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パリ最新情報「SNSがらみの子供のいじめが増加するフランス、いじめを厳罰化へ」 Posted on 2022/01/07 Design Stories  

フランス国会では昨年12月、子供の「いじめ」を厳罰化する法案が可決された。
内容は、加害者が13~17歳の場合は最大で禁錮2年半と7500ユーロ(約100万円)の罰金、18歳以上の成年なら最大で禁錮5年と75000ユーロ(約1000万円)の罰金が定められたというもの。
もし被害者が自死または未遂した場合、刑はさらに重くなり、禁錮10年と15万ユーロ(約2000万円)の罰金を科せられる。早ければ今年の2月から施行が可能となる。

ブランケール仏教育大臣は記者会見で「子どもの人生が台無しにされることは決して容認できない」とし、「フランスの価値観を広げる手段」と強調した。
フランスではここ数年、特にSNSを介しての子供間の嫌がらせが増加傾向にある。
2021年3月には、同級生に嫌がらせを受けたパリ郊外に住む14歳の少女が亡くなり、10月には東部アルザス地方で14歳の少女が、友人から出自に関する暴言を受けたことを苦に自ら命を絶ってしまった。

フランス政府はこうした事態を重く受け止め、今回の法案可決に踏み切った。
マクロン大統領は11月にSNS上に投稿した動画において、「被害にあっている全ての若者へ。我々は君たちの味方だと知ってほしい」と応援メッセージを送っている。

パリ最新情報「SNSがらみの子供のいじめが増加するフランス、いじめを厳罰化へ」

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フランスの学校で起こる嫌がらせに関しては、以前より厳しい取り締まりが行われてきた。
警察には未成年保護班という特別部隊があり、彼らは子供たちからの相談と支援についてプロフェッショナルな訓練を受けている。
そして学校の校長は、生徒が暴力を受けたと判明したときや、モンスターペアレントによる学校側への攻撃があったときなど、警察と県の担当部署へメールで報告する義務がある。
こうして、警察、教育、法律の3つがセットとなって子供を守っているのだ。

それでもなくならない子供間の嫌がらせであるが、今回の新法案は今までで一番厳しいものとなり、今後はフランス全土で取り締まりが強化される。
フランス政府は2月より、嫌がらせ被害者の携帯に届いた悪質なメッセージをスクリーンショットした画像などを送信できる通報アプリを投入予定。



また、政府公式HPには「いじめと戦おう」と題したページが組み込まれ、被害者が無料で相談できるフリーダイヤルも掲載されるようになった。
そこにはSNSを介した誹謗中傷を報告する「サイバーハラスメント」専用の番号もある。内容が悪質だと判断された場合、被害者の同意を得て行政が動くといったシステムだ。

インターネット上の嫌がらせは、子供でも大人でも長引く可能性があり、被害者が孤立しやすい。また攻撃する側も心的なケアを必要としているケースが多くあるという。
現在、フランスはこうした「サイバーハラスメント」に注視しており、「子どもを守り支える社会」が実現するよう努めている。(セ)

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