欧州最新情報

パリ最新情報「ウクライナ避難民、フランスへ続々と。具体的な受け入れ措置の内容とは」 Posted on 2022/03/18 Design Stories  

国連は3月15日、ウクライナからの避難民が300万人に達したと発表した。
そのうちの約3分の2が女性と子供である。フランスには15日までに約15000人が到着しており、政府は今後数週間で10万人を超えるだろうとの見方を示している。

現在、世界各国でウクライナ避難民の受け入れが実施されており、そのスピードや異例の対応内容が話題となっている。
しかし、例えウクライナ情勢が好転したとしても彼らの帰国がすぐに叶うわけではなく、復興や再建などに気が遠くなるほどの時間を必要とする。
当然避難先に滞在する期間は長くなり、将来的にはその地に根を下ろす、といったケースも十分に考えられる。

それではフランスは中長期的な対策として今どのような手を打っているのか。
学校、保険、住宅、ビザ問題など、受け入れ態勢の詳細が今週に入って明らかになった。

パリ最新情報「ウクライナ避難民、フランスへ続々と。具体的な受け入れ措置の内容とは」

地球カレッジ

まずは滞在許可証について。欧州連合(EU)は3月3日の議会で、ウクライナ避難民らに当面の間、EU圏内での滞在許可を与えることで合意している。
これは通常のビザとは異なる「la protection temporaire(一時保護資格)」という仕組みで、「第三国から大量に流入した、出身国に戻ることができない避難民を即時かつ一時的に保護する例外的な手続き」となる。通常の難民申請より手続きが迅速であることが特徴だ。

これによってウクライナ人は当初6カ月間フランスに滞在することが認められ、その後さらに6カ月間、最大2年間延長することができる(合計3年間)。就労や教育の権利なども保障され、対象者は滞在する県庁所在地で取得が可能である。

また3月7日の冬休み明け以降、約800人のウクライナの子どもたちがフランスの小学校に入学した。
ジャン=ミシェル・ブランカー仏教育相は今後のさらなる増加を踏まえ、各学校での教師間の教育を充実させると記者会見で述べた。
ウクライナ情勢について子供たちにどう伝えるか、そして彼らが自国とのつながりを持ち続けるためのガイドラインを設置するという。

パリ最新情報「ウクライナ避難民、フランスへ続々と。具体的な受け入れ措置の内容とは」



保険に関しては「 la protection temporaire(一時保護資格)」の所持により、健康保険にも加入することができる。
通常、亡命者の医療費の全額負担は、フランスに入国後3ヶ月の待機期間が条件となる。しかしフランス政府はウクライナ情勢の緊急性を鑑み、この待機期間を撤廃した。
またウクライナから避難した人に限り、ワクチン接種の有無にかかわらず5月31日まで無料でPCR検査と抗原検査を受けることができる。

現在フランスの各都市は、到着したウクライナ避難民を収容するため大規模な動員を呼びかけている。
フランス政府は最大で10万人の難民を即収容する準備ができているとし、個人からも続々とオファーが来ていることを発表した。
政府が立ち上げたプラットフォームに届いた個人の申し出は、全国でおよそ33,000件。
しかしその全てに依頼をするわけではなく、避難民の安定を確保するため最低3ヶ月間の提供が絶対条件である、と住宅省は強調している。

このような手厚い受け入れについては、「ウクライナ人がヨーロッパ人、白人、キリスト教徒だからなのでは?」とフランスでも一部報道されている。
しかしマルレーヌ・スキアッパ市民権担当大臣は3月15日、ラジオ番組 Europe1に出演し「フランスは2018年以来、EUへのアフガン人5万人の難民申請のうち1万人分を受け付け、その8割に滞在を許可した(EU平均は63%)」と具体的な数字を挙げ、「アフガニスタン人も同じように受け入れている」と断言した。

ウクライナからの避難民の数は、このままいけば第二次世界大戦以降で最大の数百万人となることが予想されている。
今回の人道危機についても、他国で起きた前例と同じようにかなりの長期的対策が求められる。(オ)

自分流×帝京大学