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パリ最新情報「2月1日から、フランスはコロナなかったことに?」 Posted on 2023/02/01 Design Stories  

2月1日から、コロナウィルスに対しての政府の規制が再び変わる。
コロナウィルスが世に蔓延してから現在まで、世界中の政府が様々な対策を立ててきた。フランスも、2020年のロックダウンを始め、国の予算を大量に投資して流行病の沈静化と国民の救済に粘り強く努めた。飲食店や海外渡航など、段階的に規制緩和の措置が取られてきたが、ここにきて政府のコロナ対策自体が終息に向かうかのような、新たな規制が実施されることとなった。
その背景には、12月末には2万5千人近くいた入院患者も、現在は1万6千人以下と大幅に落ち着いているという現状がある。コロナ患者の状況は、2023年に入ってからより急速に回復傾向にあると言える。

新たな規制緩和とは、陽性者の行動に関するものだ。今まで、検査で陽性になった場合は有無を言わさず数日間の隔離生活が義務であった。「家族とも隔離するために、狭い部屋に布団を持ち込んで寂しい療養生活を送ったなあ」というような多くの「隔離体験談」も、今は昔。2月1日からは「義務」ではなくなる。義務ではなくなっても「強く推奨」というスタンスではいるが、マスクが義務ではなくなった途端に一気にマスク人口が減ったフランスのこと、自主隔離をする人がどれくらいいるか疑問だ。



濃厚接触者に対しては、もうほとんど対策を取らないと言っても良い。パンデミックピーク時は濃厚接触者と判明した時点で隔離、接触日から2日後にテストをする、とされていた。明日からは、濃厚接触者と判明しても、症状が出なければ2日後の検査は「不要」とされている。「推奨」すらされず、必要ないという判断だ。また、健康保険が管理をしていた濃厚接触者追跡サービスに対する人員も、2021年に動員されていた6500人から現在は350人にまで縮小されており、明日の規制緩和のタイミングで無期限に停止となる予定だ。

コロナ感染による社会保障の保証制度改定も今回の大きな変化の1つだ。
フランスにはArrêt de travail(病気休暇が取れる診断書)というものがあり、診察の際に医者により仕事を休む必要があると診断された場合に発行される。病状によって、数日で済むものから数ヶ月に渡る場合もあり、その診断書があれば仕事を休んでいる間も社会保障から最低限の賃金の保証を受けることが出来る。
この保証に関して、医者の診断を経なくてもこのArrêt de travailを即時発行できるという制度がコロナ対策として実施された。社会保障サイトの個人アカウントで陽性申告をすれば自動的にこの診断書がダウンロードできる仕組みになっており、あとはそれを雇い主に送るだけだ。病院がどこもパンク状態で医者にもかかれず、強制隔離で仕事にも行けない状況が頻発していた時期に、この制度は相当数の労働者を救ったことだろう。
「流行の拡大を抑えるために」制定されたこの政令は、猛威を奮い続けたコロナウィルスを前に、2023年現在に至るまで実施期間延長を繰り返し、2023年の社会保障予算にまで組み込まれた。最大2023年末までの措置としていたが、コロナ感染の落ち着きを考慮し、年末を待たずして前倒しに終了することが決定された。



今回の規制緩和についてフランス保健省は、「規制緩和となるものの、“全ての呼吸器の感染症と同様”、自主隔離など、人との非接触対応を強く推奨する」とコメントしている。あれほど人類を不安に陥れたウィルスも、風邪やインフルエンザと同等の扱いになりつつある。

今回の規制緩和と保証の一部停止ニュースにフランス国民は、「変異株は感染力が強いものも多いのに隔離無し…さすが政府はいつでも論理的!」「(第10波が近づいているというニュースを指して)いつもながら完璧なタイミングの政策」など、SNS上で皮肉に溢れたコメントを多く残している。

形式上の規制緩和はあったものの、コロナウィルスVS政府VS国民の闘いはまだ当分終わりそうにない。(ケ)

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