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パリ最新情報「フランスを覆った赤い空の正体」 Posted on 2022/03/19 Design Stories  

3月17日夕方、パリではこの世のものと思えないほどの美しい夕焼けが広がった。
オレンジ色の空と、分厚い雲の境目がはっきりと分かれていて、見事なグラデーションを構成している。
実際には息を呑むような美しさだったのだが、あまりにもレアな光景のため若干の違和感を覚えたほどだった。
実はこれは、厚い雲とサハラ砂漠の砂煙が結合したもので、数千キロメートルにわたって広がったものだったという。
フランス気象庁によって17日夜に明らかになった。

パリ最新情報「フランスを覆った赤い空の正体」

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フランスでは週初めより、サハラ砂漠の砂が南からの強風に運ばれて上空を覆っている。
火曜日には雨が降り、砂と雨が混じって街中に堆積してしまった。
このところのフランスは三寒四温といった感じで気候が安定していない。気温差も激しく、雨・強風が続いたかと思えば次の日は快晴となり、天候的に忙しい一週間であった。

ということで、ただでさえ不安定なフランスの天気にサハラの砂が加わり、各地で珍現象が目撃されているのである。
例えばフランス南部のピレネー山脈では、スキー場がほぼ砂丘と化した。
しかしこの現象は初めてではなく、2021年2月にも同じことが起きている。
サハラ砂漠により近い南部では、空がオレンジ色になる現象「phénomène de ciel jaune」が2週間ほど報告され、「世界の終りのようだ」と話す人がいるほどだった。

パリ最新情報「フランスを覆った赤い空の正体」



とはいえ、フランス北部のイル・ド・フランス圏(パリを中心とする首都圏)の上空にこれほどまで長く砂塵が留まるのは珍しいことだという。
車、公園のベンチ、ゴミ箱、庭のテーブルなどは砂まみれ。そのため郊外にある洗車場は大忙しとなった。

フランス気象庁によると、この砂嵐はピークを過ぎたものの、今週半ばにPM10(大気中に浮遊する微粒子のうち、粒子径が10マイクロメートル以下のもの)のレベルが上昇したとのこと。
そのため喘息の人、呼吸器に疾患のある人は十分な注意が必要で、コロナとは関係なくマスクの着用が望ましい、とした。

パリ最新情報「フランスを覆った赤い空の正体」



サハラ砂漠は、地球上で最大規模の砂塵の発生源となっている。
ヨーロッパ大陸だけでなく、大西洋からカリブ海、南北アメリカ大陸にまで到達することもあるそうだ。
人体に悪影響を及ぼす一方、サハラの砂はリンやマグネシウムなどのミネラルで構成されているためフランスの農業にとってはむしろ好影響なのだとか。

アマゾンの森林では、木に必要な土のミネラルが雨によって流されている。
しかし、サハラ砂漠から運ばれてくる大量の砂が栄養分を補給することで、現在のアマゾンを維持しているのだという。
温暖化による砂漠の進行は防がなければいけないが、もともとのサハラ砂漠は地球を肥やす必要な存在であるとのことだ。

なおフランスでは、上空から砂がなくなる頃には気温が上昇すると予想されている。
今年の春夏は例年より暑く雨が少なく、非常に乾燥した気候になることも発表された。
何はともあれ、マスク生活はこのまましばらく続けた方が良さそうだ。(セ)

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