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パリ最新情報「働くフランス女性の新たな悩み、『パーフェクトペアレント症候群』」 Posted on 2023/04/12 Design Stories  

 
「子供がいないかのように働き、仕事をしていないかのように子供を育てる」という概念が、現代のフランス女性を悩ませているという。
これは「パーフェクトペアレント症候群(le syndrome du parent parfait)」と呼ばれるもので、特にキャリア志向の高いパリジェンヌによく見られる、一種の現代病なのだそうだ。

フランス人女性の就業率は高い。
正規・非正規合わせれば9割近くの女性が仕事をしており、管理職や企業のトップに立つ女性も少なくない。
しかし同時に彼女たちは母親であり、妻(パートナー)であり、一人の女性でもある。
フランスで子どもを持ちながら働く女性は、10人中8人にもなる。
つまりこれほどの女性が家事・育児と両立しながら仕事と向き合っていることになるのだが、一方で「完璧さを手放すこと」「上手くバランスを取ること」ができずに苦しむ女性たちの数が、現在のフランスで増加しているのだという。
 

パリ最新情報「働くフランス女性の新たな悩み、『パーフェクトペアレント症候群』」



 
フランスの産休・育休制度が充実している、フランス男性も家事に協力的だ、というのは紛れもない事実である。
しかしこのパーフェクトペアレント症候群に陥りやすいのは、キャリア志向の高い、いわゆる都会暮らしの女性によく見られる傾向だと、仏コンサルタントのアンヌ・ペイミラット氏は指摘する。
コロナ緩和後のパリでは、女性起業家が確かに増えている。
ニューオープンした素敵なブティックを訪れてみると、そのオーナーの大体が女性であったりする。
しかし彼女たちの多くはやはり、子どもが2人、3人いるというママさんだ。

アンヌ・ペイミラット氏は自身の著書『Le Syndrome du wonder parent(不思議な親の症候群)』でも述べている。
それは「現代の女性は、子供の成長、教育などにも耳を傾けなければならず、17時に帰宅することを子どもたちに謝り続けている。また仕事を通して自分自身を充実させ、上昇志向を保ち続けなければならない。しかし女性も強くあるべきという現代フランスの風潮が、パーフェクトペアレント症候群を助長している」ということだ。
 

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昨今のキャリア志向に見られるように、フランスの女性は人に頼らず、たくましくあることを願う。
仕事の充実は男性にも女性にも関係するようになった。
一方のフランス男性もきちんと男女平等を求めている。
これは社会的にはおおむね好ましいことだが、しかしプレッシャーを倍増させる結果となり矛盾が発生している、とペイミラット氏は仏女性誌でも述べている。
そしてパーフェクトペアレント症候群に悩むフランス女性(一部男性)は、得てしてパーフェクト・チャイルドを求めやすい傾向にあると同氏は指摘する。
※子どもにも勉学や品行など完璧を求めてしまうこと。
 

パリ最新情報「働くフランス女性の新たな悩み、『パーフェクトペアレント症候群』」



 
完璧を求めない、とは分かっていることでも、パリの保育士不足や待機児童問題は親たちのストレスを増長させている。
そんなママたちのストレスを緩和しようと、パリでは女性のためのお喋り・情報交換の場である「育児カフェ」が至る所でオープンしている。(大)
 

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