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パリ最新情報「出生率が回復し始めたフランスの最新事情、事実婚も増え続ける」 Posted on 2022/01/23 Design Stories  

 
1月1日に発表されたINSEE(国立統計経済研究所)の統計にて、2021年のフランスの出生率と結婚数が一昨年より上回ったことが分かった。
現在、フランスの総人口は67,813,396人。
昨年より18万7千人ほど多くなっており、人口が増加しつつあることも「大変喜ばしいニュース」として報道されている。

パンデミックで3度のロックダウンを経験したフランス。
一時は「ベビーブームなるか?」と噂されていたが、現実は逆で、失業への不安や病院でスムーズにケアを受けられないことを懸念した多くのカップルが子供を持つことをためらった。
そのため、コロナ禍にあった2020年の出生率(女性1人当たり)は1,82と過去最低を記録。
2015年から下降線を辿り始めていた出生率が一気に深刻化し、少子化対策のお手本のように言われていたフランスに陰りが見え始めていたのだ。
 

パリ最新情報「出生率が回復し始めたフランスの最新事情、事実婚も増え続ける」



 
ところが、2021年には出生率が1,83とわずかに回復する。
去年だけで73万8千人の赤ちゃんがフランス国内で生まれたことに加えて、結婚数も大幅に増えた。
同性婚6千組を含むおよそ22万組が民事婚を挙げ、ちょっとした結婚フィーバーが訪れたという。

フランスでは2人に1人が離婚し、生涯で2〜3回の結婚を経験すると言われている。
2021年の平均初婚年齢は男性で39.1歳、女性で36.6歳と遅くなっているが、これは結婚前に子供を設けることが法律で可能なことと、女性の社会進出のスピードが上がってきているため。
初婚においては、フランスの男女はかなりの年月をかけてお互いを「結婚相手にふさわしいかどうか」を見極める傾向があるようだ。
 

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その裏で顕著だったのは、パックス(PACS=連帯市民協約)と呼ばれる“同棲以上結婚未満”の関係を選択するカップルが急激に増えているということ。
パックスの件数報告は結婚より一年遅れて統計されるため、2021年の正確な数字はまだ出ていないが、2020年の例によると、パックスが初めて結婚数を上回ったことも明らかになった。

フランスでの結婚・離婚は、日本より数倍複雑で時間がかかる。
そのため、税制上でも婚姻カップルとほぼ同様の扱いを受けることができ、自由度の高いパックスを選択するカップルが激増しているというのである。
ただ、結婚・パックスどちらにせよ、パートナーと「社会的に」一緒になることを決断したカップルが増えたという事実の背後に、コロナ不安があるのは間違いなさそうだ。
 

パリ最新情報「出生率が回復し始めたフランスの最新事情、事実婚も増え続ける」



 
近年、フランスの出生率が低下傾向にあったとはいえ、1,83という高い出生率はヨーロッパの中でも一位を占めている。

高校(公立)までの学費が原則無料であること、無料の出産費用(受診料、出生前診断、妊娠出産から産後のリハビリテーション等)、父親の育児休暇などなど、この国は1世紀にわたって少子化防止にあの手この手を打ってきた。

産みやすく、育てやすい社会であることは間違いないが、女性の初産年齢は上がる一方。
加えて、かつて高い出生率を支えてきた移民家庭の2世、3世の女性たちも「多産」を控えていることから、フランスの出生率はこのまま高止まりをキープした後にまた下降するのでは、とも言われている。

パリ大学ソルボンヌ校の人口学者、ジェラール・フランソワ・デュモン教授は、「出生率と国の経済状況は影響し合っている」と断言する。
多くの人が失業の憂き目にあったコロナ禍だが、一方で、2024年のパリ五輪に向けてフランスが15万人強の新たな雇用を計画しているとも報道された。
2021年を区切りに、このまましばらくは結婚・パックス・出産の件数が増えそうだ。(セ)
 

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