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ロンドン最新情報 「家計を直撃する光熱費の値上げ、冬をどうやって乗り切る? 18%のインフレに燃料不足の警告」 Posted on 2022/09/03 Design Stories  

ロンドン最新情報 「家計を直撃する光熱費の値上げ、冬をどうやって乗り切る? 18%のインフレに燃料不足の警告」

今夏、ロンドンは熱波が続き、英国観測史上初の40.2℃を記録した。エアコンのない家庭が多く、うだるような暑さを耐え忍んだ。
ようやく涼しくなりホッとしているところに、8月の光熱費の請求書が届いた。その額は、4人家族で450ポンド(7.3万円)。
その内訳は、電気代が216ポンド(3.5万円)、ガス代が235ポンド(3.8万円)。なんと1日の電気代が7ポンド(1,130円)、ガス代が7.6ポンド(1,230円)、となる計算だ。
夏場はお風呂ではなくシャワーで済ませるし、暖房は使っていないため、ガス代は一年間で一番低いはず。
1年前の2021年8月の請求書を見てみると、211ポンド(3.4万円)だった。内訳は電気代が120ポンド(2万円)、ガス代が102ポンド(1.6万円)だった。
2倍の値上がり。しかし、これはまだ、ほんの序の口のようだ。

我が家の電気・ガスを供給している会社Bulbはいつの間にか破綻していた。破綻しているのも関わらず、救済措置で会社は継続している。
Bulbでは自宅内に設置されているメーターを読み取り、オンラインで自己申告する。そうすると、1年の平均的な使用量が計算され、毎月額が請求される仕組みとなっている。

先日、ロンドン街中で配布されている無料新聞紙イブニング・スタンダードの見出し「18%インフレへの衝撃の警告」に目が止まり、思わず新聞を手に取った。英国はインフレ率が過去40年間で最高記録を出したところ。英政府統計局(ONS)が発表した7月の消費者物価指数(CPI)は7月のインフレ率が前年同月比10.1%で1982年以来の高水準となったという。
同紙は続けて、「冬にはインフレ率が18%にまで上昇する」、「光熱費の請求書が大惨事になる」なえどと警告した。”英国の家庭の半数が燃料不足に陥る『破滅的な冬』に向かって突き進んでいる”というのだ。

ロンドン最新情報 「家計を直撃する光熱費の値上げ、冬をどうやって乗り切る? 18%のインフレに燃料不足の警告」



ロンドン最新情報 「家計を直撃する光熱費の値上げ、冬をどうやって乗り切る? 18%のインフレに燃料不足の警告」

地球カレッジ

おそらく、この値上がりはこれからが本番になる。
英国の電力・ガス料金のシステムはプライス・キャップ制(料金上限)をとっている。プライス・キャップとは「物価上昇率をもとに、政府が価格上限を設定し、上限以下であれば、各社が自由に価格設定をおこなえる制度」で公共料金の設定方式の1つである。
英国ではエネルギー会社が過剰な利益を上げることを阻止するため、2019年1月に導入された。
ガス・電力規制当局Ofgemがプライス・キャップを半年に一度設定するのだが、今回のエネルギー費の高騰で3か月毎に見直されることとなった。

Ofgemによると、この上限額は「一世帯に請求される最大請求額の上限ではなく、使用量に応じた上限」だという。大家族や隙間の多い古い家に住む高齢者など、平均以上のエネルギー使用量である場合、年間請求額はプライス・キャップにあるよりもさらに高くなる可能性がある、と警告している。消費者は予測以上の光熱費を支払うことになるだろう。

たとえば、10月1日から一般家庭のエネルギー料金のプライス・キャップが年間3,549ポンド(57万円)に達すると発表された。
8月現在、平均的な家庭で年間1,971ポンド(32万円)となる。
この上限が再び更新される1月にはさらに上昇し、請求額が年間5,386ポンド(87万円)になると予測されている。そして、値上げはさらに続く・・・。
2023年の4月ごろには一体いくらになっているのか・・・。



英国政府がどのような救済措置をとるのか、ボリス・ジョンソン氏退陣後の新首相(*)の腕の見せ所となる。現政府は英国の全世帯に対し、10月から燃料代に一律400ポンド(6.5万円)の割引が受けられると発表している。さらに、給付金や税額控除を受けている800万世帯以上の低所得者層には650ポンド(10.5万円) が支払われる予定だ。
その上、年金生活者世帯に300ポンド(4.8万円)、障害者世帯に150ポンド(2.4万円)が支払われる。とはいえ、2023年1月の予測通り、年間5,380ポンドのエネルギー料金を支払うとなると400ポンドの割引では、到底家計の足しにはならない。

*現首相はまだボリス・ジョンソン氏ではあるが、7月7日に保守党党首を辞任している。候補者は二人に絞られており、リシ・スナック前財務相とリズ・トラス外相。スナック氏は英国生まれだが両親がアフリカ出身のインド系移民。トラス氏は白人女性だ。国民投票ではなく保守党員による投票が行われる。当選者が9月5日に発表されたのち、ジョンソン氏は9月6日に退任となる。



ロンドン最新情報 「家計を直撃する光熱費の値上げ、冬をどうやって乗り切る? 18%のインフレに燃料不足の警告」

値上げはエネルギーだけでない。
ウクライナ戦争で穀物生産が圧迫され、コストが上昇しているため、食料品価格も急上昇している。日常でも、スーパーで値段を気にせずいつもの買い物をすると、会計時にびっくりする。感覚的には30%ぐらい価格が上がっている。ウクライナから供給が止まっている物質はもちろんのこと、全てのものが値上がりしているのだ。

英国はBrexitの問題もある。英国がEUを離脱して以来、多くの企業が人手不足と物流困難という危機に直面している。賃金が物価上昇に追いつけないため、飛行機、列車やバスのストライキが目立つ夏だった。ロイヤルメールによるストライキが4日あり、郵便物の配達が滞るという事態。戦々恐々と迎えた新学期。コロナ感染だけは急上昇しないことを願うばかりだ。ロンドンの冬は長く暗い。氷点下になる日は少ないが、暖房は不可欠なのだ。

(ユ)
2022年8月26日現在
1ポンド161.39円

ロンドン最新情報 「家計を直撃する光熱費の値上げ、冬をどうやって乗り切る? 18%のインフレに燃料不足の警告」

<バス、地下鉄、列車、飛行機のストライキで大混乱の夏。ロイヤルメールもストライキを決行>



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