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パリ最新情報「フランスで改めて見直される地産地消。ウクライナ侵攻を受けて」 Posted on 2022/03/24 Design Stories  

フランスにおける食料価格の上昇が加速している。
特にパスタ価格の上昇は著しく、昨年11月に1.94ユーロで販売された500グラム入りのパスタは、現在の平均で2.25ユーロとなっている。

そもそも物価が高騰したのは、原油・天然ガスの価格上昇がガソリン代や電気料金を押し上げたほか、コロナ後の経済の急回復で需要に供給が追いつかなくなったことに起因する。
昨年末の時点では、インフレはしばらく続くが2022年中に減速するであろうと予測されていた。
ところが、ウクライナ危機がこの動きに拍車をかけてしまった。
今後数週間で食料価格はさらに上昇し、この夏までには5%、ウクライナ危機が長引けばそれ以上の価格上昇もあり得ると予想されている。

パリ最新情報「フランスで改めて見直される地産地消。ウクライナ侵攻を受けて」



フランスは、ロシアに行った経済制裁による「返り血」を浴びようとしている。
小売店オーナーや消費者のほとんどはこうした傾向を嘆いているが、一方で「心配なのはパンの値段ではなくウクライナのことなので、値上げを受け入れます」といった一定の理解を示す市民もいる。

そこで今、改めて見直されているのが「地産地消」の動きであるという。
フランスでは10年ほど前から、過度なグローバリゼーションから雇用を守るメイド・イン・フランスの製品が多く導入されている。
最近ではコロナ禍の後押しもあって、仏国民がメイド・イン・フランスを選択する機会がさらに増えた印象がある。

パリ最新情報「フランスで改めて見直される地産地消。ウクライナ侵攻を受けて」

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そんな「地産地消」の先頭を走っているのが、パリ20区にある食料品店Le Producteur Local(ル・プロダクター・ローカル)だ。
ここでは中間マージンを0とし、生産者から直接仕入れることでオーガニック食品を一般流通価格より安く販売することに成功した。

仕組みはとてもシンプルで、ル・プロダクター・ローカルのメンバーになった生産者が商品の値段を決め、その値段の中で輸送費や従業員の給料もペイするという。差し引き分が手元に残るといった簡単なシステムだ。
生鮮食品は80㎞圏内から、缶詰、乾麺などの保存食であれば150km圏内から運ばれてくる。

パリ最新情報「フランスで改めて見直される地産地消。ウクライナ侵攻を受けて」



店内には野菜、パスタ、パン、鶏肉、牛肉、乳製品、ジャム、ワインなど、地域直送の新鮮な食材がずらりと並ぶ。
卵などは養鶏場の平飼いの様子・生産者の顔写真とともに置かれてあり、消費者としては安心感を覚える。価格はスーパーと通常のBIOショップの間くらいといったところだが、オーガニック製品がこの値段で手に入るのはやはり嬉しい。

なおこのル・プロダクター・ローカルは2015年にノルマンディーで誕生した協同組合で、現在フランスで6店舗を展開しているという。
パリでは2019年に一店舗目、昨年に二店舗目がオープンし、食材の信頼度、そしてそのビジネスモデルが話題となった。従業員数は20人で、170か所の地元生産者がメンバーになっているそうだ。

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パリ店の店長によると、今のところウクライナ危機の影響はまだ受けていないが、昨年からのインフレはフランスの農業にも打撃を与えているとのこと。
それでも直売・良価格という2点が好評で、1週間に約1200人ものお客様が来店するそうだ。
ただし今後のフランチャイズ化は資本主義に逆戻りすることを意味するので考えていないという。

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こじれる世界情勢で、フランスでは地産地消の取り組みに高い関心が寄せられている。
なかには地産地消の学校給食が実践されるところもあるほどだ。
宣伝活動など生産以外の能力が必要になるケースもあるが、これからの時代はクオリティと信頼度、そして何より国内生産というのがキーワードとなりそうだ。(オ)

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