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パリ最新情報「エシカルファッションの首都を目指すパリ、SDGsが最優先事項に」 Posted on 2022/01/28 Design Stories  

 
パリでは、1月18日〜23日まで2022年秋冬シーズンのファッションウィーク(メンズ)が開催され、世界中のファッションフリークたちの視線を集めた。

昨年はコロナ禍のため多くが中止もしくはデジタル開催となったが、今年はフィジカルなショーが戻ったとあって、たくさんの関係者が復活と再会を喜んだ。

本格的なファッションショーの再開にあたり、パリでは「リアルイベントにおける環境保護の取り組み」が欠かせないものとなっている。
パリコレを運営するオートクチュール・エ・デ・ラ・モード連盟(FHCM)は数年前からこの問題に向き合っており、会長のパスカル・モラン氏も期間中、環境問題について「責任を認識し、取り組んでいく」との異例の声明を発表した。
 

パリ最新情報「エシカルファッションの首都を目指すパリ、SDGsが最優先事項に」



 
ファッション業界は、自動車・化粧品と並ぶ「世界3大汚染産業」とされてきた。
2000年代にはファストファッションが世界的な流行を見せたものの、供給された衣料品のうち約4割は売れ残り、処分されたという。

紡績や製織には、大量の水とエネルギーを必要とする。
例えば、Tシャツ1着をつくるのに消費される水は約2,700リットルがかかるという研究結果(ユネスコIHE水教育研究所)も出ているほどだ。

ファッション産業が地球環境に及ぼす影響を問われる今、パリは「世界のトレンドを牽引する存在」として、エシカルファッションの首都となることを目指している。
 

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この時期は、パリコレのほかにも多くのファッション見本市がパリ市内で開催される。
2022年は中止となってしまったが、コロナ前の2020年1月に開催されたパリのランジェリー国際見本市は「ミニマリズム」を大きく提唱するものであった。

近年ではファッションと同じように、アンダーウェアの分野でもサステイナブル化が進んでいる。
なかには、環境に配慮し「消費者と地球にとって最も安全な染料は何か」を提案するフランスの新進気鋭ブランドもあった。
紫玉ねぎ、アボカド、コスモスなどを染色材料にし、出荷用の包装でもリサイクル可能な紙のみを使用する。

また、大量生産・大量消費されるストッキングも最近では大きく注目されている。
フランスではリサイクルナイロンの開発が急ピッチで進んでおり、漁業の網などを再利用したストッキングも登場。
ナイロン産業のダークサイド(製造過程が有害である、長持ちしない素材であること)の「根本的改革」を図る若手ブランドが増えた。
 

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現在、フランスは世界有数のスタートアップ大国として生まれ変わりつつある。
2021年9月には、パリ10区の歴史ある消防署跡地に、起業支援の施設「ラ・カゼルヌ」が誕生した。
そこには「リサイクル、アップサイクル、フランス国内生産」などを掲げた、公募で選ばれた40組以上の若きファッション起業家たちが集まっているという。

ファッションの過剰生産、環境破壊にNOを突き付け、フランスの若手デザイナーを応援する「ラ・カゼルヌ」。
出資したのはグッチやサン・ローランを率いるケリンググループとのことだ。
こうしてパリを拠点とする大手企業が今、パリを「エシカルファッションのモデル都市」とするべく、多方面で尽力しているのだ。

今回のパリ・ファッションウィークでも、市内の会場を巡るシャトルバスや自動車の電動化、廃棄物のリサイクル、セットの再利用などが行われた。
FHCMのモラン会長は、「私たちには世界的なリーダーシップを発揮する義務がある」とパリコレの役割について話す。
この街では、今後数年間でエシカルファッションが当たり前の概念となるのだろう。(せ)
 

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