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ロンドン最新情報「ついに英国はEUから離脱、新たに始まる生活者の利点、難点」 Posted on 2021/01/02 Design Stories  

イギリスの欧州連合(EU)離脱が、昨年の移行期間を終えて実質的に成立した。
コロナウイルスの感染拡大対策のため、ロンドンをはじめイギリス各地は静かに新年を迎えたが、2020年12月31日23時、長らく工事中だったビッグベンの時計が久しぶりに時報の鐘を打ち、その時を知らせた。

ロンドン最新情報「ついに英国はEUから離脱、新たに始まる生活者の利点、難点」

長い交渉を経て年末に滑り込みでEU側と成立した合意により、イギリス・EU諸国間の輸出入に関税は発生しないが、通関申告書類の提出が義務付けられる。
また、植物や家畜などの動物、生肉製品などに規制が発生し、輸出入には許可証の提出が必要だ。
イギリス政府はさまざまな製品の生産者に対して、EU離脱に伴う規制の変更に注意を払うように呼びかけている。



イギリス伝統の手法による生ソーセージは、EUの規制により輸出ができなくなった。
ジャマイカ出身の移民でイギリス国内で飼育から加工までを行うことにこだわり、新鮮な肉製品を生産販売している「ブラックファーマー」社の社長ウィルフレッド・エマニュエル=ジョーンズさんは、コロナ禍により宅配の人気が上昇した体験も踏まえて、冷凍のソーセージをEU向けにも輸出し始めたことを「大きなビジネスチャンス」と前向きに捉えている。

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しかし、この混乱が予想された英国のEU離脱、少数のトラックが書類不備のためにフランスに渡れなかった以外は、ドーバー海峡で目立った混乱は見られなかった。
イギリスでの労働を希望する外国人に対しては、イギリス経済に貢献できる人材を世界中から呼び寄せることを目的に、新しいポイント加点システムが導入された。E U諸国(ただしアイルランドを除く)の人も、世界の他国の国籍を持つ人と同じ条件で、このシステムにより滞在許可証を取得することが求められる。
E Uが実施している交換留学システム「エラスムス」はイギリスでは廃止されるが、数学者アラン・チューリングの名前を冠し、全世界を対象とする同様のシステムが今年9月に導入される。
イギリス人がEU諸国に6カ月の間に3カ月以上滞在する場合、滞在許可証が必要となる。旅行の際のペットパスポートはイギリスでは使えなくなり、イギリスとEU諸国の間でペットを連れて旅行する場合は、10日間以内の健康証明書を提示しなくてはならない。EUから帰国するイギリス人は、酒類やたばこの持ち込みが一定量まで免税となる。



ボリス・ジョンソン首相は新年の演説で、イギリスは「EU諸国とは物事を違ったやり方で、必要ならより良いやり方でできるようになった」と述べ、「世界中の国と協力し、気候変動、それに2021年以降コロナウイルス禍からの復興に必要な高度の技能を必要とする職の創設にも取り組む」と話した。



一方、国内ではいまだに分断が続いている。YouGovが12月22日に発表した世論調査の結果では、2016年の国民投票で「離脱」に投票した人のうち、「EU離脱は正しい選択」と考える人の割合は約8割だった。イギリス人全体の51%が「離脱は間違った選択」と考え、「正しい選択」と考える人は40%だった。
地域差も大きく、スコットランドでは、2016年の国民投票でEU残留を求める票が62%に達した。EU離脱に反対してスコットランド独立とEU再加盟を目指しているニコラ・スタージョン自治政府首相は「ヨーロッパよ、スコットランドはすぐに戻ってくる。明かりを消さないで」と、スコットランド旗とEU旗の絵文字も駆使してツイートし、これまでに15万を超える「いいね」を集めている。(清)

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