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ロンドン最新情報「ロックダウン緩和を「不可逆的な」プロセスにしたい英国の現在」 Posted on 2021/03/08 Design Stories  

 ロンドンなど、イギリスのイングランド域内では、ロックダウン解除に向けた第一段階として今日から小中高校の登校がおよそ2カ月ぶりに再開された。少なくとも1回のコロナウイルスワクチン接種を受けた人は、高齢者を中心に成人(18歳以上)人口の3分の1に達し、今週からは50代後半の人たちの接種予約受付が開始される。政府は7月末までにすべての成人に少なくとも1回の接種を行うことを目標にしており、このペースで行けば達成可能との見方を示している。
コロナウイルスの感染者数は5177人で1月のピーク時の1割未満に減り、3月7日のコロナウイルスによる死者数は82人とピーク時の1800人から大きく減少している。感染による入院患者数も順調に減って10898人となっており、高齢者を中心にワクチン接種が進んでいることの効果が現れていると評価されている。
 



今週からは、正当な理由がない場合は義務教育年齢の登校が義務付けられ、不登校の場合は保護者に対する従来の罰金制度が適用される(ただし自治体によっては4月の復活祭休暇以前の開校期間については罰金を科さない方針を明らかにしている)。財政研究所(IFS)が2月下旬に行った調査によれば、保護者の9割は「たとえ義務でなくとも子どもを登校させたい」意向を示している。リモート授業のサポートと在宅勤務の両立で疲弊を極めている親たちからは、学校再開は「ノーマル」な生活再開への第一歩として歓迎されているが、長引く休校により子どもの教育やメンタルヘルスへの影響を懸念する声が高まっている。教育省は7億ポンドの予算を学習の取り戻しに当てる方針を示し、チューター(家庭教師)による補習の拡大や、1日の授業時間数を増やすこと、夏休みを短縮して授業日数を増やすことなども含め、学習内容を取り戻すための方策を検討している。



変異型ウイルスが拡大しても、子どもの重症化は依然としてまれで、子どもの入院者数が増加する傾向は見られなかった。これまでのデータでは、職業別で見ると学校教師のコロナウイルスの感染・死亡のリスクは特に高くなく、また登校期間中の小学生の感染率は地域社会全体の感染率と連動していて、顕著な違いは見られない。
一方で、中学生・高校生は登校期間に感染率が高くなる傾向があることから、中学高校での感染防止策として、定期的なウイルステストを導入し、教室でもマスクを着用すること(これまでは廊下などの共用空間のみとされてきた)が新たに定められた。中学高校は今週、全生徒にテストを行うために段階的に登校を開始する。



科学者でつくる顧問機関「インディペンデントS A G E」は、学校再開により、1人の陽性の人が何人に感染させるかを示す「実効再生産数」が最大で3割増加すると警戒を呼びかけている。また、オックスフォード大学のワクチン開発研究班のサラ・ギルバート教授は、今日付の新聞「i(アイ)」に対し、「学校再開は必要だが、他の制限遵守を緩めることはできない」と語っている。
 ロックダウン緩和第二段階は順調にいけば3月末に実施され、屋外で2世帯まで、あるいは6人までが交流できるようになる。4月12日に生活必需品以外の店舗の営業が可能になり、早くて6月21までにすべての制限が解除される。ジョンソン首相はワクチン接種計画の進展により、ロックダウン緩和を「不可逆的な」プロセスにしたい方針を表明していている。段階を進めるにあたっては、引き続き感染率や死亡数が下がり、医療を圧迫しない見込みが確かであることを政府がデータに基づいて判断してゴーサインを出す。
 イギリスでは2月から、国立健康研究所(NIHR)とアストラゼネカ社の共同出資により、6歳〜17歳の未成年者を対象とするワクチン接種の臨床試験も行われている。オックスフォード大学を中心に、オックスフォード大学とアストラゼネカの共同開発によるワクチンの有効性を、ボランティア300人の治験で確認する。(清)

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