよね?)」
いちいち、心の中で、つぶやくおやじの父ちゃんなのです。
残念ながら、ぼくじゃないんです。当たり前やろ!
人気者は、三四郎です。
昨日、予防注射を受けに獣医さんに連れて行きましたら、
「このタイプのミニチュアダックスフンドは優しいんですよ。髪の毛が長くて、黒がメインで、ちょっと茶が混じっている子は、あまり吠えないでしょ?」
と言い出しました。えええ、マジか、でも、たしかに・・・。
「この犬種の中でも、このタイプは特におとなしい子が多いんですよ。いい子ですよね。飼いやすいでしょ?」
「ええ、あまり吠えませんし、いい子です。頑固ですけれど、きっと、いい子です」
ということで、三四郎のおかげで、ぼくはかなり、孤独が癒されています。それに、おとなしいので、一緒にいて、苦じゃないんですよ。いつも見ているから、どこがそんなにかわいいのか、ぼくには今一つよくわからないんですが、外を歩くと、三四郎の周辺に人が集まるので、やっぱり、何かあるんでしょうね。
あはは。
自分のことのように、うれしいです。
親ばかですね。
小さな声で、えいえいおー。

大人気の三四郎、父ちゃんの孤独を癒す



父ちゃんの独り言、&、近況のようなもの。
新しい音楽ユニット「歌う詩人」ですが、ディスクユニオンさんからプログレッシブロックの認定を受けました。ついに、父ちゃん、プログレの世界に突入したことになります。皆さんには、ピンとこないかもしれませんが、ECHOESというバンド名は、ピンクフロイドの初期の名曲「ECHOES」からインスピレーションを受けたのですが、そのくらい、プログレが好きだったんですよね。認定を受けたので、これからは、堂々とプログレ街道を進みます。
今日は、新刊の「泡」を読んで過ごしました。印刷されたからか、読みやすいし、面白かったです。あはは、自画自賛の親ばかですいません。枕元において、毎日、少しずつ読んでいます。
☆
次回の「となりのヒトナリ」は月曜日を目指します。
そして、10月のライブはすべて売り切れています。
10月22日から25日は、パリのモダンアートフェア。
11月5日からリヨンで個展。
11月8日は、パリでライブ。エバーマインズというフランスのバンドと対バンです。チケットは発売中。売り切れていません。

大人気の三四郎、父ちゃんの孤独を癒す

辻仁成 Art Gallery

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Posted by 辻 仁成

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Hitonari Tsuji
作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。